無線の話し方!基本の使い方やトラブル対処方法について解説
同時通話かつ1対1でやり取りできる携帯電話と違い、無線は交互通信で1対複数人でのやり取りが基本です。したがって、使用方法はもちろん、無線での話し方も携帯電話とは大きく異なります。
携帯電話と同じ感覚で話したり、無線を使用したりすると上手く情報共有が行えないばかりか、トラブルにも発展しかねません。
今回は無線を使用した際の話し方や基本的な使用方法、トラブル時の対処法について解説します。
無線の3つの通話方式
無線の通話方式として次の3つが挙げられます。
- 交互通信
- グループ通信
- 同時通話
それぞれ詳しくみていきましょう。
交互通信
「交互通信」とは、送信ボタンを押している間だけ音声を相手に届けることができる通話方式です。送信ボタンを押しながら音声を相手に届ける仕組みは、「PTT(プッシュツートーク)」と呼ばれます。
PTTとは、送信と受信を切り替えて通信を行う仕組みです。無線の仕組みはPTTが基本であるため、一般的な無線の通話方式は交互通信となります。
グループ通信
「グループ通信」とは、チャンネルごとに割り当てた人間に対し、1対複数人で音声を届けることができる通話方式で、無線の中でも「IP無線」で使用可能な通信方法です。交互通信は2つの機種同士による1対1通信を指すのに対し、グループ通信は複数人に対して一斉に情報共有できるため、チーム全体に情報発信しなければならない時に重宝します。グループ通信も交互通信と同じくPPTによって送受信を切り替える仕組みで、発信者以外の全員が受信者となります。
同時通話
「同時通話」とは、「クロスバンド方式」という仕組みを用いている通話方式です。クロスバンド方式とは送信と受信で異なる周波数を使用しているため、送信と受信を同時に行うことができます。
交互通信やグループ通信のように送信ボタンを押す必要がなく、携帯電話と同じ感覚で会話できます。そのため、クレーン操作など、双方がタイムリーに会話しながら、タイミングを合わせなければならないシーンなどで使用されることが多いです。
ただし、同時通話に対応している「同時通話無線」と、携帯回線を使用して通話を行うIP無線」のみです。一般的な無線だと、同時通話は行えないため、注意しましょう。
無線の基本的な使用方法
無線の基本的な使用方法としてここでは次の2項目に分けて解説します。
- 無線の使用手順
- 無線の話し方
それぞれ詳しくみていきましょう。
無線の使用手順
無線の使用手順は次の4ステップです。
- 無線の電源をONにする
- 音量の調整を行う
- チャンネルを合わせる(合わせたチャンネルを受信できるようになり音声を拾える)
- 発信する際は送信ボタンを押しながら話す
無線の機種によって使用手順は多少異なるものの、基本的には音量調節し、チャンネルを合わせるだけのため、使用方法は非常にシンプルです。
チャンネルを合わせる際の注意点
チャンネルを合わせる際は、同じチャンネルを他の誰かが使用していないか確認するようにしましょう。無線のチャンネルは何種類か用意されており、特定小電力トランシーバーであれば誰でも、簡易無線であれば免許・登録を取得している方であれば、誰でも使用可能です。
そのため、使用しようとしているチャンネルを誰かが使用している可能性があるため、使用前には他の誰かが使用していないか確認し、自分たちがチャンネルを占有することを宣言しなければなりません。
チャンネルの空き状態を確認する手順について、以下に一例を挙げます。
- 使用予定のチャンネルに合わせる
- 送信ボタンを押す
- 「チャンネルチェック、チャンネルチェック。どなたかこのチャンネルを使用していますでしょうか?」のような文言を3~4回呼びかける
応答がなければそのチャンネルは空いているため、「こちら、○○。何時何分までこのチャンネルを使用します」と、自分たちが使用することを宣伝しましょう。
応答がある場合は、チャンネルが使用されている状態のため、謝罪した上で他のチャンネルを探し、上記手順を繰り返します。
また、無線終了時には「こちら、○○。このチャンネルはこれを持って、オープンとなります。各局、ありがとうございました」と終わった旨を放送しましょう。
無線の話し方
無線は1対複数人の会話となるため、用件を伝えただけでは誰が誰に情報発信したか分かりません。したがって、「こちらA」というように発信者が「誰か」を伝え、「Bさん」というように「誰に」発信するのかを伝える必要があります。
