飲食店の業務効率化とは?業務効率化のポイントやツールについて解説
飲食店の人手不足は深刻化しています。新規人材の確保が難しく、人手不足が慢性化してしまうと、既存従業員の負担が増してしまい、顧客満足度の低下にもつながりかねません。
したがって、新規人材の獲得に力を入れるだけでなく、業務の効率化を図って、従業員1人あたりの業務負担を軽減していく必要があります。
今回は飲食店のオペレーション内容や現状、業務を効率化するポイント・ツールについて解説します。
飲食店のオペレーション
飲食店のオペレーションは大きく分けて次の3つです。
- キッチンオペレーション
- バックヤードオペレーション
- フロアオペレーション
それぞれ詳しくみていきましょう。
キッチンオペレーション
「キッチンオペレーション」とは、調理や盛り付けといった調理に付随する作業を指します。安全で美味しい料理をスピーディに提供するだけが、キッチンオペレーションではありません。
食材の保管や衛生管理、作業マニュアルの効率化などもキッチンオペレーションの業務です。したがって、ピーク時にはこれらに気を配りながら、料理を提供する必要があります。
バックヤードオペレーション
「バックヤードオペレーション」を細かく分類すると、次の2つがあります。
- 機器の動作管理
- 食材や備品の管理・発注
「機器の動作管理」とは、コンロや冷蔵庫などの厨房機器、テーブルやイス、冷暖房といったフロア機器の動作チェックのことで、不具合があれば修理の依頼を行います。
「食材や備品の管理・発注」とは、一般的に発注業務や棚卸し業務のことです。食品ロスや売り切れを防止するためには、過不足のない発注が欠かせません。
以上の点から、バックヤードオペレーションは飲食店の基盤となる作業です。調理や質の高いサービスを提供し、飲食店を円滑に運営するためには、バックヤードオペレーションの効率化と精度向上が欠かせません。
フロアオペレーション
「フロアオペレーション」とは、お客さんの来店から会計・退店までの接客作業のことです。挨拶や態度、言葉遣い、オーダー・配膳の仕方、レジの操作などがフロアオペレーションに含まれます。
フロアオペレーションは飲食店の顔となるため、飲食店のイメージや雰囲気を左右する重要な業務です。したがって、フロアオペレーションの質の高さが、新規顧客の来店やリピートにつながるといっても過言ではありません。
飲食店の現状
緊急事態宣言や外国受け入れ規制などの人流抑制策が緩和され、飲食店などの需要が回復している現在、飲食業界は深刻な人手不足に陥っています。
帝国データバンクが全国の約2万5,000社を対象に、2022年7月15日~7月31日に実施した「人手不足に対する企業の動向調査(2022年7月)」によると飲食店の人手不足割合は正社員が約54%、非正社員が73%でした。
2021年7月と比較して正社員は約10%、非正社員は約14%も人手不足の割合は上昇しています。人手不足が慢性化してしまうと、既存従業員の負担が増えるため、サービスの質が低下を招き、客離れを招きかねません。
飲食店の業務を効率化するメリット
飲食店の業務を効率化するメリットとして次の3つが挙げられます。
- 正確な情報の共有
- 人手不足の対策
- 顧客満足度の向上
それぞれ詳しくみていきましょう。
正確な情報の共有
営業時間が長く、多くの従業員が働いている飲食店は、パートやアルバイトが従業員の大半を占めているため、毎日出勤してくるわけではありません。また、シフト制が一般的であるため、シフトの入り時間もバラバラです。
このような状況で従業員が周知すべき情報を店長や正社員が個別伝達していると、従業員が出勤してくる度に伝達しなければならないため、非常に効率化が悪いです。また、口頭での伝達だと記録に残せないため、誰に情報が共有されているのか把握できず、伝達ミスが起こるリスクも高まります。
情報伝達ツールを使用すれば、画像や写真などを添付して情報を伝えられるため、口頭では伝達が難しい情報でも正確に共有することが可能です。チャット内容を記録として残せるため、情報の見直しも行えるでしょう。
店長や社員がいなくても、正確な情報をスタッフ同士で共有できるようになれば、業務効率化につながるため、新規スタッフの教育やサービスの質向上に注力できるようになります。
