IP無線とは?他の無線機との違いやメリット・デメリットも解説
業務用無線には、使い方や用途に合わせてたくさんの種類や機種がありますが、その中でもIP無線は比較的新しい種類の無線です。
今回は、IP無線について詳しく解説していきたいと思います。
目次
IP無線とは?
そもそもIP無線とは、携帯電話の回線を使用する無線のことです。
一般的な無線は、無線の周波数ごとに使い方が決まっていて、使用するためには資格や免許、登録などの手続きを行い、個別に無線局を開局する必要があります。
IP無線の場合は、個別に無線局を開局するのではなく、携帯電話と同じインターネット通信(3G,4G,Wi-Fi)を使用します。
つまり、従来の無線機と携帯電話を組み合わせたようなシステムで、他の業務用無線機と同じような通話ができます。
IP無線のメリット
通信できるエリアが広い
IP無線は携帯キャリアのデータ通信(3G/4G)、Wi-Fiを利用しますので、携帯キャリアの通信がつながる場所であれば、通信距離の制限なく、どこでも通話が可能です。
最近は携帯キャリアの基地局が増加していますので、全国エリアで通信が可能となっています。
他の無線ではつながりにくいビルの間や地下フロアでも、携帯電話がつながる範囲であれば、IP無線を使って通信することができます。
グループ通信も個別通信もできる
同じ携帯キャリアの電波を使用する携帯電話の場合、通話は1対1の個別通話が基本です。
最近はスマートフォンが普及して、グループ通話も可能になってきましたが、それでも人数などの制限があります。
一方、IP無線であれば、他の無線機と同じようにグループ通信で人数制限なく一斉に情報の伝達、共有が可能です。もちろん、グループ通話だけでなく、1対1の個別通信も行うことができます。
免許や資格がなくても使用できる
無線電波は周波数によって使い方が決まっていて、国によってルールが定められています。
例えばアマチュア無線であれば、使用するために国家資格が必要になりますし、デジタル簡易無線では免許の申請や登録の届出が必要になります。
一方で、IP無線の場合は、国から認可されている携帯キャリアの電波を使用するため、個別に免許の申請や登録の届出といった手続きを行う必要がありません。
IP無線は誰でもすぐに使用することができます。
通話の秘匿性が高い
一般的な業務用無線は、同じ周波数に合わせることで大勢の人に一斉に情報を伝達することができる、というメリットがありますが、逆に周波数が一致してしまうと、第三者と通話が混信することがあります。
そのため、知らない人に通話を傍受されることや、会話が漏れてしまうという危険性があります。
最近のトランシーバーや無線機は、秘匿機能が向上している製品も多くなっていますが、100%リスクを回避できるわけではありません。
その点IP無線は、IPアドレスを活用した送受信を行うため、指定した相手以外に通信が混信してしまうリスクがほとんどないことから、一般的な業務用無線と比べて通話の秘匿性が高いということが言えます。
定額制で低コスト
携帯電話やスマートフォンは、通信量にあわせて料金が加算される仕組みになっているので、使えば使うほど月々に支払う料金の負担も大きくなります。
最近では、定額プランが主流になりつつありますが、それでも、契約するプランによって金額が大きくなったり、通信量が契約プランの上限を超えた場合は、速度制限がかかってしまったりすることがあります。
その点、IP無線は月々の利用料金が定額制になっているので、通信量によって利用料が増えたり、通信制限がかかってしまったりすることはありません。
通信距離や時間、回数に関係なく一定の料金で使用することができます。
IP無線のデメリット
携帯キャリアの通信がつながらない場所では通信できない
IP無線は、携帯キャリアのデータ通信(3G/4G)、Wi-Fiを利用しているため、契約している携帯キャリアの通信がつながらない場所では、IP無線を使用することができません。
最近は基地局が増えてきましたので、つながらない場所もほとんどなくなりましたが、それでも山奥やトンネルなど、携帯電話の電波が届かない場所ではIP無線での通信はできなくなります。
回線混雑時はつながりにくい可能性も
また、携帯キャリアの通信状況によってはつながりにくくなる可能性もあります。
例えば、年末年始で携帯電話の回線使用が集中したときや、災害発生時に回線使用が集中したときなどは、通信制限が行われることがありますが、この時、IP無線は携帯電話とは別のデータ回線を利用しているものの、携帯キャリアの通信制限がかかってつながりにくくなる可能性があります。