また、無線は自分の話が終わったら相手の話を聞く交互通信となります。そのため、自分の話が終わったら、「どうぞ」と言って、話が終わって話す権利を渡す意思表示をしなければなりません。
無線の話し方は具体的には以下のとおりです。
Aさん:
(送信ボタンを押す)こちらAです。Bさん道路が混んでいますね。
どうぞ。(送信ボタン離す)
Bさん:
(送信ボタンを押す)こちらBです。確かに混んでいますね。
どうぞ。(送信ボタンを離す)
送信ボタンを押したままだと、話す権利を渡せていません。「どうぞ。」といった後は忘れずに送信ボタンを離しましょう。
無線がつながらない場合の対処法
無線がつながらない場合の対処法として次の3つを解説します。
- 混信している
- 電波が届いていない
- アクセサリーとの連携に問題がある
それぞれ詳しくみていきましょう。
混信している
特定小電力トランシーバーや簡易無線は、限られたチャンネルの中で通信を行うため、チャンネルが別の利用者に使用されて埋まってしまっていると混信が起こります。使用されている間はもちろん、そのチャンネルは使用できません。
そのため、空きのチャンネルを探すか、チャンネルが空くのを待つ必要があります。
電波が届いていない
「電波が届いていない」のも無線がつながらない理由の1つです。電波が届いていない原因としては主に以下の3つが挙げられます。
- 無線の通信距離範囲を超えている
- 無線を使用している環境
- 無線の電源が入っていない
無線の通信可能距離を超えている場合は当然、通信ができません。各種無線によって通信距離は異なるため、実際の通信距離がどれくらいかしっかりと把握して、距離に適した無線を選ぶ必要があります。
各種無線の通信距離の目安は以下のとおりです。
特定小電力トランシーバー | 簡易無線(免許局) | 簡易無線(登録局) | IP無線 | |
市街地での通信距離 | 約100~200m | 約500m~1km | 約500m~1km | 携帯の電波を受信できる範囲 |
見通しのよい場所での通信距離 | 約1~2km | 約5~10km | 約5~10km | 携帯の電波を受信できる範囲 |
フロア | 約1~4フロア | 約10~20フロア | 約10~20フロア | 携帯の電波を受信できる範囲 |
ただし、通信距離範囲内だからといって必ず通信できるとは限りません。使用環境によっては電波が遮断されてしまって電波が届かず、通信距離が縮まってしまうからです。壁や複数階間、高低層階間など、遮蔽物が多い場所だと、電波が届かないため、使用する際は使用環境も考慮しましょう。
また、液晶画面のない無線を使用している場合、そもそも無線の電源が入っておらず、電波が入っていないという事態も起こりやすいため、注意が必要です。
アクセサリーとの連携に問題がある
無線にイヤホンやマイクなどを接続している場合、アクセサリーとの連携に問題がある場合もあります。普通に使用している際は通信できるものの、アクセサリーを接続すると無線がつながらないという場合は、アクセサリーを接続し直してみましょう。
接続し直しても改善しない場合は、アクセサリーの不具合や故障の可能性があります。
また、Bluetooth対応イヤホンの場合はバッテリーで駆動するため、Bluetooth対応イヤホンの場合はバッテリーの有無についても忘れずに確認しておきましょう。
おすすめの無線10選
おすすめの無線として次の10つを紹介します。
- SRFD1
- SR740
- SR820U
- SRS210A
- MiT5000
- GDR4800
- TPZ-D563
- TCP-D261
- IC-4400
- IC-D70
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.SRFD1
「SRFD1」は八重洲無線が提供している特定小電力トランシーバーです。SRFD1の特長としては以下が挙げられます。
- 3者間の同時通話対応型
- 防塵・防水性能が最高クラスのIP68
- Bluetooth対応
同時通話対応型のため、同時通話できる無線を導入したいという方には非常におすすめの機種です。
2.SR740
「SR740」は八重洲無線が提供している登録局の簡易無線です。SR740の特長としては以下が挙げられます。
- Bluetooth対応
- 防塵・防水性能が最高クラスのIP68
- フルドットマトリクスディスプレイを採用した視認性の高い液晶表示部
