MCA無線とは?MCAアドバンスについても解説
※2024/9/3追記
MCAアドバンスは2027年3月31日、デジタルMCAサービスは2029年5月31日にサービスを終了することが決定しており、現在新規契約の受付は行っておりません。
業務用無線には、使い方や用途に合わせてさまざまの種類がありますが、その中でもMCA無線は、日常業務から緊急・災害時など、多様な用途に対応できる無線です。
今回は、MCA無線について詳しく解説していきたいと思います。
目次
MCA無線とは?
MCA無線とは、800MHz帯の電波を利用したデジタル業務用移動通信で、限られた周波数を複数のユーザーで共同使用して通信を行うマルチチャンネルアクセス方式の無線であることから、MCA(=マルチチャンネルアクセス)という名称がついています。
MCA無線の運用は、効率的に電波を利用できるよう中継局がコントロールを行い、自動的に空いているチャネルを選択して利用者に割り当てる通信方式を取っています。
中継局がコントロールを行うことで、限られた数の通信チャンネルを多数の利用者がスムーズに通話を行うことができるようになっています。
また、すべてのチャンネルが使用されている場合は、予約状態となり、チャンネルが空き次第、順番に通信チャンネルが割り当てられる仕組みになっています。
総務省 MCA無線局、簡易無線局、衛星携帯電話 等(外部リンク)
MCA無線のメリット
MCA無線は広域で無線通信ができる
特定小電力無線やデジタル簡易無線は、無線機で直接送信と受信を行うため出力に制限があります。
このため、無線の通信範囲も限られていて、距離が離れている場所や遮蔽物がある場所では、無線通信ができない場合もあります。
一方で、MCA無線は全国に設置された中継局を活用することで、広域で無線通信を行うことができます。
中継局をつなげれば、北海道から沖縄まで全国で通信を行うことも可能です。
MCA無線は混信や割り込み、盗聴の心配がない
MCA無線はセキュリティ面の対策がしっかりしていることもメリットの一つです。
MCA無線で通信を行う場合、中継局で利用者ごとに「ユーザーコード」が割り当てられます。
中継局では、同じユーザーコード同士でのみ無線通信を行うように設定されていますので、広域での無線通信でも混信や割り込み、盗聴などの心配がありません。
このような理由から、警察署・市役所・学校・病院などの公共機関で連絡を取り合うときなどに、安全かつ迅速な連絡手段としてMCA無線が利用されています。
MCA無線は防災や災害時の緊急連絡手段に適している
MCA無線の中継局は、建物の耐震補強を施したり非常用の自家発電装置を設置するなど、停電や災害時でも継続して運用ができるよう万全の体制を取っています。
加えて、利用者が業務用に特定されているので、電波の混信が少ないことも地震や大雨、大雪などの緊急災害時は有利になります。
携帯電話の場合は、災害時など回線利用が集中してしまうと、電話がつながらないということがありますが、MCA無線の場合は、業務用利用に特定した利用者が、防災対策がしっかりした中継局を介して無線通信を行うことができるため、災害時でも安定した通信を行うことが可能です。
MCA無線はGPSと連動して運用できる
MCA無線は、GPSアプリケーションと連動した運用管理ができることもメリットの一つです。
例えば、運送業で車両管理を行う場合、GPSアプリケーションを導入すると管理画面のマップ上で、車両位置や情報を把握できるので、状況に合わせて無線で業務指示や車両管理を行うことができ、業務の効率化につながります。
MCA無線は低コストで広域通信が可能
業務用無線を広域で使用する場合、基地局、中継局、アンテナ設置など、独自の設備を設置する必要があり、莫大なコストが必要になります。
一方で、MCA無線は中継局を共有して利用することができるので、業務用無線と比較して低コストで広域の無線通信を利用することができます。
MCA無線のデメリット
MCA無線は免許が必要
MCA無線は、業務用無線の中では遠距離用業務無線として位置づけられているため、使用するためには免許の取得が必要になります。
免許の取得にあたって管轄の総務省・総合通信局に必要書類を提出しますが、書類の提出から免許発行までには、およそ約3週間前後の期間がかかります。
また、MCA無線の免許有効期限は5年となっているので、継続して使用する場合は再免許の申請手続きも必要になります。
中継局のエリア外は通信できない
MCA無線の中継局は、全国各地に100か所以上配置されていますが、山間部やビルが立ち並ぶ都市部では無線通信がつながりにくいところもあります。
また、契約している中継局がカバーしていないエリアでは通信ができなくなりますので注意が必要です。
契約する中継局が多くなると利用料が高くなる
中継局や通信網を共同利用するMCA無線は、業務用無線と比較すると低コストで運用できますが、中継局を利用するにあたっては、一定の利用料が月額で発生します。
金額は契約の内容によって異なりますが、通常は中継局ごとに利用契約が必要になりますので、契約する中継局が多くなるほど通信エリアは広がりますが、その分月額利用料が高くなる傾向にあります。
mcAccess eとは?
