ロボットとは?ロボットの概要・種類や利用の拡大で近年注目されている「配膳ロボット」について解説
現実世界においてもロボットの定義は学術的に明確化されていますが、時代の変容とともにロボットの定義は変化しています。昔はアニメなどでも登場する人間に近いロボットのイメージを連想できる定義ですが、現代ではその定義もシンプルかつ幅広いものになっています。
これにより、従来ならばロボットと連想できなかったものも、ロボットとして位置づけられるようになりました。今回はロボットの概要や種類、近年注目されている配膳ロボットについて解説します。
ロボットとは?
ロボットとは、作家だったカレル・チャペック氏が1920年に書いた「R.U.R.(ロッサム・ユニバーサル・ロボット会社)」に登場する人造人間に名付けられた言葉です。語源はチェコ語で「労働」を意味する「robota」といわれており、労働ツールとしてロボットは誕生しました。
学術的な意味では1960年代頃からロボットが定義されはじめ、当時は人間に近いロボットとしてのイメージを連想できるものでした。しかし、現代におけるロボットの定義はシンプルかつ幅広くなっています。
例えば、JIS(日本工業規格)が公表している「ロボット及びロボティックデバイス−用語」では、ロボットを次のように定義しています。
「二つ以上の軸についてプログラムによって動作し、ある程度の自律性をもち、環境内で動作して所期の作業を実行する運動機構。 」
引用:JIS(日本工業規格)-ロボット及びロボティックデバイス−用語(kikakurui.com)
また、日本ロボット工業会が2006年に発表した「ロボット政策研究会 報告書」で記述されているロボットの定義は次のとおりです。
「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」
ロボットの三原則について
ロボットの三原則とは、「ロボット工学三原則」とも呼ばれ、ロボットが従うべき原則のことです。SF作家だったアイザック・アシモフ氏が1950年に書いた「わたしはロボット」にて提示されました。
三原則の具体的な内容は次のとおりです。
- ロボットは人間に危害を加えてはならない。また何も手を下さずに人間が危害を受けるのを黙視していてはならない。
- ロボットは人間の命令に従わなくてはならない。ただし第一条に反する命令はこの限りではない。
- ロボットは自らの存在を護らなくてはならない。ただしそれは第一条,第二条に違反しない場合に限る。
引用:アイザック・アシモフ著「わたしはロボット」
上記原則はSF界隈だけでなく、現実のロボット工学にも多大な影響を与えたといわれています。
ロボットの種類
ロボットの種類は大きく分けて次の2つです。
- 産業用ロボット
- サービス用ロボット
それぞれ詳しくみていきましょう。
産業用ロボット
産業用ロボットとは、工場で使用されているロボットのことです。重労働や危険な作業をロボットに代替することで従業員の労働環境を整備できます。
また、人と違って休む必要がないため、生産性を向上させることも可能です。産業用ロボットの代表的な種類としては次の5つが挙げられます。
- パラレルリンクロボット
- 協働ロボット
- 直交ロボット
- 垂直多関節ロボット
- スカラロボット
それぞれ詳しくみていきましょう。
パラレルリンクロボット
パラレルリンクロボットとは、並行に設置されている関節を連携させて動かすロボットです。
「高速」「高性能」「低コスト」が特徴で、軽量なものを高速でピッキングしたり、細かい部品を組み立てたりする際に使用されます。
協働ロボット
協働ロボットとは、生産ラインやコンベア移送、仕分けなどの自動化を目的に工場で導入が増えているロボットです。産業用ロボットは通常、事故の発生を防止するために、安全柵で囲い、物理的に空間を分けなければなりません。
一方、一定の安定基準をクリアしている協働ロボットであれば、安全柵で囲う必要がないため、人と同じ空間で作業ができます。ただし、人と一緒に作業するため、安全上他の産業用ロボットと比較するとサイズは小さく、重い荷物を運搬したり、スピードを出したりすることはできません。
直交ロボット
直交ロボットとは、2~3のスライドする軸で構成されているロボットで、ピッキングや細かい組み立てなどに使用されます。
直交ロボットは縦と横にしか動きません。しかし、組み合わせ次第で様々な作業ができる他、旋回などの動きがないことから制御がしやすいといった特徴があります。
