配膳ロボットとは?メリット・デメリットや具体的な活用方法について解説
飲食業の人手不足が深刻化しています。帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によれば、アフターコロナに向けて飲食業の需要が急速に拡大しました。
人手不足割合は正社員が61.3%、非正社員は85.2%にも上ります。このような中、人手不足解消や業務負担軽減を目的に導入が進んでいるのが「配膳ロボット」です。
今回は配膳ロボットの概要やメリット・デメリット、具体的な活用方法について解説します。
配膳ロボットとは?
配膳ロボットは名称のとおり、配膳を自動で行ってくれるロボットのことです。センサーやAIといった先端技術により、障害物や人を避けながら、指定された席まで多くの食事や備品などを運べます。
飲食店の深刻な人手不足や新型コロナウイルスの流行による非接触・非対面の推奨によって急速に導入されはじめました。
配膳ロボットの4つの基本機能
配膳ロボットの基本機能として次の4つが挙げられます。
- 配膳・下げ膳
- 簡易的な会話
- 人や物との接触回避
- 自立走行
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.配膳・下げ膳
配膳・下げ膳は配膳ロボットのメイン機能です。料理や備品などを配膳ロボットの棚に置いて配膳場所を設定すれば、配膳ロボットが自動的に目的の席まで運びます。
料理を取り出せる状況になれば、音と光で取り出し可能なことをお客さんに知らせる仕組みです。また、お客さんが退店後、配膳ロボットを指定の席で待機させておけば、下げた膳を棚に置いて厨房まで運ばせられます。
ただ、配膳ロボットはアームがなく、自動で料理や食器の上げ下げは行えないため、その作業は人の手が必要です。
2.簡易的な会話
配膳ロボットの多くは、簡易的な会話機能が実装されています。実装されている会話コンテンツを活用することによって、お客さんとコミュニケーションを取ることが可能です。
また、タッチセンサー内蔵の配膳ロボットの場合、ロボットと触れ合えるコンテンツが実装されているものもあります。
3.人や物との接触回避
配膳ロボットの自立走行は、人や物と接触するリスクがありました。そこで採用されたのが障害物センサーです。
障害物センサーの採用によって、人や物への接触回避が可能になりました。その結果、衝突リスクを大きく低減し、安全に運用できるようになっています。
4.自立走行
前述のとおり、配膳ロボットは自立走行機能が備わっています。自立走行を可能にしているのが次の2方式です。
- タグ方式
- マッピング方式
タグ方式とは、天井に位置情報を検知するためのタグを取り付け、そのタグ情報を活用して配膳ロボットを走行させる仕組みです。一方のマッピング方式は、最初にマッピング作業をするだけで自立走行が可能となる仕組みです。
どちらもメリット・デメリットがありますが、タグ方式は席ごとにタグを貼り付けなければなりません。そのため、近年は導入時の手間がかからないマッピング方式が主流となっています。
配膳ロボットの仕組み
配膳ロボットの仕組みをもう少し詳しく解説します。配膳ロボットは障害物回避センサーが搭載されており、このセンサーによって人や物への衝突を回避しながら自立走行が可能です。
これは人や物といった対象物に照射したレーザー光の反射光・散乱光によって障害物との距離の測定や性質の特定などを行います。また、高精度の位置決め技術で配膳ロボットが自身の位置を正確に把握することで、周囲の状況を的確に判断でき、衝突を回避しながら自立走行できます。
配膳ロボットの具体的な活用手順
配膳ロボットの具体的な活用手順は次のとおりです。
- 配膳ロボットの料理を乗せる
- 配膳先の席を設定・配膳を開始する
- 配膳ロボットの移動
- 配膳の完了
- 指定の位置に戻る
また、下げ膳の場合は片付ける席を設定した後、配膳ロボットをその席に移動させます。到着したら使用済みの皿などを乗せ、乗せ終わったら指定の位置に配膳ロボットを戻す流れとなります。
また、配膳ロボットは配膳・下げ膳だけでなく、来店したお客さんを空席に案内することも可能です。
配膳ロボットの5つのメリット
配膳ロボットのメリットとして次の5つが挙げられます。
- 省人化できる
- コストを削減できる
