ホテル業務を効率化する5つの方法!課題や効率化する際のポイントについて解説
IT化の遅れや差し込み業務によって非効率になりやすいといった特性上、ホテル業務は負担が多いです。負担が大きいにもかかわらず、待遇面が良くないことから離職率が高く、離職によって既存スタッフに負担がかかる悪循環に陥っています。
このような状況を改善していくためには、ホテル業務の効率化によって、スタッフの負担軽減や人手不足を解消し、ライフワークバランスを整備していかなければなりません。
今回はホテル業務の概要や課題、効率化するメリット・ポイント、効率化する方法について解説します。
ホテル業界は大きく5部門に分類される
ホテル業界は大きく次の5部門に分類されます。
- 宿泊
- 調理
- 管理・営業
- 飲料
- 宴会
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.宿泊
宿泊部門は宿泊客の対応など、ホテルの主軸ともいえる業務を担当している部門です。宿泊部門の役割は大きく次の5つに分類されます。
- フロント
- ドアアテンダント
- ベルアテンダント
- ハウスキーパー
- コンシェルジュ
ただし、ホテルによって存在しないものもあれば、外部業者に委託しているものもあります。
2.調理
ホテル内レストランの調理場にて、お客さんへ提供する料理を作る部門です。レストランを複数持つホテルの場合、調理部門に100人以上スタッフが在籍している場合もあります。
調理部門の役割は大きく次の5つに分類されます。
- シェフ
- ベーカリー
- ブッチャー
- ガテマンジャー
- ペストリー
調理部門は当然ながら、調理系学校卒業者や飲食経験者が採用される傾向にあるようです。
3.管理・営業
人事や経理といった裏側をサポートする管理部門、宴会や広報活動などを行う営業部門も存在します。管理・営業部門の役割は大きく次の5つです。
- プランニング(企画)
- セールス
- 施設管理
- 広報
- 人事
4.料飲
料飲部門は、ルームサービスの提供やホテル内レストランの接客を担当している部門です。料飲部門の役割は大きく次の4つに分類されます。
- ルームサービス
- バーデンター
- レセプショニスト
- ウェイター・ウェイトレス
5.宴会
宴会部門は、結婚式や宴会といったサービスの予約や手配、サービス提供を行う部門です。宴会部門の役割は大きく次の2つに分類されます。
- 宴会の予約・サービス提供
- クローク
ホテル業務の5つの課題
ホテル業務の課題として次の5つが挙げられます。
- 人手不足
- 満足度の向上と品質統一化の両立
- 業務が非効率になりやすい
- ホテル業界を取り巻く環境の変化
- IT化が進んでいない
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.人手不足
ホテル業界は深刻な人手不足になっています。帝国データバンクは2022年10月に公表した「人手不足に対する企業の動向調査」によれば、「旅館・ホテル」の正社員の人手不足割合は約65%です。
非正社員の人手不足の割合は75%、時間外労働が増加した企業の割合が66.7%と「旅館・ホテル」がトップとなっています。ホテルスタッフは、24時間体制のシフトで働く必要があるため、1日中休みがありません。
また、きめ細かい対応が求められてスタッフの負担が増える一方、休みが少なく、残業も多くなることから、ワークライフバランスが保てない他、スタッフの不満が溜まりやすいです。このような状況にもかかわらず、待遇面が良くないことから、離職率が高い傾向にあります。
2.満足度の向上と品質統一化の両立
ホテル業界は、お客さんへきめ細かい対応が求められます。しかし、業務が非効率化しやすいため、満足な顧客対応が行えません。
また、当然ながらお客さんからは一定以上のサービスレベルが求められますが、サービスの品質は各スタッフの熟練度に大きく依存します。そのため、業務プロセスが従来のままだと、顧客満足度の向上と品質の統一化の両立が行えないのが現状です。
3.業務が非効率になりやすい
ホテル業務は、忘れ物をはじめとするお客さんからの問い合わせや、急なトラブル対応などの差し込み業務が発生しやすいため、業務が非効率になりやすいです。
結果として、余裕を持った接客ができない、必要な業務に手間が回らず残業が多くなるといった課題があります。
