工場の業務効率化とは?メリットや理由についても解説
工場の生産力や従業員・顧客満足度の向上させる方法の1つが業務の効率化です。近年、工場の人材不足は深刻化しています。
また、少子高齢化によって労働人口が減少しており、今後人材確保はさらに難しくなるでしょう。このような状況下にもかかわらず、グローバル競争が激化し、さらなる生産力の向上が求められています。
従業員の負担を軽減しながら、生産力の維持・向上を図るためには、業務の効率化が欠かせません。
今回は工場の業務を効率化するメリットや必要性、効率化するポイントについて解説します。
工場の生産力が低下する原因
工場の生産力が低下する原因として次の5つが挙げられます。
- 標準化されていない
- 在庫がきちんと管理されていない
- ミスが多い
- 人材が足りない
- コミュニケーションが取れていない
それぞれ詳しくみていきましょう。
標準化されていない
「標準化」とは、従業員が同じレベルでパフォーマンスを発揮することです。工場の生産性向上および効率化を図るためにはパフォーマンスの標準化が欠かせません。
しかし、目の前の業務に手一杯になり、業務改善できないと、既存の従業員に依存してしまうため、標準化を進めるのが難しくなります。標準化がされなければ、業務を効率化できませんし、ベテランと新人で品質差が生まれるでしょう。
当然ノウハウも蓄積されないため、ベテランが離職した際には生産性が低下してしまいます。
在庫がきちんと管理されていない
工場の業務を円滑に進めていくためには、しっかりと資材調達を行って、部品不足が起きないようにしなければなりませんが、在庫が過剰にならないよう調整もしなければなりません。部品の過不足を防ぐためには、適切な在庫管理が必須です。
しかし、きちんと在庫管理がされていないと、部品の調達が遅れて不足したり、必要以上に在庫を抱えたりするリスクがあります。
ミスが多い
ミスが多いのも工場の生産性を低下させる原因の1つです。作業ミスが原因で生産性が低下しているのであれば、従業員が同じレベルでパフォーマンスを発揮できるよう早急に標準化を行ったり、若手の教育を促したりする必要があります。
予算に余裕があれば、補助設備を導入するのも1つの手段です。
人材が足りない
人材が足りないと、各プロセスに必要な人員が集まらないため、製造ペースが低下したり、1部工程に負担が集中したりする事態となります。負担が増加すれば、残業時間が増えるため、従業員の満足度が低下しかねません。
従業員満足度の低下は離職につながるため、離職者が増加してしまうと、人材不足に拍車をかけてしまい、生産性をさらに低下させてしまうでしょう。
コミュニケーションが取れていない
工場の規模が大きければ大きいほど、複数の部門が関わって1つの製品を作っていきます。したがって、各部門の連携は生産性向上には欠かせません。
しかし、コミュニケーションをしっかりと取れていないと、データ受け渡しや連絡ミスが頻発してしまうため、差し戻しといった生産ロスの発生リスクも高まります。
工場業務を効率化するメリット
工場業務を効率化するメリットとして次の2つが挙げられます。
- 顧客・従業員満足度の向上
- 人件費を抑えられる
それぞれ詳しくみていきましょう。
顧客・従業員満足度の向上
工場の業務効率化によって、生産のスピードや質、製品の質が向上すれば、顧客満足度の工場につなげられます。顧客満足度が向上すれば、企業の信頼度が高まられる他、新規顧客の開拓にも良い影響をもたらすため、売上アップも期待できるでしょう。
また、工場の業務効率化は残業時間や深夜労働を減らして、労働環境を改善できるため、従業員の負担軽減やライフワークバランスの向上につなげられます。
従業員が無理なく働けるようになれば、従業員満足度向上につなげられるため、離職率の低下や新しい雇用にもつなげられるでしょう。
人件費を抑えられる
工場業務を効率化できれば、従業員1人あたりの負担を減らせるため、残業時間や労働時間を削減でき、人件費を抑えることができます。
人件費を浮かせることができれば、設備投資や新規人材、新人育成、新規事業などに費やすことができるため、更なる業務効率化が企業成長につなげられるでしょう。