人手不足の対策
「飲食店の現状」のとおり、人流抑制策の緩和で飲食店の需要が回復しつつあります。しかし、コロナ禍による休業や客足の減少でスタッフ削減をした飲食店を中心に、新規スタッフの確保が難しい状況にあり、人手不足が深刻化している状況です。
新規スタッフを確保し増員するのが最善の手段ですが、想定どおり人が集まるわけではありません。飲食店の業務を効率化すれば、1人あたりの負担を軽減できるため、人手不足対策にもつなげられます。
顧客満足度の向上
飲食店の業務を効率化すれば、顧客満足度の向上にもつなげられます。多忙な飲食店の場合、従業員が目の前の業務を捌くことだけに集中してしまい、お客さんとしっかりと向き合えない、無愛想になってしまうといったケースは少なくありません。
このような状態になってしまうと、満足度が低下し、集客力が落ちてしまうリスクがあります。飲食店の業務を効率化し、1人あたりの負担を軽減できれば、顧客と向き合う余裕を作り出せるため、きめ細かなサービスを実施でき、顧客満足度の向上につなげられます。
飲食店で効率化が可能な業務
飲食店で効率化が可能な業務として次の4つが挙げられます。
- 集客
- 予約・オーダー
- 各種管理
- 会計・決済
それぞれ詳しくみていきましょう。
集客
集客の効率化でおすすめなのがSNSの導入です。SNSには様々種類がありますが、飲食店の集客ツールとして相性が良いのがInstagramです。
Instagramは近年、情報収集ツールとしても活用されはじめており、飲食店をInstagramで探すという若者が増えています。Instagramの最大のメリットは写真や動画を使用することで、料理やお店の魅力、雰囲気をダイレクトに伝えられる点です。
また、ハッシュタグを使用することで、商品の訴求ができるため、認知度と集客力の向上につなげられます。
予約・オーダー
予約は飲食店の1日の売上を安定させるには欠かせないものです。しかし、電話予約は従業員の業務を停滞させてしまう他、複数の予約サイトからの予約を取りまとめるのも、業務量の増加を招きます。
「チャット予約」を活用すれば、会話をしている感覚でコミュニケーションを取れるため、予約受け付けで発生する電話業務の削減が可能です。
さらに業務効率化を図りたい場合は、スマホやタブレット型のオーダーシステムを導入するとよいでしょう。オーダーシステムを導入すれば、お客さんが自ら端末に入力して注文できるため、従業員がお客さんの注文を受ける手間がなくなります。
注文を受ける手間がなくなる分、他業務に注力できます。
各種管理
飲食店における各種管理も業務の効率化が可能です。効率化できる管理業務として次の4つが挙げられます。
- 在庫
- 勤怠
- 売上・コスト
それぞれ詳しくみていきましょう。
在庫
食品廃棄や品切れによる機会損失の防止、仕入れコストの無駄を削減するためには、精度の高い在庫管理が欠かせません。しかし、食品によって保存期間は異なるため、在庫管理を毎日行うとすると大きな負担となってしまうでしょう。
受発注および在庫が行えるシステムを導入すれば、効率的な在庫管理が可能です。
勤怠
シフト制が導入されていることが多い飲食店の場合、勤怠管理が非常に重要です。しかし、雇用形態や時給、労働時間の違いから、集計が複雑で勤怠管理に手間がかかっている飲食店も少なくありません。
勤怠管理システムを導入し、勤怠をデータ化すれば、集計が簡単になるため、スムーズな勤怠管理が可能となり、業務効率化につなげられるでしょう。
売上・コスト
近年はデリバリーやテイクアウトなど、様々な販売方法があるため、人気の飲食店であるほど、注文殺到しやすく、目の前の業務に追われて、売上分析できない場合があります。
会計業務システムと連携可能なPOSレジを導入すれば、売上・コスト管理の効率化が可能です。
会計・決済
効率化できる飲食店の業務としては「会計・決済」が挙げられます。
現金での取扱いの場合、釣り銭の準備やレジ締めなどに時間を要しますし、1回の会計はそれほど手間でなくても、何十人ものお客さんの会計を行うとすると、大きな手間となってしまうでしょう。
したがって、会計・決済は真っ先に効率化すべき業務です。効率化の手段としておすすめなのが「キャッシュレス決済」です。