- 広告塔として機能させられる
- 業務を効率化できる
- 顧客満足度を向上させられる
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.省人化できる
配膳ロボットを導入する最大のメリットとして上げられるのがコスト削減・省人化です。配膳ロボットを導入すれば、お客さんの席案内といった接客業務の手間をなくすことができます。
また、家族連れなどの大人数の場合は複数回に渡って配膳しなければならない他、下げ膳時も2人がかりで行わなければなりませんでした。しかし、配膳ロボットであれば、1度にまとめて配膳できますし、配膳ロボットに食器の運搬を任せられるため、1人でもスムーズな片付けが行えます。
これによって省人化が可能となり、人手不足の解消に寄与できます。
2.コストを削減できる
配膳ロボットは休憩が不要なため、営業時間中ずっと稼働させられます。したがって、休憩出し用の人員を確保したり、シフトの調整・管理をしたりする手間を削減することが可能です。
省人化によって営業に必要な最低人員数も減らせるため、人件費やシフト調整にかかる時間といったあらゆるコストを削減できます。
3.広告塔として機能させられる
配膳ロボットは人とのコミュニケーションを念頭に設計されているため、簡単な会話機能によって人とコミュニケーションを取ったり、触れ合ったりできます。また、普及率が向上しているとはいえ、配膳ロボットはまだ目新しいことから、テーマパークのような雰囲気を味わえるといった声が多く、子どもや家族連れに人気です。
TwitterやInstagramなどの投稿も増えてきていることから、配膳ロボットを1種の広告塔として機能させられます。
4.業務を効率化できる
配膳・下げ膳といった単純作業を配膳ロボットによって自動化できれば、従業員はお客さんとのコミュニケーションなど、人にしかできない業務に集中できます。また、配膳ロボットは欠勤や退職などの心配がありません。
安定した労働力として確保して人にしかできない業務との分業できるため、業務効率化にもつなげられます。
5.顧客満足度を向上させられる
配膳ロボットの活用によって、負担を軽減できれば、従業員は余裕を持って接客が行えるようになるため、接客の質を向上させられます。また、配膳ロボットは会話や表情を楽しめるサービスロボットであり、衝突する心配もなく、見た目も柔らかい印象であることから、サービス業に馴染みやすいです。
これらの相乗効果によって、顧客満足度の向上が期待できます。
配膳ロボットを導入する際の3つの注意点
配膳ロボットを導入する注意点として次の3つが挙げられます。
- 完全な自動化は行えない
- 導入コストが必要
- 導入環境を整備しなければならない
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.完全な自動化は行えない
配膳ロボットはあくまでも料理を席まで運ぶロボットです。ロボットに料理を乗せたり、ロボットからテーブルへ移し替えたりするのは、人の手を介す必要があります。
そのため、配膳・下げ膳を完全に自動化することはできません。
2.導入コストが必要
配膳ロボットは導入コストが必要です。配膳ロボットの機種によりますが、近年注目を集めている猫型配膳ロボット「BellaBot」は税込372万円といわれています。
そのため、店舗規模に合わせて複数台導入したり、ロボット導入に合わせて店舗を改装したりした場合、数千万円かかる可能性もゼロではありません。長期的にみればコスト削減につながるため、これら導入コストを回収できる見込みがありますが、導入コストの高さは導入の障壁となる可能性が高いです。
3.導入環境を整備しなければならない
店舗内に段差があったり、ロボットがスムーズに通れるほどの通路幅がなかったりする場合、配膳ロボットを導入できません。また、配膳ロボットの機種によっては、天井の形状や高さにも制約が生じる可能性があります。
このような場合、店舗自体を改装して導入環境を整備しなければなりません。そのため、配膳ロボットを導入する際は、現在の店舗で導入可能か事前に確認しておく必要があります。
配膳ロボットを導入する際に押さえておくべき3つのポイント
配膳ロボットを導入する際に押さえておくべきポイントとして次の3つが挙げられます。
- 導入目的の明確化
