同時通話無線とは?一般的な無線の違いやおすすめの商品について解説
同じ周波数で送受信を行っている一般的な無線の場合、相手が発言している間は誰も発言できません。携帯電話のような同時通話が行えないため、無線の扱いに慣れていない方は使用しづらいというデメリットもあります。
携帯電話と同じような感覚で通話し、双方向コミュニケーションを取りたいという場合におすすめなのが「同時通話無線」です。
今回は同時通話無線の概要や一般的な無線との違い、おすすめの同時通話無線について解説します。
無線とは?
「無線」とは、「無線通信」の略で、電波を使用して行う電気通信のことです。無線について、ここでは次の2項目に分けて解説します。
- 無線の仕組み
- 携帯電話との違い
それぞれ詳しくみていきましょう。
無線の仕組み
無線の通信方式は、無線本体に備わっている受信機・送信機を使用して直接音声の送受信を行います。したがって、携帯電話のように基地局の中継を介しません。
無線の使用方法は機種によって異なるものの、一般的にはチャンネルを合わせ、話す時は送信ボタンを押しながら話すというシンプルなものです。無線は電源をオンにしてチャンネルを合わせると電波を受信して相手の音声が聞こえる状態となっています。
ただし、この状態では受信しか行えないため、自分の声を発信する際は送信ボタンを押して送信状態にしなければなりません。送信ボタンを押している間は送信状態に切り替えられるため、自分の音声を発信し続けることができます。
この送信ボタンを押して送信機と受信機を切り替えて話す通信方式は「PTT(プッシュツートーク)」と呼ばれています。
携帯電話との違い
無線と携帯電話では様々な違いがあります。代表的な違いとしてここでは、以下4つについてみていきましょう。
- 通信範囲
- 1度の操作で複数人に情報伝達できるか否か
- 持ち運びのしやすさ
- 操作のしやすさ
1つ目の違いは「通信範囲」です。使用する無線の種類によって通信距離は異なるものの、無線の場合は無線の電波が届く範囲でなければ通信は行えません。
一方、携帯電話の場合、携帯の電波が届くエリアであれば日本全国通信が可能です。
2つ目の違いは「1度の操作で複数人に情報伝達できるか否か」です。携帯電話は1対1の通話が基本であるため、音声通信だと1度の通信で複数人に情報を伝達できません。
一方、無線の場合は、同じチャンネルに合わせて、通信可能な範囲にいれば、1度の通信で複数人に情報伝達できます。
3つ目の違いは「持ち運びのしやすさ」です。無線はスマートフォンと比較すると数倍の重さと厚みがあります。また、充電器などのオプションはかさばるため、持ち運びに適していません。
一方、携帯電話はポケットに入れて持ち運びできる他、モバイルバッテリーなどの各種機器もそれほどかさばらないため、無線と比較すると圧倒的に持ち運びしやすいです。
4つ目の違いは「操作のしやすさ」です。携帯電話は電話帳などから発信相手を探した後、送信ボタンを押さなければなりません。
無線の場合は送信ボタンを押すだけで通話可能なため、携帯電話よりも手間をかけずに通信が行えます。
無線の代表的な種類
無線の種類として次の4つが挙げられます。
- 特定小電力トランシーバー
- IP無線
- 簡易無線
- アマチュア無線
それぞれ詳しくみていきましょう。
特定小電力トランシーバー
「特定小電力トランシーバー」とは、「特小」とも呼ばれる、送信出力が0.01W以下の無線です。特定小電力トランシーバーには以下のような特長があります。
- 免許が不要
- 電波利用料がかからない
- 消費電力が少なく、バッテリー稼働時間が長い
また、総務省が公開している電波利用ホームページの「免許及び登録を要しない無線」では以下のように定められています。
3 小電力の特定の用途に使用する無線局
コードレス電話、小電力セキュリティシステム、小電力データ通信システム、デジタルコードレス電話、PHSの陸上移動局、狭域通信システム(DSRC)の陸上移動局、ワイヤレスカードシステム、特定小電力無線局等の特定の用途及び目的の無線局であり、次の条件をすべて満たすもの。
- 空中線電力が1W以下であること。
- 総務省令で定める電波の型式、周波数を使用すること。
