飲食店の分析方法4選!必要なデータやデータ分析のステップについて解説
スマホ・SNSの普及による消費者行動の変化や新型コロナウイルスによる生活リズムの変化で、飲食店でもデータ活用の重要性が高まっています。しかし、データを収集しても、適切な活用方法を理解しておかなければ意味がありません。
今回は代表的な分析方法や飲食店の分析に必要なデータ、データ分析のステップについて解説します。
飲食店の分析方法
飲食店の分析方法として次の4つが挙げられます。
- ABC分析
- RFM分析
- バスケット分析
- 5P分析
それぞれ詳しくみていきましょう。
ABC分析
「ABC分析」とは、売上高やコストなどの評価軸を設定し、多い順にA・B・Cの3グループに分類して、優先度を決める分析方法です。売上の80%は全体の20%の商品がもたらしているという概念である「パレートの法則」がもとになっています。
ABC分析を用いれば、売れ筋商品とそうでない商品を区別できるため、注力すべきメニューや改善すべき点を把握できるようになり、販売戦略を立案しやすくなります。また、売上の推移を定期的に確認することで、販売状況を時間軸で可視化できるため、施策の効果を検証することが可能です。
RFM分析
「RFM分析」とは、「Recency(最新購入日)」「Frequency(来店の頻度)」「Monetary(購入金額)」の3指標でお客さんをランク付けする分析方法です。例えば、F(来店の頻度)とM(購入金額)の数値が高いものの、R(最新購入日)の数値が低ければ、競合他社にお客さんを奪われていると分析できます。
RFM分析によって、お客さんをグループ分けすれば、グループごとにマーケティング施策を講じることが可能です。例えば、上記のように競合他社に奪われているお客さんが多い場合は、離反されないような対策を講じることができます。
バスケット分析
「バスケット分析」とは、特定の商品と合わせて購入されることが多い商品を分析する方法です。データマイニングの解析手法の1つで、「マーケットバスケット解析」と呼ばれることもあります。
バスケット分析を行えば、合わせて注文されやすいものが何か、大まかな属性を把握できるため、その分析結果に基づいて、メニュー表の記載を変更するなどのような、マーケティング施策を講じることが可能です。
5P分析
「5P分析」とは、「Product(製品・サービス)」「Price(価格)」「Place(店舗・流通)」「Promotion(流通)」の4つの要素で構成されている「4P分析」に5つ目のPを加えて、4P+1Pで行う分析方法です。
「4P分析」とは、マーケティングミックスとも呼ばれ、マーケティングの実行戦略として、ターゲットや具体的なアプローチ方法を決定する際に用いられます。4P分析でもしっかりと戦略を立案できますが、さらに1つのPを加える5P分析を行えば、多角的な視点で製品・戦略を分析できるため、より踏み込んだ戦略立案が可能です。
加えるPは自社の状況や分析したい内容によって変わるものの、代表的なものとしては「People(人々)」や「Process(業務プロセス)」、「Profile(顧客管理)」などが挙げられます。
飲食店における売上分析
飲食店を問わず「売上」は「客数×客単価」で算出できます。したがって、売上を向上させる方法は次の3つです。
- 客数を向上させる
- 客単価を向上させる
- 客数・客単価どちらとも向上させる
つまり、必要なデータさえ収集できていれば、売上変動時に客数の増減なのか、客単価の増減なのかが判断できます。ただし、これらを明確にしたからといって、簡単に売上を向上させられるかといえば、そうではありません。
例えば、客数1つといっても、男女別や年代別、地域などに細分化してデータ分析が可能です。客単価もメニューの種類や注文数、1品ごとの価格で分析できますし、時間帯別や曜日別など、様々な検討材料があります。
そのため、飲食店の売上分析をする際は、様々なデータを収集したうえで、多角的に分析していくことが大切です。
各データを収集するなら「POSシステム」がおすすめ
売上分析に必要な各データを収集するなら「POSシステム」がおすすめです。「POSシステム」とは、日本語で「販売時点情報管理」と呼び、日々の売上や販売した商品をデータ化して管理できるシステムの総称です。