3.SR820U
「SR820U」は八重洲無線が提供している免許局の簡易無線です。SR820Uの特長としては以下が挙げられます。
- Bluetooth対応
- 800mWの大音量・高音質
- 防塵・防水性能が最高クラスのIP68
- プロ仕様の信頼性・基本性能
4.SRS210A
「SRS210A」は八重洲無線が提供している特定小電力トランシーバーです。SRS210Aの特長としては以下が挙げられます。
- 高い基本性能を誇った小型・軽量の機種
- 単3乾電池1本で駆動可能
- 防塵・防水性能が最高クラスのIP68
中継器に対応している機種のため、交互通信(20ch)に加えて中継通話(27ch)が可能です。そのため、不感エリアの改善などに利用することができます。
5.MiT5000
「MiT5000」はモトローラが提供している免許局の簡易無線です。MiT5000の特長としては以下が挙げられます。
- 堅牢性が高いボディ(米国軍用規格「MIL-STD-810G」に準拠)
- モトローラ独自の信頼性テスト(ALT)に合格
- 高精細ディスプレイを搭載
6.CL268
「CL268」はモトローラが提供している特定小電力トランシーバーです。CL268の特長としては以下が挙げられます。
- 防塵・防水性能が最高クラスのIP68
- 人間工学に基づいた操作しやすいデザイン
- 超薄型のボディ(本体の厚みがカバー付きスマホと同等の17mm)
上記以外にもリチウムイオン電池セル内蔵、スーバーバッテリーセーブ機能による最大約40時間以上の長時間運用が可能です。
7.TPZ-D563
「TPZ-D563」はケンウッドが提供している登録局の簡易無線です。TPZ-D563の特長としては以下が挙げられます。
- 1台で2台持ちのように活用できる「セカンドPTT機能」搭載
- チャンネルの自動切り替えが行えるACS(オート・チャンネル・セレクト)機能搭載
- 抗菌・抗ウイルス加工
8.TCP-D261
「TPZ-D563」はケンウッドが提供している免許局の簡易無線です。TPZ-D563の特長としては以下が挙げられます。
- 1台で2台持ちのように活用できる「セカンドPTT機能」搭載
- 各エリアの設定チャンネルに切り替えられる「ゾーン設定」機能
- 抗菌・抗ウイルス加工
- 騒音下やマスク越しで聞き取りやすい「はっきり間取りモード」搭載
9.IC-4400
「IC-4400」はアイコムが提供している特定小電力トランシーバーです。IC-4400の特長としては以下が挙げられます。
- 「サブチャンネルPTT機能」搭載
- 応答できない場合、あらかじめ録音したメッセージを送信できる「即応お知らせボタン機能」
- 通話内容を確認できる「再確認録音再生機能」
- 騒音下になった場合、あらかじめ設定した音量レベルまでワンタッチで引き上げられる「一時音量切り替え機能」
IC-4400は中継装置「IC-RP4150W」に対応しています。そのため、IC-RP4150Wを使用すれば、通信距離を約2倍に延ばせる他、LAN接続すれば、多層階ビルや大型施設などでも安定した通信が可能です。
また、IC-RP4150WはLTE接続にも対応しているため、回線を契約すれば遠距離通信も行えます。
10.IC-D70
「IC-D70」はアイコムが提供している登録局の簡易無線です。IC-D70の特長としては以下が挙げられます。
- 最大3チャンネルをカバーできる「サブチャンネルPTT機能」
- 録音機能やワンタッチ再生機能など、聞き漏らし防止の各種機能が充実
- 位置情報の送受信が可能
- 緊急呼び出し機能など、各種緊急機能も充実
「IC-D70」シリーズは「IC-D70」「IC-D70BT」「IC-D70LITE」の3種類があり、GPS機能はIC-D70とIC-D70BT、Bluetooth機能はIC-D70BTのみ対応しています。
まとめ
無線は交互通信となるため、無線は送信と受信を切り替えて通信を行う必要があります。また、1対複数人が基本であるため、用件を伝えただけでは、誰が誰に情報を発信したか分かりません。
したがって、誰が誰に向けて用件を伝えるのか発信し、話が終わって話す権利を相手に渡す意思表示するために「どうぞ。」と伝えることが、無線での話し方となります。同時通話で1対1が基本である携帯電話とは大きく異なるため、無線に慣れていない方は無線の話し方をはじめ、使用方法をしっかり理解してから使用するようにしましょう。