DXの身近な例10選!DXに活用できるデジタル技術や成功させるポイントについて解説
DXはデジタル変革ともいわれ、現代の企業において重要な経営テーマとなっている取り組みです。一般消費者からすると関係のない取り組みだと思われがちですが、DXは一般消費者とも密接に関わっています。
今回はDXの身近な例やDXに活用できるデジタル技術、成功させるポイントについて解説します。
DXの身近な例10選
DXの身近な例として次の10つが挙げられます。
- タクシー配車サービス
- 保険料キャッシュバック
- オンラインスクール
- スマート家電
- テレワーク
- 無人店舗
- フードデリバリーサービス
- モバイルオーダー
- サブスクリプションサービス
- カスタマーサポート
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.タクシー配車サービス
Uber TaxiやDiDiといった配車サービスは、DXによって刷新されたサービスの一列です。タクシーの乗車は従来、道端や駅前のタクシー乗り場でタクシーを捕まえる必要があり、タクシー側も街中を走行したり、待機したりしながら乗客を探す必要がありました。
しかし、これら配車サービスを使用すれば、乗客はアプリおよびGPS機能でタクシーを呼ぶことができ、タクシー側も乗客を探す手間を省いて効率よく集客できるようになりました。
2.保険料キャッシュバック
保険料のキャッシュバックもDXによって実現したサービス例です。キャッシュバックとは、保険加入者が病気にならず保険金を請求しなかった場合、保険料の1部をキャッシュバックする仕組みです。
この仕組みは被保険者情報をデータ化することにより、健康状態を指標として可視化できるようになったことから実現しました。キャッシュバック制度は保険金の請求をしないように、自身の健康状態を気にかける一助にもなっています。
3.オンラインスクール
オンラインスクールもDXによって誕生したサービスです。元々、習い事は特定の時間・場所に生徒が赴いて先生に会う必要がありました。
しかし、オンラインスクールの場合、講義内容を記録し動画として配信しておければ、生徒は好きなタイミングで勉強が可能です。1度に多くの生徒が講義を受けられるため、スクール側の収益も最大化させられます。
4.スマート家電
スマート家電とは、スマートフォンと機能連携ができる家電のことです。従来、家電は自宅にいないと操作できませんでした。
しかし、DXによって実現したスマート家電であれば、離れた場所からでも遠隔で操作することが可能です。値段は従来の家電より高めですが、機能次第では節電・節水にもつながることから、近年注目を集めています。
5.テレワーク
テレワークとはパソコンやタブレットといった端末とネットワーク環境があればどこでも仕事ができる働き方です。
新型コロナウイルスによって広く普及したテレワークも、DX事例の1つといわれています。
6.無人店舗
無線店舗もDXの身近な事例の1つです。会計業務効率化の手段としては従来、セルフレジを導入して、従業員の業務負担を軽減したり、人件費の削減を図ったりしていました。
しかし、近年はローソンの無人店舗Lawson Goや、イオンリテールが開発した買い物システム・レジゴーなどのようにレジシステム自体をなくす取り組みもはじまっています。
7.フードデリバリーサービス
フードデリバリーサービスとは、店舗で調理した商品が配達員を介して、手元に届くサービスのことです。代表的なフードデリバリーサービスとしては、Uber Eatsや出前館などが挙げられます。
似たようなサービスとして出前がありますが、大きく異なる点はデジタル端末を使用しているかどうかです。出前の場合、注文方法は電話が基本ですが、フードデリバリーサービスはWebブラウザもしくは専用アプリで注文できます。
また、ユーザーはフードデリバリープラットフォームに掲載されている複数の飲食店の中から食べたい商品を選択・注文することが可能です。デジタルであるため、常に最新の情報を確認できる他、アプリやWebブラウザ上で決済処理も完了させられます。
フードデリバリーサービスは新しい顧客体験を実現した身近なDX事例です。
8.モバイルオーダー
モバイルオーダーとはスマホの専用アプリやWebブラウザから利用できる飲食店の遠隔注文サービスのことです。代表的な事例としてはマクドナルドのモバイルオーダーやスターバックスのMobile Order&Payなどが挙げられます。
従来は店舗に行かないと注文できませんでしたが、モバイルオーダーであれば店舗に行かなくても注文が行えます。また、モバイルオーダーを活用した顧客のデータを収集できるため、経営分析にも用いることが可能です。
これまでのビジネスのモデルを刷新し、データの利活用を可能としたモバイルオーダーはDXの身近な例といえるでしょう。
9.サブスクリプションサービス
サブスクリプションサービスとは、サブスクの名称で親しまれている月額サービスのことですが、このサービスもDXの身近な事例です。従来、映画や動画を自由に自宅で鑑賞しようとすると、レンタル店でDVDやCDをレンタルすることが一般的でした。
しかし、サブスクリプションサービスはユーザーが月額料金を支払えば、プラットフォーム内にアップされている動画や音楽を自由に楽しめます。これにより、ユーザーの生活スタイルを大きく変わりました。
10.カスタマーサポート
近年、カスタマーサポートの機能として、AIを搭載した自動音声システムやロボットが自動応答するチャットシステムを導入する企業が増えてきました。これらのシステムを導入すれば、カスタマーサポートの業務負担を軽減できる他、消費者の意見をデータとして蓄積し、商品・サービスの改善に活用できます。
これらシステムの導入・活用も身近なDX事例の1つです。
DXとは?