店舗の商品管理や売上情報はもちろん、消費者の世代や来店時間、購買行動、属性情報などの様々なデータを集計・収集できるため、簡単に売上分析ができるようになります。
飲食店がデータ分析をするべき2つの理由
飲食店がデータ分析するべき理由として次の2つが挙げられます。
- オンライン化による消費動向の変化
- 現状把握による的確な目標設定
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.オンライン化による消費動向の変化
スマホやSNSが普及して以降、オンライン化が進み、消費動向は大きく変化した他、市場の変化スピードは加速しました。また、2020年の新型コロナウイルスの流行によって、お客さんの生活スタイルも大きく変化し、デリバリーやEC販売といった需要が高まっています。
目まぐるしく変化する市場動向に対応していくためには、データを分析して、ユーザーニーズを的確に把握していく必要があります。
2.現状把握による的確な目標設定
現状把握による的確な目標設定を行う際にも、データ分析は有用です。お客さんが来店・食事・会計をして退店するという一連の流れでは、アンケートなどを行わない限り、フィードバックを得るのは難しいです。
しかし、POSシステムをはじめとするデジタルツールを導入すれば、来店人数や注文したメニュー内容、滞在時間などのデータを自動で収集できます。収集したデータを分析すれば、改善点などを把握できるため、店舗の成長に向けた的確な目標を設定できるようになります。
売上分析だけじゃない!飲食店のデータの活用シーン
データは売上分析以外にも様々なシーンで活用可能です。飲食店の売上分析以外でデータを活用するシーンとして次の3つが挙げられます。
- 質の高いマーケティングの実施
- 在庫・仕入れ値の管理
- 新しいメニューの開発
それぞれ詳しくみていきましょう。
1. 質の高いマーケティングの実施
新規のお客さんを獲得していくためには、DM配布やキャンペーンの実施といった様々なマーケティング施策を行う必要があります。収集したデータを活用すれば、どの施策で大きな効果があったのかを確認することが可能です。
また、収集したデータをもとにフィードバックを行い、改善を繰り返すことで、質の高いマーケティングを実施できるようになります。
2.在庫・仕入れ値の管理
ムダを出さない適切な在庫管理は、経営には欠かせません。しかし、在庫を目視かつ手作業で行っている場合、計測ミスをしやすい他、業務効率も悪いです。
データを活用すれば、売上予想から適切な在庫量を算出できるようになります。
また、仕入れ先が多い場合、仕入れ値の管理も大変ですが、システムを使用すれば効率的に管理することが可能です。値段変動が大きい場合、データとして仕入れ値を確認すれば、仕入れ量の調整や仕入れ先の選定にも活用できます。
3.新しいメニューの開発
売上データによって、メニューの売れ筋を把握できます。そのため、ポジションを調整したり、あらかじめ下準備をしておいて素早く提供したりといった対処が可能です。
また、客層などのデータを活用することでターゲットに合わせた新メニューを開発できます。注文数が低いメニューもデータで把握できるため、食材ロスの観点からメニューを外すなど、メニュー改定にも活用することが可能です。
分析から施策実施までの5ステップ
分析から施策実施までの手順は次の5ステップです。
- 現状把握・目的の明確化
- 仮説の構築・順位付け
- データ収集・分析方法の決定
- データの分析
- 施策の決定・実施
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.現状把握・目的の明確化
飲食店の現状を把握しなければ、的確な目的を設定できません。そのため、売上や客数、リポート率、平均単価といった指標とデータを確認し、現状を把握していきます。
現状を把握できたら、目的を明確化しましょう。目的が明確になっていないと、何を分析しなければ分からないため、必要なデータも収集できず、思うような結果を得られない可能性があります。
データ分析によって十分な効果を得るためには、目指すべきゴールは何かを最初に明確化しておくことが大切です。
2.仮説の構築・順位付け
目的を明確化したら、目的達成を阻害している問題点を洗い出します。ただし、問題点ははっきりと把握できるものから、潜在的なものもあります。