月々の固定料金がかかる
特定小電力トランシーバーや、デジタル簡易無線では、通信するために月々の料金を支払う必要はありませんが、IP無線の場合は、携帯キャリアの電波を使用するため、毎月の利用料金が発生します。
他の無線と比較すると、月々のコストが発生することはデメリットとはなりますが、携帯電話やスマートフォンの月額利用料と比較すると、先ほど述べたように、IP無線は月々一定の料金で制限なく利用できますので、比較する対象によっては、使用制限のない固定料金はメリットとしてとらえることもできます。
IP無線と特定小電力トランシーバーの違い
特定小電力トランシーバーとは、送信出力が0.01ワット以下の電波を使用するトランシーバーで、送信機能と受信機能を併せて持つ小型の無線機として、主に近距離の通信手段に使われています。
特定小電力トランシーバーは、IP無線と同様に免許の申請や登録の届出の必要が無く、だれでもすぐに使うことができる手軽な無線機です。
一方で、IP無線との違いは、出力の弱い電波の使用に限られているため、通信距離が短いという点です。
特定小電力トランシーバーの通信距離は、使用環境にもよりますが、おおよそ500mから1Km程度です。
ビルが多い市街地などでは、100m程度で通信できなくなることもあります。
また、出力が弱いことで混信もしやすいことから、使用する場所が限定されてしまいます。
IP無線であれば、携帯キャリアのつながる場所であれば、通信距離や混信の心配をすることなく、安定した通信を行うことができます。
IP無線とデジタル簡易無線との違い
デジタル簡易無線は、一般的に広く使われている業務用無線です。
特定小電力トランシーバーと比較して電波の出力が高いことが特長で、出力が最大5Wまでの電波を利用できる「簡易無線」の制度を利用した無線となっています。
デジタル簡易無線を使用する場合、無線局を開局する必要があり、免許を申請して開局する免許局か、登録の届出を行う登録局のいずれかの手続きが必要になります。
IP無線の場合は、このような手続きの必要がなく、だれでもすぐに使えることがデジタル簡易無線と異なる点です。
また、デジタル簡易無線機の通信距離は、特定小電力トランシーバーと比較して電波の出力が高いものの、2㎞~10Kmの範囲に限られますので、IP無線の通信エリアの方が格段に広くなります。
IP無線の活用方法
IP無線は、広範囲で安定した通信を行うことが可能な無線通信で、免許申請の必要もなく
誰でもすぐに使用することができます。
多くのメリットがあるIP無線は、さまざまな場所での活用方法があります。
たとえば、マラソン大会などの広範囲で行うイベントでは、スタッフ同士のコミュニケーションツールとしてIP無線が適しています。
通信距離を気にせず、無線電波が混信するリスクも抑えられるほか、イベント会場ごとにグループ通信の設定ができて個別通信も行えるIP無線は、広域イベントでの使用に最適な通信手段と言えます。
また、大型商業施設や、大学などの教育機関、大きい病院などで通信を行う場合も、IP無線が便利です。通信距離の制限がなく、一度に大人数と会話ができて情報伝達が円滑に図れることから、広いエリアでの連携作業を行う場所に向いています。
免許が必要ないので学園祭などの単発の行事でも、学生やアルバイトでも手軽に使用できるIP無線が適しています。
このほか、企業のBCP(事業継続計画)対策の通信手段としてIP無線を活用する方法もあります。
災害発生時は携帯電話回線が混雑して電話がつながりにくくなる状況が考えられますが、IP無線は、同じ携帯キャリアの電波でもデータ回線を利用するため、電話回線と比較して混線によるつながりにくい状況を回避できる可能性が高くなります。
まとめ
IP無線は、携帯キャリアのデータ回線を利用した無線通信で、広域通信を手軽に行うことができる、従来の無線と携帯電話の良い点をかけあわせた大変便利な無線です。
通信料金は、どれだけ使っても追加料金が発生しない月額定額制なので、携帯電話の料金と比較しても低コストで運用することができます。
IP無線は、免許の申請も必要なく誰でも手軽に使うことができて、さまざまなシーンで活用することができる優れた通信手段と言えます。
追伸
e-無線ではIP無線をはじめ、各種メーカーのトランシーバー・無線機を取り扱いしております。
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