登録局の増波とは?概要と必要な手続きについて解説

登録局の増波とは?
2023年6月1日総務省は官報で電波法規則等の一部を改正する省令等を発表、これにより登録局のチャンネルは従来の35ch(うち上空用5ch)から97ch(うち上空用15ch)に増えることになりました。
なぜ増波が必要になったのか?
利用者の増加が主な理由です。簡易無線登録局は制度化以降の2009年から局数が増加し続け、2019年に60万局だった登録数は2026年には105万局まで増えると予想されるほどに利用者が増え続けています。
利用者が増えることでチャンネル数(または周波数)が不足し、混信が発生しやすくなるのはもちろん、様々な課題が発生していました。
参照:400MHz帯デジタル簡易無線局の帯域拡張及び高度化のあり方に関する調査検討会報告書概要版
課題1:キャリアセンス機能による送信不能
登録局が制度化された時点では、パーソナル無線の置き換えがその目的でもあったため、チャンネル数や運用方法にある程度の制約がありました。そのひとつが「キャリアセンス機能」を搭載することでした。
これは、交信範囲内で同じチャンネルが使われていた場合、ボタンを押しても電波が送信されないようにする機能です。つまり、自動的に送信を止めることで混信を防止していたのです。
しかし、利用者が増えることによって交信範囲内でのチャンネル被りが多数発生。するとキャリアセンス機能が働き続け、いつまでたっても送信できない、といった事象が発生してしまっていました。
課題2:有線接続での中継利用周波数離隔ができない、干渉が起こる
2つの送受信機を有線で接続し、それぞれの送受信機が異なる周波数(チャンネル)で送受信をおこなうことで、通話エリアの拡大を図ることができます。Aの送受信機で受信した信号を、有線でBの送受信機に伝達し、Bから送信をすることで通信エリアを広げる仕組みです。
この時に問題になるのは、AとBの送受信機で同一周波数、あるいは隣接・近接周波数が使用できないことです。AとBの送受信機は有線接続をするために大きく距離を離して接続することができません。2つの送受信機が近接しているので、使用する周波数が近接すると、送受信機の内部での飽和や電波干渉によるビート現象のため、異音や無音の状態が発生します。
飽和やビートを防ぐには、AとBの送受信機で周波数(チャンネル)を適度な間隔をとって使用することが必要なのですが、チャンネル数が少ないためにこの「間隔を取る」ことが難しいケースが発生していました。
課題3:上空利用チャンネルの不足
もともとパラグライダーなどのスカイスポーツ用に設置されていた登録局の上空用チャンネルは5chでしたが、昨今ではドローンの利用が増え、こちらもチャンネル数が不足していました。
自律飛⾏するドローンからのテレメトリデータ伝送利用の際、同一チャネルを地上間通信でも利用した場合に、上空利用者との間では広範囲にキャリアセンスが動作するため相互に送信が困難となります。
今回の増波では上空用チャンネルも5chから15chに増えるため、こちらも解消されることが期待されます。
増波対応の機種を使いたい場合は?
これらの不便な状況を解消するために増波が決定した登録局。これに伴い各社から増波対応の機種の販売が発表されています。
増波の恩恵を受けるためには増波対応の機種を使用する(買い換える)必要があります。増波前に購入した登録局(35ch対応)で使えるch数が増えるわけではありません。
プレスリリース:ICOM
プレスリリース:KENWOOD
増波に伴う手続き
増波前にすでに購入・使用している登録局をそのまま使い続ける場合は特に必要な手続きはありませんが、増波対応の機種を使用する場合は手続きが必要です。
手続きの方法について詳しく見てみましょう。
初めて使う登録局が増波対応(82ch)の場合
通常通り登録申請の手続きが必要です。購入時に同梱されている手続き説明書や申請用紙を使って手続きをします。
すでに持っている30chの登録局を使い続ける場合
手持ちの30ch機種だけを使い続けるのであれば何も手続きをする必要はありません。登録状の有効期間が満了になったら従来の方法で再登録をします。
【個別登録】82chの増波対応機種を新しく購入し、すでに使用中の30chのものは他人に譲るか、廃棄する場合
82chの新しい無線機を使う時点で、新しい周波数範囲で個別登録を行います。譲渡・または廃棄する従来の30chの登録局は譲渡・または廃棄の時点で廃止届を提出します。
30chの登録局を譲渡された方は従来の30chの周波数範囲で新規に登録申請を行う必要があります。
【個別登録】82chの増波対応機種を1台買い足して、もともと使っていた30ch機と合わせて使う場合
- 方法①包括登録に切り替える
古い方の個別の登録廃止届を提出し、82chの周波数で包括の登録申請を行い、登録状が来たら2台まとめて包括の開設届を提出します。
- 方法②個別で別々に2局を登録する
もともと使っていた30chの登録局は何もせず、新しい82chの方だけ新しい周波数範囲で個別の登録申請を行います。
※イニシャルの手間は少ないですが、登録状を更新する際のコストが割高になり、登録状の管理も2局分となるためおすすめはしません。
【包括登録】30chの登録局を開設済み。まだ登録状は有効だが、今の登録状が失効しないうちに少しずつ82ch機に機種変更する場合
包括の変更申請で登録状の周波数範囲を新しいものに変更し、新しい登録状が来たら新しい機種の購入を開始します。新しい機種を購入するたびに開設届を提出。使わなくなったものは開設届と同じタイミングで包括の廃止届を提出します。
【包括登録】30chの登録局を開設済み。この機会に全部の機種を82ch増波対応機種に変更する。
新しい周波数で包括の登録申請を行います。登録状が来たら新しい無線機の各種番号を記載して、開設届を提出。もともと使っていた30ch機は包括の登録廃止届を提出します。
まとめ
制度化以降、今なお人気の登録局。利用者数が増えるにつれ起こっていた不便を解消するため増波の措置が取られました。
これまでチャンネル数不足や混信に悩まされていた方はこの機会に買い替えをご検討されてみてはいかがでしょうか。おすすめの機種を知りたい、手続き方法がよくわからない、などご不安なことは何でもご相談ください。いつでもお待ちしております。