- 呼出符号または呼出信号を自動的に送信しまたは受信する機能や混信防止機能を持ち、他の無線局の運用に妨害を与えないものであること。
- 技術基準適合証明を受けた無線設備だけを使用するものであること。
送信出力が小さい分、他の無線と比較すると通信できる距離は非常に短いですが、小規模な飲食店やイベントなど、見通しがよく、相手が見える範囲の距離で通信を行うのであれば、特定小電力トランシーバーで十分対応できるでしょう。
IP無線
「IP無線」とは、携帯電話のインターネット回線を使用して通信を行う無線です。IP無線は特定小電力トランシーバーと同じく導入が簡単で飲食店やイベント会場、工事現場などで幅広く活用されており、以下の特徴があります。
1.全国エリアで通信が可能
IP無線は音声をパケットデータ化し携帯電話のインターネット回線で通信を行うため、携帯電話と同様に全国エリアで通信が可能です。
2.GPS位置情報や画像データ、測定値などのデジタルデータを送受信できる
IP無線はGPS機能に対応している機種であれば、GPS位置情報を取得し送受信することができます。またインターネット回線を利用した画像や測定データなど、音声通信以外にもさまざまな通信を行うことが可能です。
3.免許不要で導入しやすい
IP無線は携帯の電波が届く(インターネット回線が利用できる)場所であればどこでも通信可能です。また特定小電力トランシーバーと同様、免許の取得が不要で回線を契約すれば使用することができます。
簡易無線
「簡易無線」とは、無線従事者資格が不要で、簡易的な業務などでの使用を目的とした無線です。簡易無線は以下2種類に分類されます。
- 登録局
- 免許局
「登録局」は2008年に制度化された比較的新しい無線です。レジャー利用や業務利用など、幅広い用途で使用できる他、レンタルも行えます。
使用する際は、事前に登録手続きが必要で、登録を行うと有効期限5年の登録状が発行されます。複数台使用する場合は包括登録によって、一括で登録することも可能です。ただし、「個別登録」と「包括登録」では、申請方法などが異なるため、詳細は総務省の「無線局の登録手続き」を確認してください。
「免許局」は業務目的のみに使用できる無線です。使用する際は無線1台ごとに免許を取得する必要があり、免許を取得すると有効期限5年の免許状が発行されます。
免許局の場合は免許を取得した団体に所属している従業員のみが使用できるため、他の団体や個人にレンタルすることはできません。レンタルをして使用すると違法となってしまうため、注意しましょう。
参考:総務省-簡易無線
アマチュア無線
「アマチュア無線」とは、無線技術への興味や趣味、研究を目的に使用する無線です。総務省の電波利用ホームページでは以下のように記載されています。
アマチュア無線は、電波法令により「金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的な無線技術の興味によって行う」ものとされており、世界中の人との交信や無線機の工作といった無線技術への興味による趣味として知られています。
また、今日では、非常災害時等のボランティア活動などの社会貢献活動にも活用されています。
アマチュア無線は上記目的のみに使用できる無線であり、仕事に使用することはできません。アマチュア無線を仕事で使用した場合、無線従事者免許や無線局免許を所持していても、電波法違反となり懲罰の対象となるため、注意しましょう。
同時通話無線とは?
同時通話無線とは、携帯電話のように双方が同時に送受信を行える無線のことです。同時通話無線は、お互いが異なる周波数を使用して会話する「クロスバンド方式」を用いています。
クロスバンド方式では会話の際、自動でチャンネルが切り替わるようになっているため、携帯電話と同じ感覚で無線通信を行うことが可能となりました。
同時通話可能な無線の種類
無線の代表的な種類についてご紹介しましたが、同時通話可能な無線には以下の2つが上げられます。
- 特定小電力トランシーバー
- IP無線
特定小電力トランシーバー、IP無線ともに特徴やメリット・デメリットに違いがありますので、それぞれの特徴に関する詳細は以下の記事もご参照ください。
特定小電力トランシーバーのメリット・デメリット、使用上の注意点を紹介!