工場の業務効率化が必要な理由
工場の業務効率化が必要な理由として次の2つが挙げられます。
- 競争の激化
- 人手不足の深刻化
それぞれ詳しくみていきましょう。
競争の激化
現代はグローバル競争が激化しているため、国内市場だけでなく、海外市場にも目を向けなければなりません。そのため、大企業だけでなく、中小企業や海外企業の動向も念頭に置きながら経営戦略を練る必要があります。
また、仮に海外企業が開発している製品の機能に勝ったとしても、日本企業の生産性は海外企業と比較すると高くないため、企業は生産性の工場にも目を向けなければなりません。グローバル競争が激化している現代で企業が生き残るためには、工場業務効率化による生産性の向上も必要不可欠な要素です。
人手不足の深刻化
少子高齢化によって日本の労働人口は減少傾向にあります。厚生労働省が公表している「我が国の人口について」によると、全人口のうち、2025年には75歳以上の人工が約18%、2040年には65歳以上の人工が約35%となるといわれています。
2065年には総人口が9,000万人を割り、高齢化率は約38%になるといわれている状態です。
また、厚生労働省が2022年5月に公表した「2022年版ものづくり白書」によれば、約20年間で製造業の就業者は157万人減少し、高齢就業者数は33万人上昇しています。現時点で製造業の就業者が減少している中、少子高齢化によって労働人口が減少すれば、工場の人手不足は今まで以上に深刻化することが予想されます。
このような状況で工場の生産性維持・向上を図るためには、業務の効率化が必要不可欠です。
工場の業務を効率化する際のポイント
工場の業務を効率化する際のポイントとして次の3つが挙げられます。
- 目的を明確にして共有する
- 改善後に業務プロセスが増加しないようにする
- スモールスタートで改善を進める
それぞれ詳しくみていきましょう。
目的を明確にして共有する
工場の業務を効率化する目的が定まっていないと、どのように効率化していくのかはっきりしませんし、効果的な改善方法も立案できません。工場の業務を効率化する際は、なぜ効率化するのか目的を明確にしておきましょう。
また、目的が明確になったら、従業員全体で共有することが大切です。業務の効率化は業務プロセスを変えていくことにもなります。
そのため、相談もなく勝手に業務プロセスを変更してしまうと、現場の従業員から理解を得られず、効率化が進まなかったり、計画が頓挫してしまったりしかねません。業務の効率化を進めるためには、目的を明確にするだけでなく、目的を従業員全体に共有し、社内全体で推進していく体制を整備しなければなりません。
改善後に業務プロセスが増加しないようにする
業務改善後に、業務プロセスが増加しないようにしましょう。もちろん、ヒューマンエラー防止やコスト削減など、総合的にみてプラスに作用するのであれば、問題ありません。
しかし、負担が増えるような業務プロセスの増加は、従業員のモチベーション低下にもつながりますし、継続的に効率化が進められない事態にもなりかねません。改善案を導入して従業員の作業負担や業務プロセスが増加していないか十分注意しましょう。
理解を得られるかどうか不安な場合は、実際に現場で働いている従業員に意見を聞いてみるのも1つの手段です。
スモールスタートで改善を進める
工場の業務を効率化する際はスモールスタートで行いましょう。スモールスタートとは、範囲を限定するなどして、小規模に展開し、徐々に展開規模を拡大させていく手法です。
いきなり工場の業務をすべて改善するのは、取り組むハードルが高く、失敗するリスクを高めてしまいます。したがって、効率化する部署を絞るとともに、すぐに実行可能な改善からはじめ、効果が出始めたら、徐々に改善範囲を拡大していくとよいでしょう。
工場業務を効率化する方法
工場業務を効率化する方法として次の6つが挙げられます。
- 動作・工程の改善
- 設備レイアウトを最適化する
- 5Sの徹底を図る
- 3Mの削減
- 無線をはじめとするツールやシステムを導入する
- DXを推進する
それぞれ詳しくみていきましょう。
動作・工程の改善