4.ホテル業界を取り巻く環境の変化
新型コロナウイルスの流行以降、ホテル業界は大打撃を受けました。しかし、検温やアルコール消毒といった感染対策はそのままに県外の往来や外国人観光客の受け入れなど、人の流れは新型コロナウイルスの流行前に戻りつつあります。
感染対策を維持しながら、目まぐるしく変化していく環境に対応していくためには、従来の業務プロセスを見直していく必要があるでしょう。
5.IT化が進んでいない
予約システムをはじめとする基幹システムを導入しているホテル業界は多いですが、顧客管理やホテル管理、紙の台帳や口頭伝達など、IT化が進んでいない業務も多いです。ITの導入が進んでいないと、差し込み業務に手間を取られてしまい、業務の効率化を図りません。
また、アナログ設備の維持や無駄な人件費にコストがかかってしまうため、売上・顧客サービス向上の障害になってしまうでしょう。
ホテル業務を効率化するメリット
ホテル業務を効率化するメリットとして次の4つが挙げられます。
- コストカットを図れる
- ヒューマンエラーを削減できる
- 人手不足を解消できる
- 顧客満足度を向上させられる
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.コストカットを図れる
システム導入によるデジタル化によって、顧客台帳のペーパーレス化が進めば、紙代や印刷代といったコストを削減できます。また、システムの検索機能によって、特定の顧客情報を瞬時に閲覧できるようになるため、業務効率化にもつなげられます。
業務を効率化できれば、スタッフの負担軽減を減らせる他、残業時間の短縮にもつなげられるため、人件費の削減も可能です。
2.ヒューマンエラーを削減できる
近年は現金・クレジット決済だけでなく、QRコード決済や電子マネー決済など、決済方法が多様化しています。これらをすべて人の手で集計・管理しようとすると、業務負担が増してしまうため、ヒューマンエラーにつながりやすいです。
自動集計など、システムに任せられる作業はシステムに任せることで、ヒューマンエラーの削減につなげられます。
3.人手不足を解消できる
ホテル業務を効率化すれば、スタッフの負担が軽減されます。スタッフの負担が軽減できれば、人手不足でも今までの質を保ちながら業務をこなせるようになります。
また、負担軽減によって残業時間を削減できれば、従業員の不満解消も期待できるため、離職による人手不足の解消にもつなげられるでしょう。
4.顧客満足度を向上させられる
業務効率化によってスタッフの負担が軽減されれば、余裕をもって接客業務を行えるようになるため、接客の質を向上させることができます。
接客の質を向上させることができれば、結果として顧客満足度の向上につなげることが可能です。
ホテル業務を効率化する際のポイント
ホテル業務を効率化する際のポイントは、業務改善前に現状を把握することです。ただし、現状を把握するためには、管理者と現場の認識に違いがあってはいけません。
認識ズレをなくすためには、各スタッフのスキルを把握し、適切な人材配置がなされているか確認するなどして、スタッフとコミュニケーションを取りましょう。こうすれば、管理者側の認識と少しずつすり合わせながら、現状を的確に把握できるため、双方が納得する改善策を実施できるようになります。
ホテル業務を効率化する5つの方法
ホテル業務を効率化する方法として次の5つが挙げられます。
- ICTによる業務の自動化・効率化
- チェックシート・スキルマップの導入
- スタッフのマルチタスクを促進する
- スマホ・タブレットの活用
- ホームページの見直しを図る
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.ICTによる業務の自動化・効率化
ホテル業務で比重が多いのは、接客関連の業務です。したがって、接客関連の業務をICTによって自動化・効率化できれば、負担を大きく軽減できます。
「ICT(Information and Communication Technology)」とは、日本語では「情報通信技術」とも呼ばれ、コンピューターだけでなく、ネットワークを活用して情報・知識を共有することを指します。