- オペレーションの再構築
- 予算・効果をしっかりと見定める
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.導入目的の明確化
少人数でも営業できる状態にして人手不足を解消したい、業務負担を軽減して接客の質を向上させたいなど、飲食店によって導入目的は様々です。配膳ロボットの効果を最大化させるためには、何のために配膳ロボットを導入するのか目的を明確にしましょう。
また、目的が明確になったら、店舗全体で共有する必要もあります。いきなり配膳ロボットを導入して戸惑うのは現場で働くホールスタッフです。
しっかりと共有をしていないと、配膳ロボットの導入によって業務効率が悪くなったり、更なる離職を招いてかえって人手不足が深刻化したりする事態にもなりかねません。店舗の混乱や従業員の不信感を生じさせないためにも、しっかりと情報共有することが大切です。
2.オペレーションの再構築
配膳ロボットの効果を最大化するためには、現在のオペレーションから配膳ロボットを使用したオペレーションに再構築する必要があります。オペレーションを再構築する際は、以下のポイントを押さえておくとよいです。
- いつ・どこで・どのタイミングで配膳ロボットを使用するのか
- 配膳ロボットにどこまで料理を運搬させるのか
- 故障・事故時のトラブル対応
- 従業員が料理提供する必要がない際は何の業務を行うのか
滞りなく配膳ロボットを導入するためにも、オペレーション内容は明確にしておきましょう。
3.予算・効果をしっかりと見定める
配膳ロボットの導入費用は決して安くありません。コスト削減できるから長期的にみれば費用回収できるという曖昧な考えで導入してしまうと、採算が取れず赤字になってしまう可能性があります。
このような事態を避けるためには、導入目的を明確にしたうえで1人雇用した場合の人件費と比較するなどして、どれくらいの費用対効果が見込めるのかしっかりと算出し、そのうえでどれだけの予算を割くのか見定めることが大切です。
また、配膳ロボットのメーカーによって、価格や機能、販売方法、サポート内容などが異なるため、これらも考慮したうえで効果を見定める必要があります。
配膳ロボットの導入事例
配膳ロボットの導入事例として次の3つの事例を紹介します。
- 幸楽苑
- すかいらーく
- サイゼリヤ
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.幸楽苑
幸楽苑では、新型コロナウイルスの予防対策や人手不足解消を目的にAIを活用した非接触タイプの自動配膳ロボット導入の実証実験を行うことを2020年に発表しています。
自動配膳ロボットの導入によって、配膳を自動化して従業員負担を軽減し、サービス中心の働き方へシフトしていくことを目指しています。
2.すかいらーく
すかいらーくは、猫型配膳ロボット「BellaBot」の導入を2022年に発表しました。年末までにしゃぶ葉やガストなど、約2,000店舗に配備し、従業員とお客さんとの接触回数を減らして、感染症対策を施していくとしています。
また、配膳を自動化することで、従業員の負担を軽減していくことも目指しています。
3.サイゼリヤ
サイゼリヤでは、ソフトバンクロボティクスが提供している配膳ロボット「Servi」を本格導入することを2021年に発表しました。他社メーカーとの配膳ロボットと合わせて、年間50店舗程度、配膳ロボ導入店舗化していくことを検討しているそうです。
上記導入事例以外にも、回転すし店やファミレス、病院などでも配膳ロボットの導入が進んでいます。
まとめ
配膳ロボットは配膳を自動化できるロボットです。ロボットからテーブルへの移し替えなどは人の手が必要なため、配膳の完全な自動化は行えません。
ただ、大量の料理を1度に運搬できるため、従業員の業務負担軽減に寄与できる他、コスト削減や業務効率化といったメリットを享受できます。一方、配膳ロボットの導入にあたっては、導入コストが必要だったり、導入環境を整備したりしなければなりません。
配膳ロボットの導入に失敗しないためには、ポイントを押さえたうえで、費用対効果は期待できるのかしっかりと見定めることが大切です。当社でも配膳ロボットを取り扱っており、配膳ロボットの導入を支援しています。
気になる方はお気軽にご相談ください。