DXとは、企業がAIやビッグデータといったデジタル技術を用いて、ビジネス創出や業務改善するだけでなく、企業風土の変革や旧システムから脱却する取り組みのことです。DXはスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念で元々は、進化し続ける技術が人々の生活を豊かにするというものでした。
しかし、近年は上記で触れたとおり、ビジネス変革という意味で広く浸透しており、市場変化が激しい現代において、市場の競争優位性を維持するための重要な経営テーマとして取り扱われています。
デジタル化との違い
DXと混同されがちなのがデジタル化です。DXとデジタル化の大きな違いは、両者の目的です。デジタル化は紙の書類を電子化するというように、既存の業務をデジタル技術に置き換えて、業務効率化を図ることが主な目的となります。
一方、DXは業務をデジタル化したうえで業務プロセスや企業そのものの変革を促して、市場優位性を維持することが主な目的となります。したがって、デジタル化はDXの入口に過ぎません。
DX推進に活用できるデジタル技術7選
DX推進に活用できるデジタル技術として次の7つが挙げられます。
- クラウド
- ビッグデータ
- AI
- RPA
- CRM
- SFA
- MA
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.クラウド
クラウドとは、インターネットを通じて提供されるサービスの総称です。DXに活用されるデジタル技術のほとんどがオンラインにアクセスしているのが前提となっています。
そのため、DXの実現においてクラウド技術は欠かせません。
2.ビッグデータ
ビッグデータとは、人間では全体像を把握するのが困難な膨大な量のデータのことです。従来のデータと異なる点は、保存されるデータがWebサイト上の行動履歴や購買履歴、販促・会員データといったカスタマーデータなど、多岐にわたることです。
また、GPSが収集した位置情報なども一緒に記録されるため、より精密なデータ分析が可能となります。データ分析の精度が上がれば、商品・サービスの質を向上させられる他、ユーザーの特性に合った情報発信ができるため、マーケティング成果も期待できるでしょう。
3.AI
AI(Artificial Intelligence)は、日本語でいう人工知能のことですが、DX推進においてAIは欠かせないデジタル技術の1つです。近年、自動音声システムやチャットボット、画像・動画解析など様々な分野でAIが活用されています。
機械学習を搭載したAIであれば、AI自らが問題の定義と解決を自動で繰り返し、応答や分析精度が向上していきます。そのため、AIを運用し続ければ、より少ないコスト・人員でサービスを提供できるようになるでしょう。
4.RPA
RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコン上で行う定型業務をロボットによって自動化できるデジタル技術です。RPAは人が行っているマウスやキーボードといった操作手順を記録して、迅速かつ正確に実行できます。
そのため、既存の事務作業を効率化して生産性を向上させられる、ヒューマンエラーを削減できるといったメリットがあります。業務の自動化によって人手不足の解消できる他、自動化によって時間が空いた分、付加価値の高い業務にリソースを割くことも可能です。
5.CRM
CRM(Customer Relationship Management)とは、日本語で「顧客関係管理」ともいい、顧客との関係性を構築・促進させるためのツールです。顧客情報や行動・購買履歴、顧客との関係性を一元管理して、顧客に即した提案をできるようにサポートしてくれます。
また、CRMで管理しているデータはビッグデータとして活用することも可能です。
6.SFA
SFA(Sales Force Automation)は営業を支援してくれるツールです。従来、営業は見込み顧客を探索したうえで、顧客の反応なども探りながらどこにアプローチするかを選定しなければなりませんでした。
しかし、SFAであればデータベースの分析をもとにタスクを選定してくれるため、効率よく営業活動を行うことが可能です。
7.MA
MA(Marketing Automation)とは、見込み顧客情報の獲得から商談までのフェーズを最適化するツールです。主に企業のマーケティングを自動化することが目的で、見込み顧客の情報や趣味趣向を分析し、属性に合ったマーケティング施策を実施してくれます。
業務の効率化を図れる他、データ分析に基づいて適切なアプローチが行えるため、マーケティング効果の向上が期待できます。
DX推進のフェーズ
DX推進のフェーズは次の3つです。
- 個別最適化
- 組織的なDX推進の基盤構築
- DX戦略立案と部署間連携
第1フェーズの個別最適化は、各部門が独立してツールを導入しているフェーズです。業務のデジタル化・自動化はこの第1フェーズに該当します。
第2フェーズの組織的なDX推進の基盤構築は、企業全体のDX推進を統括するDX推進チームが設置され、経営層がDXに積極的に関与していくフェーズです。各部門の個別最適化によって生まれた成果を集約し、全社的に成果にしていきます。
ただ、DX推進を目的に個別最適化を図る場合は、第1フェーズの段階でDX推進チームを立ち上げていることもあります。
第3フェーズでは、DX推進チームと経営層によって、DX戦略が立案されて、部署間の連携が図られるフェーズです。このフェーズになると各部門は個別最適化から、企業全体の最適化へと移っており、DX推進の成果が求められるようになっています。
ただし、DXは組織や企業風土の変革も伴うため、フェーズ3に移行したからと言って確実に成果を得られるとは限りません。そのため、DX戦略は中長期的な目線で練る必要があります。
DXを成功させるためのポイント
DXを成功させるポイントとして次の4つが挙げられます。
- システム導入後も定期的にPDCAを回して改善する
- 経営層が積極的に関与して理解する
- DXの目的を明確にして社内で共有する
- スモールスタートを意識する
フェーズをしっかりと踏むとともに、これらポイントも押さえてDXに取り組むことが大切です。
まとめ
DXと聞くと自分には関係のないものだと考える方は多いでしょう。しかし、DXの身近な例で紹介したとおり、タクシー配車サービスやモバイルオーダー、フードデリバリーサービスなどはすべてDXによって実現したサービスです。
あまり知られていないだけであって、我々の生活とDXは密接に関わっています。ただし、収益アップを目的に企業がこれらの事業をはじめても成功する確率は低いと言わざるを得ません。
なぜなら、DXの基盤が企業内で構築されていないからです。DXを成功に導くためには、フェーズとポイントをしっかりと認識し、中長期的な視点で取り組む必要があります。