効率とはなに?効果・能率との違いや生産効率についても解説
仕事をしている人であれば、「効率化」という言葉を1度は聞いたことがあるでしょう。企業の競争力を向上させて、利益を拡大していくためには、効率化が欠かせませんが、効率とはどういう意味か理解している人は少ないです。
今回はビジネスにおける効率の意味と、効果との違い、生産効率の概要などについて解説します。
効率とは?
ビジネスでいう効率とは、業務量とそれをこなすために消費されるエネルギーの割合のことです。より少ないリソース・時間で、より大きな成果を上げたり、多くのことを行ったりする=効率と考えれば、分かりやすいかもしれません。
例えば、資料を2時間で5ページ作成したとしましょう。次の日に資料を2時間で10ページ作成できたのであれば、「効率が上がった」「効率が良い」と判断できます。
効果との違い
効果とは、ある働きかけによって得られる良い結果のことです。長期にわたって高い効果、すなわち良い結果を得られている能力を効果性ともいいます。
効果を得られた=正しいことができていると考えれば、分かりやすいかもしれません。効率と効果の違いは、フォーカスするポイントです。
効率は可能な限り手間・無駄を省いて多くの業務をこなすという業務プロセスに焦点を当てています。一方、効果は手間と時間をかけて大きな成果を上げることに焦点を当てています。
業務改善の際、効率化ばかりに目が行きがちです。しかし、効率ばかり高めても、効果を得られなければ意味がありません。
企業の目的達成能力を最大化するためには、効率と効果を掛け合わせていく必要があります。そのため、両者は相関関係にあるといってよいでしょう。
業務における「生産効率」とは?
生産効率とは、人的、もしくは経済的な投資を行った際の効果のことです。例えば、150人体制で15台の製品を製造できているとしましょう。
100人で15台の製品を製造できれば生産効率は向上していますが、180人で15台しか製造できなくなった場合、生産効率は低下してしまいます。
また、2時間で200個の製品がつくれる設備を導入したとしましょう。想定どおりに製造できれば問題ありませんが、操作方法が分からないなどの理由で、2時間に170個しか製品が製造できなければ、この場合も生産効率が低下したとみなされます。
ただ、生産効率が高い状態を維持し続ける方が良いとは一概には言い切れないです。というのも、市場は常に変動しているからです。
例えば、扇風機やクーラー、ストーブなどのように売れる時期と売れない時期が分かれる製品を製造したとしましょう。製造計画は昨年までのデータをもとにした見込みであるため、見込みが外れることは少なくありません。
実際の需要を下回っているにもかかわらず、闇雲に生産効率の高さだけを追い求めてしまうと、大量の在庫を抱える事態となりかねません。したがって、生産効率は過不足なく100%供給できるように市場の需要に合わせて調整し最適化していくことが大切です。
生産効率の算出方法・指標
生産効率は「人」と「設備」の2種類に分けて、捉える必要があります。
人の生産効率は「1人あたりの成果」で確認します。算出方法は次のとおりです。
「1人あたりの成果=成果数(アウトプット数)÷人数」
一方、設備の場合は「可動率(べきどうりつ)」で生産効率を確認します。算出方法は次のとおりです。
「可動率=実際の可動時間÷総運転時間」
総運転時間は休憩や引き継ぎなど、公的な設備停止を除いて算出しましょう。
このように、生産効率は1人あたりの成果数と可動率、2つの指標を用いて判断します。一般的には指標がプラスになることを重視しますが、マイナスを重視する企業も多いようです。
例えば、非可動率です。非可動率とは、設備や機械が稼働していない時間の比率のことで、
設備や機械が稼働している時間を算出した可動率とは逆の指標となります。
非可動率にフォーカスした場合は、非稼働率を抑えて、生産効率の向上を目指します。
生産効率の向上は現代日本における最優先課題
生産効率の向上が現代日本における最優先課題である理由は次の2つです。
- 少子高齢化
- 国内市場縮小および市場のグローバル化による競争激化
それぞれ詳しくみていきましょう。
少子高齢化