IP無線とは?他の無線機との違いやメリット・デメリットも解説
一般的な無線との違い
一般的な無線との大きな違いは「通話方式」です。
一般的な無線は同じ周波数を用いて会話を行うため、送信と受信を切り替える「PTT(プッシュツートーク)」が基本です。したがって、相手が話し終わらないと、こちらが話すことはできません。
一方、同時通話無線の場合は「クロスバンド方式」を用いているため、お互いが話しながら通信できます。
グループ通話との違い
無線における「グループ通話」とは、チャンネルごとに割り当てられた人に対して「1対複数」の送信が可能な通話機能のことです。
対する「同時通話」はお互いが話しながら通信できる機能となります。したがって、両者は全く異なるものです。
同時通話無線のメリット
同時通話無線のメリットとして次の2つが挙げられます。
- 送信ボタンを押し続ける手間がない
- 携帯電話と同じ感覚で連絡が取れる
送信と受信を切り替える必要がある一般的な無線の場合、会話するためには送信ボタンを押し続ける必要があります。一方、同時通話無線は送信ボタンを押し続ける手間がないため、手が塞がる心配がありません。
同時通話無線は携帯電話と同じ感覚で会話できるため、無線に慣れていない人でも使用しやすいといったメリットもあります。
同時通話無線のデメリット
同時通話を行うことによって発生するデメリットは、送信と受信を切り替える「PTT(プッシュツートーク)の運用に慣れている方が使用する際に容易に割り込み通話ができてしますことがあります。例として、責任者が大事な要件を全体に発しているときに遮って話をすることが出来ることがあげられます。また、特定小電力トランシーバーの場合は一般的な無線と比較して通信距離が短くなります。単身通話無線と同じ感覚で使用してしまうと、通信ができないという事態になるため、注意しましょう。
無線・同時通話無線を選ぶ際のポイント
無線・同時通話無線を選ぶ際のポイントとして次の4つが挙げられます。
- 耐久性能
- 機能・サイズ
- 稼働時間
- 通信距離
それぞれ詳しくみていきましょう。
通信距離
無線の種類によって、通信できる距離は異なります。同じ無線であっても、見通しの良い場所や市街地など、通信環境によって通信距離は変動してしまうため、無線を選ぶ際は、通信距離や通信環境を考慮することが大切です。
また、特定小電力トランシーバーで同時通話を行う場合は単身通話の無線と比較して通信距離が短くなります。その他の無線と同じような感覚で使用すると通信できないという事態になりかねないため、同時通話を行う際は通信距離が縮まることを考慮しておかなければなりません。
耐久性能
屋外で使用する場合、耐久性能も意識しておかなければなりません。スキーやキャンプ、マリンスポーツ、雨天時の屋外イベントなどで使用する場合は防水性を重視した方がよいでしょう。
一方、建設現場など、粉塵などが多い場合は防水性だけでなく、防塵性も重視しなければなりません。無線の防塵・防水性能を知りたい場合は「IP(International Protection)」を確認しましょう。
IPとは無線などの電気製品で使用される防塵・防水性能規格を表すコードです。IPに続く、第1数字が防塵等級、第2数字が防水という等級となり、防塵等級は最大6、防水等級は最大8で、数字が大きいほど耐久力が高いことを意味します。
例えば、八重洲無線の同時通話無線「SRFD1」の防塵・防水性能はIP68であるため、最も高い耐久力を誇っていると判断できます。
機能・サイズ
機能・サイズも選ぶ際には欠かせないポイントです。無線の機種によって、同時通話可能有無やBluetooth対応有無、ハンズフリー対応有無など、機能は様々です。
したがって、購入前に利用用途に合った機能が備わっているかどうか確認する必要があります。
近年はスマートな形状の無線も増えてきています。医療や介護など、女性が多い職場や長時間無線を持つ必要があるシーンでの利用が考えられる場合は、サイズ感も意識しましょう。
稼働時間
必要な電池の本数および稼働時間も無線の機種によって異なります。バッテリー稼働時間が短い無線を長時間使用する場合、すぐに充電が切れてしまい、業務中に充電して使用できなかったり、電池を買いに行ったりする事態になりかねません。
無線を購入する際は、無線の稼働時間を考慮するとともに、1台あたりに必要な電池の本数を把握しておく必要があります。
おすすめの同時通話無線
おすすめの同時通話無線として次の2つが挙げられます。
- SRFD1
- DJ-P300
- IP-502H
- SRNX1
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.SRFD1
「SRFD1」は八重洲無線が提供している同時通話が可能な特定小電力トランシーバーです。SRFD1の特長として以下が挙げられます。
- 3者間の同時通話対応
- Bluetooth対応
- IP68クラスの防塵・防水機能
商品:SRFD1 八重洲無線
2.DJ-P300
「DJ-P300」はALINCO(アルインコ)が提供している同時通話が可能な特定小電力トランシーバーです。DJ-P300の特長として以下が挙げられます。
- 3者間の同時通話対応
- IP67相当の防塵・防水機能
3.IP-502H
「IP-502H」はアイコムが提供している同時通話が可能なIP無線です。IP-502Hの特長として以下が挙げられます。
- デュアルSIM対応
- 同時通話・多重通話対応
- IP67相当の防塵・防水機能
商品:IP-502H アイコム
4.SRNX1
「SRNX1」は八重洲無線が提供している同時通話が可能なIP無線です。SRNX1の特長として以下が挙げられます。
- 通信履歴から簡単に宛先を選択できる「フリップ・フロップ機能」搭載
- 同時通話対応
- IP67相当の防塵・防水機能
商品:SRNX1 八重洲無線
まとめ
お互いが異なる周波数を使用して会話する「クロスバンド方式」を使用している同時通話無線であれば、一般的な無線では行えない双方向での同時通話が可能です。
送信・受信の切り替えおよび相手の発言が終了するまで待つ必要がなく、携帯電話と同じ感覚で使用できるため、無線に慣れていない方でも使用しやすいといったメリットがあります。
一方、一般的な無線よりも通信距離が短い、機種が少ないといったデメリットもあるため、同時通話無線で問題ないかどうか慎重に検討したうえで選ぶことが大切です。