各業務を行うに際して、無駄に時間がかかっている作業がないか、手持ち無沙汰になっている時間はないか、その作業が必要なものなのかなど、無駄な動作がないか確認します。無駄な動作を把握・改善すれば、無駄なく作業できるようになるため、業務の効率化が可能です。
また、作業だけでなく、業務工程そのものの改善も行いましょう。複数の工程に分けて製造を行うライン作業の場合、1部の工程が滞ってボトルネックになると、その他の工程にも影響を与えてしまい、製造時間が長くなってしまいます。
工場の業務を効率化するためには、動作の改善だけでなく、ボトルネックを把握して、工程の改善にも注力しなければなりません。
設備レイアウトを最適化する
設備レイアウトの最適化も工場業務の効率化に有用です。業務工程に合わせて設備レイアウトを考えがちです。
しかし、実際に作業する従業員の手間・コストを考慮すると、レイアウトが原因で無駄が発生している場合もあります。したがって、工場業務を効率化する際は、実際に現場で働いていている従業員の立場や意見も取り上げながら、レイアウトを最適化することが重要です。
5Sの徹底を図る
「5S」とは、組織全体で整理整頓や清掃などに取り組み、徹底してきれいにする活動のことです。以下5つの頭文字であるSを取ったものとなります。
- 整理:必要な物と不要な物を分類し、不要な物は処分
- 整頓:材料や機材を配置するルールを設定し、必要な時にすぐに取り出せるようにする
- 清掃:作業後に汚れやごみを取り除き、機材のメンテナンスを行う
- 清潔:整理・整頓・清掃を通じて常に清潔な状態を保つ
- しつけ:上記4Sを確実に行えるよう、ルールを作成し、徹底させる
3Mの削減
「3M」とは、「無理」「無駄」「ムラ」の頭文字を取った言葉です。1部の従業員に無駄な負担がかかっていないか、無駄な報告やルールがないか、品質にムラがないかなどが3Mに該当します。
1つ1つは大した問題でなくても、無駄な作業を1日に複数回行ったり、複数の無駄が重なったりすると業務効率は悪くなってしまいます。現状の業務プロセスにある3Mを削減することで、工場の業務効率化を促進することが可能です。
無線をはじめとするツールやシステムを導入する
業務の課題を解決するツールやシステムを導入するのも業務を効率化する手段の1つです。工場の敷地が広かったり、生産ラインが複数階に渡ったりしている場合、スムーズなコミュニケーションを取ることができません。
コミュニケーションの取りにくさが原因で効率が悪くなっている場合は、無線を導入するとよいでしょう。
また、管理に時間が割かれているという場合は、管理システムを導入し、自動化を図るのも1つの手段です。代表的な管理システムとしては以下が挙げられます。
- 故障・異常の検知
- 在庫・出荷の管理
- 勤怠・シフト管理
- 稼働状況の自動調整
生産ラインの自動化・効率化を図るのであれば、AIやロボットなどの検討してみてもよいでしょう。
DXを推進する
「DX」とは、デジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル化によって業務プロセスや組織風土そのものを変革させることです。近年、様々な業界で推進されているDXですが、工場をはじめとする製造業でも導入している企業が増えています。
DX化が進めば、自動化などによって業務を効率化できる他、データの収集・分析によって、更なる業務改善を行える利点があります。ただし、ツールやシステム、ロボットなどを導入する必要があり、コストもかかるため、DXを成功させるためには、慎重にツールを選定しなければなりません。
まとめ
人材不足の深刻化は、従業員1人あたりの業務負担や残業時間、深夜労働の増加を引き起こします。従業員満足が低下してしまうと、離職率が増加し、更なる人材不足と生産力の低下を招きかねません。
しかし、市場のグローバル化によって競争力が増している中で、企業はさらなる機能向上と生産力向上が求められています。そこで重要になるのが工場の業務効率化です。
工場の業務を効率化できれば、従業員1人あたりの負担を軽減できるため、人件費の削減や従業員の満足度を向上させられます。工場の生産力も向上させられるため、顧客満足度の向上にもつなげられるでしょう。