少子高齢化により出生数の低下および、日本国内の労働人口は減少傾向にあります。総務省が発表した「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要」によれば、労働人口は2022年平均で6,902万人と、前年比で5万人減少しました。
また、厚生労働省が発表した「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によれば、2022年の出生数は77万747人で、前年の81万1,622人よりも4万875人減少しています。
今後、現役世代の減少にともなって労働人口の減少もさらに加速することから、今まで以上に人材の確保が困難になることが予想されます。少ない人手でも今までの生産量・質を維持していくためには、生産効率の向上が欠かせません。
国内市場縮小および市場のグローバル化による競争激化
少子高齢化による国内人口の減少は、国内の消費量および国内市場の縮小を招きます。売上の確保・拡大を狙うためには、海外市場も視野に入れなければなりません。
しかし、すでに多くの企業が海外市場に進出をはじめている他、多くの海外企業も国内の市場に参入しており、市場のグローバル化によって競争は激化しつつあります。しかし、日本の国際競争力は先進国の中でも低く、IMD世界競争力ランキングでは63ヶ国中34位、OECD諸国の国際比較でもOECD加盟国36ヶ国中21位とG7では最も低い数値です。
国際競争力を強化していくためには、生産効率を向上させてリソースを最適化させていく必要があります。
生産効率を向上させる3つのメリット
生産効率を向上させるメリットとして次の3つが挙げられます。
- コストの削減
- 従業員満足度の向上
- 利益の向上
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.コストの削減
生産効率が向上すると、1人あたりの生産性が向上するため、業務時間を短縮できます。少ない人数でも業務をこなせるようになれば、残業時間の短縮にも寄与できるため、人件費の削減が可能です。
時間あたりの生産効率が向上できれば、企業活動に必要な電気代などのコストも削減できます。
2.従業員満足度の向上
生産効率の向上をさせると、業務プロセスの無駄を削減できるため、効率よく業務できる環境整備が可能となります。1人あたりの生産性向上によって業務時間も短縮できれば、長時間労働の是正にもつながるため、ワークライフバランスを向上させることも可能です。
ワークライフバランスを向上させれば、従業員満足度が向上するため、モチベーションアップを期待できる他、離職による人材流出の防止、優秀な人材の確保にも寄与できます。
3.利益の向上
生産効率の向上によって、コストを削減できれば、その分利益を得られます。また、1時間あたりの製造数を増やせるため、少ない投資で多くの利益を得ることも可能です。
金銭・時間・人に余裕が生まれれば、人的リソースの最適化や事業拡大、新規事業の創出、福利厚生の充実に寄与できるため、競争力の強化やより生産性の高い企業活動を展開できます。
生産効率を向上させる3つのポイント
生産効率を向上させるポイントとして次の3つが挙げられます。
- 目的の明確化
- ツールの使いやすさ
- 環境の整備
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.目的の明確化
施策を練るにあたって、生産効率の向上が目的となってしまう企業は多いですが、生産効率はあくまでも手段に過ぎません。「コスト削減を図る」「残業時間を削減する」など、生産効率を向上させて何を目指すのかを明確にすることが大切です。
また、経営層で目的を明確化しても、実際に作業を行うのは現場の従業員です。生産性向上に取り組む際は、社内で目的・目標を共有し、従業員に目的意識を持ってもらう必要があります。
2.ツールの使いやすさ
生産効率向上に向けてツールを導入する際、ツールの使いやすさを重視しましょう。使用しづらいツールを導入してしまうと、現場で活用されなくなる、導入したことで生産効率が悪くなるといったリスクがあります。
ツールを使用するのは現場の従業員です。そのため、現場の意見をしっかりと聞いたうえで導入の必要性を精査し、導入するのであれば現場の従業員が使いやすいツールを選ぶことが大切です。