そのため、多方面から仮説を構築していくことが大切です。仮説を一通り構築したら、優先順位をつけていきましょう。
構築した仮説が複数ある場合、それらをすべて検証するのは現実的ではありません。そのため、優先順位をつけて絞り込んでいくことが大切です。
3.データ収集・分析方法の決定
仮説の順位付けを行ったら、仮説を検証するために必要なデータを収集したり、分析方法を決定したりします。
精度の高いデータを収集することもさることながら、特に重要となるのが使用する分析方法です。洗い出した課題点や構築した仮説によって、やり方は大きく異なります。
冒頭でも解説したとおり、分析方法は様々なものがあるため、検証内容に合わせて適したものを選択することが大切です。
4.データの分析
収集したデータと決定した分析方法を用いて、データ分析を行います。経験値によって、分析の精度やスピードは異なるものの、ポイントを押さえておけば、分析初心者でもある程度の成果を上げることが可能です。
また、近年はデジタル技術の進歩によって、自動でデータ分析できるツールも登場しています。業務効率化や分析精度の観点から、ツールの導入を検討してみるとよいでしょう。
5.施策の決定・実施
データ分析を行い、問題点が明確になったら、目的達成に向けた施策を決定し、実施していきます。例えば、「売上の向上」が目的で、「新規客を獲得できない」という問題点がある場合は、「認知度の低さ」や「集客力不足」が解決すべきポイントとなります。
そのため、SNSでの発信力を強化したり、新規客に向けたキャンペーンを開催したりといった施策を立案し、実施していくとよいでしょう。ただし、施策を実施して終了というわけではありません。
施策終了後はしっかりと効果測定・フィードバックを行い、改善を繰り返しながら、施策の精度を高めていくことが大切です。
売上向上を目指す際の代表的な施策
売上向上を目指す際の代表的な施策として次の3つが挙げられます。
- 客数の確保
- 価格・メニュー改定による客単価の向上
- 原価率の調整
それぞれ詳しくみていきましょう。
客数の確保
売上向上を目指すためには、客数の確保が欠かせません。客数を確保する方法としては次の2つが挙げられます。
- 新規顧客の獲得
- リピーターの獲得・キープ
新規顧客の獲得方法としては、SNS・広告・グルメサイトを活用した認知度の向上や、口コミによって来店のきっかけを生み出すなど様々です。集客力を強化して新規顧客を増加させられれば、客単価を維持したままでも売上を向上させられる可能性があります。
新規顧客を獲得できても、リピートされなかったり、リピーターを競合店に奪われたりしていては、売上は向上しません。顧客離れの原因をしっかりと把握し、適切な施策を実施していくことが大切です。
価格・メニュー改定による客単価の向上
客数が確保できないという場合、客単価を向上させれば、売上も向上させられます。そのため、メニュー分析を行い、メニュー表を工夫したり、気軽に注文できるサイドメニューを開発したりして、客単価を向上させましょう。
また、メニュー価格を改定すれば、客単価を向上させられますが、最悪の場合、顧客離れを招き、かえって売上が減少する事態になりかねません。そのため、競合店の価格相場を調査し、相場よりも高い価格にならないよう慎重に設定する必要があります。
原価率の調整
「原価率」とは、売上高に占める食材原価の割合です。注文量が多い人気のメニューでも、原価率が悪いと粗利が低くなるため、売上の向上につながらない可能性があります。
飲食店における原価率は一般的に30%程度だといわれています。そのため、しっかりと利益を得るためには、原価率をなるべく30%程度に調整することが大切です。
ただし、原価率30%を守ろうとして食材の品質を落としてしまうと、メニューの価値が低下して、顧客離れにつながる恐れがあります。そのため、メニュー全体の原価率を把握し、人気メニューの原価率は高く設定するなどの調整を行うとよいでしょう。
まとめ
POSシステムや自社アプリといったデジタルツールを導入により、飲食店でも様々なデータを収集できるようになりました。消費者の行動パターンの変化によって、飲食店でもデータ活用の必要性が高まっています。
ただし、データを収集しても適切な分析を行わなければ意味がありません。質の高い施策を実施するためにも、正しい手順と適切な分析方法を用いるようにしましょう。