mcAccess eとは、一般財団法人移動無線センターが提供するMCA無線サービスです。 北海道から沖縄までのワイドなエリアを実現し、阪神淡路大震災や東日本大震災、熊本地震などの大規模災害において活用された実績から、災害に強い無線として国や地方自治体でも導入された実績があります。
mcAccess eの特長
災害時につながりやすい
災害時などのいざという時にもつながりやすく、通信確保に役立ちます。
メッセージ通信
相手が不在でも、メッセージを残しておくことができます。 また、店舗到着などの定型的な報告は、音声で報告するよりも効率的です。
ワンタッチ録音機能
運転中に聞いた客先住所など重要な情報を、ワンタッチ録音しておいて、後で確認することができます。
緊急モニタ利用(特別利用)
バスジャックやタクシーが犯罪に巻き込まれたときなどの緊急時には、犯人に知られずに、車内から指令局へ 緊急通報が行えます。指令局で車内の音声をモニタし、車内の状況を把握することもできるサービスです。 (注1)緊急時における通信時間の制限はありません。モニタ終了の際には、指令局からの指示でモニタモードを解除します。 (注2)全国のエリアをまたがって、他の地域に車両が移動しても、モニタ継続が可能です。 (注3)このサービスについては、各地域の移動無線センターまでご相談ください。
一定額で導入できる
通話時間によって料金が変わることはありません。月額の定額利用が可能です。
mcAccess e の無線機
広域無線 防災 BCP MCA無線 EK-6175A mcAccess e パナソニック
略称/型番 | EK-6175A |
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種別 | MCA無線 |
メーカー | パナソニック |
MCAアドバンスとは?
MCA無線の次世代通信システムとして、MCAアドバンスの運用が2021年4月より開始されました。
この次世代通信システム、MCAアドバンスについても解説します。
MCAアドバンスはLTE技術を組み合わせた次世代無線システム
MCAアドバンスは、一般財団法人移動無線センターが提供する無線サービスで、従来のMCA無線にLTEの技術を組み合わせた次世代型の業務用無線システムです。
従来のMCA無線にLTE技術を組み合わせたことで、音声通信はもとより、地図データやカメラ機能によるリアルタイム画像や映像の配信、チャットなどのデータ通信といった、スマートホンのようなアプリケーションサービスが利用できるようになっています。
MCAアドバンスは、MCA無線と同様に、専用の周波帯を特定のユーザーが業務用に限定して利用できるサービスとなっているため、災害時などで一般の通信網では混雑してつながらないようなときでも、安定した通信が可能です。
中継局は、新耐震基準に基づいて設計されているほか、非常用発電機も備えていますので、地震や停電などの災害が発生したときでも安定した通信を確保できるよう対策が施されています。
一般財団法人移動無線センター MCAアドバンスとは(外部リンク)
MCAアドバンスの特長
LTE技術でカメラ機能やデータ通信が可能に
MCA無線に携帯電話の通信規格のLTE技術が組み合わさったことで、カメラ機能やGPSによる地図データの利用、チャットによる文字データの通信が可能になりました。
低コストの業務用無線
従来の業務用無線はインフラ整備に高額なコストがかかりますが、MCAアドバンスは中継局やLTE通信網を共同利用するため、低コストで運用が可能です。
災害時に強い通信システム
MCAアドバンスの中継局は、耐震設計の建物に非常用発電機具を備えることで、万全の防災体制を整えています。
加えて、一般の公衆通信網とは異なるネットワークを構築しているため、災害時などでつながりにくい状況でも、より安定した通信が可能となっています。
MCAアドバンスの無線機
広域無線 防災 BCP LTE MCA無線+IP無線 KC-PS701 MCAアドバンス
略称/型番 | KC-PS701 |
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種別 | MCA無線+IP無線 |
メーカー | 京セラ |
広域無線 防災 BCP LTE MCA無線+IP無線 LEX L11j MCAアドバンス
略称/型番 | LEX L11j |
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種別 | MCA無線+IP無線 |
メーカー | モトローラ Motorola |
車載型 防災 BCP LTE MCA無線+IP無線 TEF6T705A MCAアドバンス
略称/型番 | TEF6T705A |
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種別 | MCA無線+IP無線 |
メーカー | トム通信工業株式会社製 |
まとめ
MCA無線は、専用の通信網を複数のユーザーが共同で使用する無線通信システムです。
限られた周波数をより効率的に利用できるよう、中継局がコントロールを行い、自動的に空いているチャンネルを選択して利用者に割り当てる通信方式を取っています。
全国にある中継局を介して電波を送ることで、北海道から沖縄まで全国エリアでの無線通信を行うことも可能です。
MCA無線は業務用の専用回線を使用しているため、一般回線では災害時などでアクセスが集中して通信つながらないような状況でも、安定した通信を行うことができます。
また、2021年4月からは、新たにLTE技術を組み合わせたMCAアドバンスのサービスの利用が開始されました。
従来のMCA無線にLTE技術を組み合わせたことで、音声通信はもとより、地図データやカメラ機能によるリアルタイム画像や映像の配信、チャットなどのデータ通信といった、スマートホンのようなアプリケーションサービスが利用できるようになっています。
追伸
e-無線ではMCA無線をはじめ、各種、各メーカーの無線機・トランシーバーを取り扱いしております。
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