3.環境の整備
生産体制をしっかりと整備することも、生産効率を向上させるためには欠かせないポイントです。体制が整備されていない状態で施策を実施してしまうと、現場の混乱を招き、失敗するリスクが高くなります。
体制が整備されたプロセスから徐々に施策をはじめていくなど、現場の状況や問題に合わせて臨機応変に実行していかなければなりません。
生産効率を向上させる5つの方法
生産効率を向上させる方法として次の5つが挙げられます。
- 3Mの削減
- 業務プロセスの洗い出し・改善
- ツールやシステムの導入
- 設備配置の最適化
- データによる可視化
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.3Mの削減
3Mとは、上記3つのことを指しています。
- ムリ:能力以上に負荷がかかっている
- ムダ:能力に対して負荷が少ない
- ムラ:ムリとムダの混在により、様々なタイミングで発生している
例えば、待ち時間が長すぎる作業や、無駄な報告・ルールが多いなどが挙げられます。定量的かつ単純作業であれば、ロボットや機械などによって自動化できることも多いです。
3Mを削減して生産効率を向上させていきましょう。
2.業務プロセスの洗い出し・改善
業務プロセスの洗い出しを行っていくことも生産効率の向上には欠かせません。生産効率を効果的に向上させていくためには、3Mの削減やツール・システム導入、設備配置の最適化を行っていく必要があります。
しかし、業務遂行にあたりどのようなプロセスを踏んでいるかを把握していないと、生産効率を最大化できません。そのため、業務プロセスを洗い出して全体像を把握した後、改善点を見つけていく必要があります。
3.ツールやシステムの導入
事務処理などの単純なパソコン作業や在庫管理、稼働調整、故障・異常の検知などを自動化できるツール・システムが増えています。自動化できれば、空いた人的リソースをコア業務やクリエイティブな業務に割くことができるため、長時間労働の是正や事業拡大を実現することが可能です。
業務のデジタル化が必須なため、ITに強い人材の確保・育成が必要ではあるものの、DX推進の基盤も構築できることから、ツールやシステムの導入は生産効率の向上において非常に有用だといえます。
4.設備配置の最適化
設備配置の最適化も生産効率を向上させる方法の1つです。設備の配置は業務プロセスや生産形態によって考えがちです。
しかし、実際に作業してみると、材料を取りに行くなどの往来が激しく、無駄が発生していることも少なくありません。そのため、仕上がりや評価、システムの導入だけでなく、現場で働く従業員の意見を取り入れながら、設備の配置も最適化していくことも重要です。
5.データによる可視化
データによる可視化も生産効率の向上には有効な方法です。データによる可視化とは、IoTが進歩した現代では、今までは把握できなかったものをデータとして数値化できます。
これにより、稼働状況や労働状態などあらゆるデータを把握できるため、より具体的な対策が立てられるようになります。
現場でのコミュニケーションを効率化したいのならば無線がおすすめ!
現場でのコミュニケーションを効率化したい場合、無線がおすすめです。無線を活用すれば、複数人にまとめて音声による情報伝達が行えます。
また、携帯電話は電話帳や通話履歴から相手を選ぶ必要があるため、情報を発信するまでにタイムラグが生じてしまいます。一方、無線は送信ボタンを押せば、迅速な情報の発信・伝達が可能です。
ただし、無線は種類によって通信距離などが異なる他、近年はスマホを無線として活用できるトランシーバーアプリも増えてきました。そのため、無線で生産効率を最大化するためには、使用状況などを加味しながら、自社に適したものを選ぶ必要があります。
まとめ
「少子高齢化」や「国内市場縮小および市場のグローバル化による競争激化」により、生産効率は現代の日本企業における最優先課題となっています。しかし、「効率が大事」といっても、効率がどのような意味で、どのように業務を効率化していく必要があるのか、理解している人は少ないでしょう。
業務の効率化や生産効率の向上を目指すのであれば、効率の意味を正しく理解し、どういったプロセスで業務を最適化していくのか、しっかりと理解していくことが大切です。