システムを活用した予約管理や自動チェックイン・チェックアウトはもちろん、顧客管理などの部分でもICTの活用が可能です。近年、注目を集めているのが「RPA(Robotic Process Automation)」です。
RPAはパソコンで行う定型業務を自動化できるツールです。予約や売上の重複確認はもちろん、総務・経理の勤怠管理・給与計算といった単純かつ時間のかかる業務も自動化できます。
自動化できれば、ホテルスタッフの業務負担軽減が期待でき、人手不足の解消にもつなげられるでしょう。
2.チェックシート・スキルマップの導入
スタッフのスキルアップを目指すのであれば、チェックシート・スキルマップを導入すればよいでしょう。チェックシートを導入すれば、各スタッフの業務レベルを把握できるため、評価基準の参考にできます。
また、チェックシートをもとに人材の配置が行えるため、新人スタッフとベテランスタッフのシフトを同じにして新人教育につなげることも可能です。
また、スタッフの習得済みスキルを可視化したスキルマップを作成すれば、効率の良い業務割り振りができる他、習得していないスキルが分かるため、育成しやすくなります。
3.スタッフのマルチタスクを促進する
フロントスタッフはフロント業務、事務スタッフは事務作業というように縦割りしている場合、業務は非効率になりやすいです。人手不足の深刻化していく中、スタッフの不満を解消していくためには、フロント・内務といった業務を1つにまとめて、スタッフのマルチタスク化を進めていく必要があります。
マルチタスク化によって、各スタッフが複数業務を行えるようになれば、中抜けシフトをはじめとする不規則なシフト体制を廃止することが可能です。上手くいけば、スタッフの休日を増やして、働きやすい環境を整備することもできます。
前項の「チェックシート」や「スキルマップ」も活用しながら、マルチタスクを推進していきましょう。
4.スマホ・タブレットの活用
スマホ・タブレットの活用もホテル業務を効率化する方法の1つです。チャットツールを活用すれば、スタッフ同士の円滑なコミュニケーションが可能となります。
また、接客マニュアルといった研修動画を用意しておけば、スマホ・タブレットから閲覧できるため、スキマ時間で学習でき、スタッフ教育にも注力できます。また、最新の観光情報もすぐにピックアップできるため、お客さんの案内もスムーズに行えるようになるでしょう。
5.ホームページの見直しを図る
宿泊予約をしようとしてホテルの公式ホームページにアクセスしても、ホームページが閲覧しづらい、魅力が感じられないといった理由から、離れるユーザーもいるそうです。機会損失を防ぎ、新たなターゲットを獲得するためには、予約システムや写真など、ホームページの見直しが欠かせません。
ホームページのビジュアルはもちろん、見やすさや分かりやすさなど、ユーザビリティを意識したホームページ作りを心がけましょう。
コミュニケーションツールとして「無線」を導入するのも1つの手段
円滑なコミュニケーションを取るために、無線を導入するのも1つの手段です。外部に音声が漏れないようにイヤホンマイクやタイピンマイク&イヤホンを接続して使用もできます。
無線機を使用すれば素早く情報を共有して、迅速なやりとりが行えるため、スタッフ同士のコミュニケーションを促進でき、スムーズな連携を行えるようになるでしょう。ただし、無線には「特定小電力トランシーバー」「簡易無線」「IP無線」といった種類があり、通信距離が異なります。
特定小電力トランシーバーでは通信距離が短すぎるため、屋内外間やロビーとバックヤード間、複数階間、広いフロアでやりとりする場合は、簡易無線がおすすめです。ただし、地下と15階というように低高階層間でのやりとりが必要な場合は「IP無線」の導入をおすすめします。
まとめ
ホテル業界が深刻な人手不足になっているのは、帝国データバンクが公表した「人手不足に対する企業の動向調査」でも明らかです。
また、予約管理システムなど、お客さんの利便性を向上させられるシステムを導入するケースは増えているものの、顧客台帳管理など裏方業務はアナログのままというホテルも少なくありません。
スタッフの負担を軽減し、離職率の低下や人手不足の解消につなげていきたいのであれば、現状を的確に把握して、業務効率化を進めていく必要があります。スタッフ同士の連携不足が原因で業務効率化が悪くなっているのであれば、「無線」を導入してスタッフ同士の連携を強化していくとよいでしょう。