垂直多関節ロボット
垂直多関節ロボットとは、アームが垂直に動く多関節ロボットです。人間の腕に近い以上で関節を多く持っているため、組み立てや検査などの複雑な作業に使用されます。
また、ベテランが行う作業を垂直多関節ロボットに置き換えれば、技術の伝承が行えます。
スカラロボット
スカラロボットとは、本体は水平方向に動き、先端のみ上下に動くロボットです。基盤への部品配置や単純な組み立てなどに適しています。
垂直多関節ロボットと違って複雑な動きはできないものの、低コストで導入できる、制御が安全を確保する観点上、サイズはシンプルといったメリットがあります。
サービス用ロボット
サービス用ロボットとは、工業以外の場所で使用される人の支援を目的としたロボットのことです。サービス用ロボットの代表的な種類としては以下が挙げられます。
- 搭乗型:人を乗せて目的の場所まで移動するタイプ
- 人間装着型:身体の負担軽減を目的に装着して使用するタイプ
- 移動作業型:運搬や災害の案内などを行うタイプ
近年、注目されている自動運転タクシーは「搭乗型」、最近見かけるようになったお掃除ロボットや配膳ロボットは「移動作業型」となります。
【機能別】ロボットの種類
ここではロボットの種類を機能別にみていきましょう。代表的なロボットとしては以下が挙げられます。
- 清掃ロボット
- 教育ロボット
- スマートスピーカー
- コミュニケーションロボット
- 遠隔操作ロボット
- パーソナルモビリティ
- ホビーロボット
- 配送ロボット
上記はあくまでも代表的なものです。技術の進歩にともない、他にも様々なロボットが登場しています。
近年利用が拡大し注目を集めているのが「配膳ロボット」
近年注目を集めているロボットが、「配膳ロボット」です。配膳ロボットの導入に力を入れているのが、ガストなどを展開しているすかいらーくグループです。
すかいらーくグループは2021年8月に配膳ロボットの実証実験を開始し、2021年末時点では、約150店舗で180台程度しか導入していませんでした。しかし、実証実験からわずか1年半後の2022年末には約2,100店舗で3,000台の配膳ロボットを導入しました。
TECH+が2023年2月に報じた情報によれば、配膳ロボットの世界市場は2022年で65億円、2021年比で118.2%と大幅に伸長していきます。大幅な伸長した要因は上記で紹介したすかいらーくグループの大規模導入によるものです。
また、海外で配膳・配送業務の自動化や省人化などが活性化したことも要因といわれています。同記事に記載されている配膳ロボットの世界市場予測では2030年には189億円、2022年比で約2.9倍になるともいわれており、今後も配膳ロボットの利用は拡大していくでしょう。
配膳ロボットの利用が拡大している3つの要因
なぜここまで配膳ロボットの利用が拡大し、今後も拡大していくといえるのか気になる方も多いでしょう。配膳ロボットの利用が拡大している要因として次の3つが挙げられます。
- 飲食業界の深刻な人手不足
- 最低時給の上昇
- 感染症対策における接触の回避
それぞれ詳しくみていきましょう。
飲食業界の深刻な人手不足
飲食業界は深刻な人手不足に陥っています。帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によれば、飲食業界の人手不足割合は非正社員が85.2%となり、コロナ前の水準に戻りました。
しかし、少子高齢化によって主要な働き手であった若者減少、新型コロナウイルスの営業自粛・短縮による若者流出によって、人材の確保が今まで以上に難しくなっています。
最低時給の上昇
最低時給は年々上昇しており、2022年の東京都の最低時給は1,072円となりました。2012年時点は850円だったことから、10年で26%上昇していることになります。
人手の需要と供給のバランスに大きな差が生じている状況から、人件費も高騰しており、コスト削減の観点から配膳ロボットの導入が増えてきました。
感染症対策における接触の回避
新型コロナウイルスの流行をきっかけに、感染症対策として非対面・非接触が推奨されました。飲食店でも従業員の感染リスク軽減が経営課題となっています。
配膳ロボットによって配膳を自動化できれば、お客さんとの接触回数を最低限にできます。感染症対策の一環として配膳ロボットが注目されたことも利用が拡大した要因の1つです。
そもそも配膳ロボットとは?