キャッシュレス決済であれば、現金の授受を行う必要がなくなるため、決済業務を効率化できます。
飲食店の業務を効率化するポイント
飲食店の業務を効率化するポイントとして次の2つが挙げられます。
- マニュアルの整備
- ECRSの原則を取り入れる
それぞれ詳しくみていきましょう。
マニュアルの整備
マニュアルを整備しておけば、教育担当者による習熟度の違いをなくせる他、正しい手順をいつでも確認できるため、効率よくトレーニングすることが可能です。
機器の操作方法や新メニューの手順など、新しい情報をマニュアルにしておけば、既存スタッフの教育にもつなげられるため、すぐに質の高いサービスを行えるようになるでしょう。
ECRSの原則
「ECRSの原則」とは業務の見直しを効率化できる原則です。次の4つの言葉の頭文字から成り立っています。
- Eliminate(排除):必要性が低い、売上に影響を与えないといった無駄な業務を削除するフェーズ
- Combine(統合):排除できない業務を別の業務にまとめられないか検討し、労力やコスト削減を行うフェーズ
- Rearrange(順序入れ替え):手戻りがなくスムーズに作業を遂行できるよう、業務プロセスの入れ替えを検討するフェーズ
- Simplify(簡素化):業務負担を軽減するため、複雑な業務をシンプルにできるかどうか検討するフェーズ
業務の効率化にあたっては、これらを意識するとよいでしょう。
飲食店の業務を効率化するツール
飲食店の業務を効率化するツールとして次の5つが挙げられます。
- 店舗管理システム
- セルフオーダーシステム
- POSレジ
- 無線
それぞれ詳しくみていきましょう。
店舗管理システム
「店舗管理システム」とは、店舗業務を一括で管理できるシステムです。一般的な業務管理はもちろん、スケジュール管理や業務プロセスの各種自動化など、様々な機能が備わっています。
店舗管理システムを導入すれば、複数店舗の情報を1つに集約できるため、効率よく店舗の情報を管理できるでしょう。
セルフオーダーシステム
「セルフオーダーシステム」とは、タブレット端末などを活用してお客さんが自分で料理を注文できるシステムです。スタッフを呼ばず、好きなタイミングで注文できるため、お客さんのストレスを軽減できる他、注文を取る時間を削減できるため、従業員の業務効率を向上させられます。
近年はLINEを活用したセルフオーダーシステムも登場しています。LINEのセルフオーダーシステムであれば、お客さんのスマホから注文できるため、席ごとにタブレット端末を導入する必要がありません。
したがって、コストを抑えてセルフオーダーシステムを導入できます。
POSレジ
「POSレジ」とは、販売情報の記録と集計システムが備わっているレジです。システムとの連携が可能な他、お客さんの会計を行うと、在庫管理や人気メニューの把握など、様々なデータを収集できます。
収集したデータは経営分析に活用できる他、キャッシュレス決済を導入すれば、会計業務の時間短縮にもつなげられます。
無線
キッチンやホール、バックヤードにいる各スタッフとのコミュニケーションを効率化したいのであれば「無線」がおすすめです。注文数が多い居酒屋などは、効率的かつ的確な人員配置が欠かせません。
無線を活用すれば、従業員同士が「どこにいるのか」「何をしているのか」を共有しておけば、スムーズな連携が行えるため、少ない人員でも無駄のない接客が可能です。しかし、無線には「特定小電力トランシーバー」や「簡易無線」などの種類があり、使用する種類によっては電波が届かないリスクがあります。
また、にぎやかな店内だと音声がかき消されるリスクもあるため、インカムとして使用するなど、使用方法にも気を配る必要があります。
まとめ
人手不足が深刻化する飲食店では、従業員1人あたりの業務負担が増しており、業務効率化による負担軽減が急務となっています。しかし、ただやみくもに効率化しようとしても、十分な効果は得られません。
十分な効果を上げたいのであれば、「ECRSの原則」を取り入れながら、業務プロセスを見直し、自店舗の課題を洗い出したうえで、課題解決できるシステムの導入が大切です。コミュニケーションや連携不足が原因であれば、「無線」を導入して従業員同士の連携を強化するとよいでしょう。