配膳ロボットとは、自立走行によって配膳を自動化できるロボットのことです。ロボットの種類としては「サービス用ロボット」や「配送ロボット」に分類されます。
センサーやAIといった最新技術を搭載しており、人や障害物を回避しながら、指定された席まで料理や備品などを運べます。機種によっては会話コンテンツによってお客さんとコミュニケーションを取れるものや、タッチセンサーによりお客さんと触れ合えるコンテンツが実装されているものもあります。
配膳ロボットの仕組み
配膳ロボットの障害物回避センサーにより、対象に照射したレーザー光の散乱光・反射光を測定して対象物までの距離測定などを行います。
また、高精度の位置決め技術により、配膳ロボット自身が正確な位置を把握できるため、周りの複雑な状況を即座に判断し、ぶつからないよう移動することが可能です。
配膳ロボットの役割
配膳ロボットの役割は大きく分けて次の3つです。
- 指定された席への自動配膳
- 食後の下膳
- 接客のサポート
それぞれ詳しくみていきましょう。
指定された席への自動配膳
配膳ロボットの大きな役割が、指定された席への自動配膳です。お盆に料理やドリンク、備品などを乗せて指示を出せば、指定された席まで料理を運べます。
人の手で配膳する場合、1度に持てる量には限界があるため、ホールと厨房を何度も行き来しなければならず、落とすなどのリスクがありました。一方、配膳ロボットであれば30~50kgの料理を1度に運べます。
そのため、ホールと厨房の往復回数を最低限にすることができ、従業員の負担軽減が可能です。また、落とすなどのリスクもなくせるため、大量の料理を安全に運べます。
食後の下膳
配膳ロボットは食べ終わった食器などを厨房まで運ぶこともできます。下膳を配膳ロボットによって自動化できれば、最少人数で席の清掃やテーブルセットを行えるでしょう。
宴会や忘年会、パーティーなどは、下げなければならない食器が大量にあるため、何度もホールと厨房を往復しなければなりません。しかし、配膳ロボットを活用すれば、配膳時と同様、往復回数を最低限にできるため、業務効率化や座席回転率向上に寄与できます。
接客のサポート
配膳ロボットによってお客さんとの接触回数が減ってしまうと、おもてなしの精神が低下すると感じる方も少なくありません。配膳ロボットの機種によっては「ご注文ありがとうございます」といった可愛い声で接客してくれるものもあります。
また、タッチセンサーを内蔵している機種の中には、頭を撫でると「温かい手ですね」など、様々なリアクションおよび表情でお客さんと触れ合うことも可能です。このように無機質ではない温かいサービスで接客のサポートが行えるのも配膳ロボットの特徴です。
また、配膳ロボットの自動化によって、業務負担を軽減できれば、空いたリソースを特別なおもてなしなどに割くこともできます。活用次第では接客の質を向上させられるでしょう。
まとめ
ロボットの定義は時代とともに変容し、アニメなどに登場する近未来感のあるロボットから、シンプルかつ広義的なものとなりました。これにより、工場に導入される産業ロボットやスマートスピーカーなどもロボットに分類されています。
人手不足や新型コロナウイルスの感染をきっかけに利用が拡大しているロボットが、「配膳ロボット」です。配膳ロボットによって配膳業務などを自動化できれば、従業員の負担軽減や業務効率化、座席回転率向上に寄与できます。
e無線でも株式会社USENとパートナーシップを締結し、配膳ロボットの導入支援を行っています。飲食店運営の業務負担を軽減したい、人手不足を解消したいという方は、お気軽にご相談ください。