Wi-Fiインカムとは?インカムの種類と活用シーンについて解説
「インカム」はイヤホンマイクやヘッドセットを装着して通信する無線機器です。複数人と素早く通信できる手段として、様々なシーンで活用されています。
様々な無線がインカムとして使用されていますが、インカムの需要増加に伴い、近年注目されているのが「Wi-Fi対応インカム」です。
今回はWi-Fi対応インカムの概要やインカムの種類、各インカムの適した活用シーンなどを解説します。
インカムとは?
「インカム」とはイヤホンマイクやヘッドセットを装着して通信する無線機器の1つです。正式名称は「インターコミュニケーションシステム」といい、「インターカム」とも呼ばれています。
インカムは元々、施設内・敷地内といった限られた範囲で通信することを目的に、内線電話と同じ仕組みを用いて開発されました。しかし、時間の経過とともに無線通信が可能となり、現在では建設現場やイベント会場など、様々なシーンで活用されています。
インカムに使用されている無線の種類
インカムに使用されている無線の種類として、次の3つが挙げられます。
- 特定小電力トランシーバー
- 簡易無線
- IP無線
それぞれ詳しくみていきましょう。
特定小電力トランシーバー
「特定小電力トランシーバー」とは、「特小」とも呼ばれ、送信出力が0.01W以下の無線のことです。免許が不要なため、購入してすぐに使用できるメリットがあります。
総務省では特定小電力トランシーバーの条件を以下のように記載しています。
3.小電力の特定の用途に使用する無線局
コードレス電話、小電力セキュリティシステム、小電力データ通信システム、デジタルコードレス電話、PHSの陸上移動局、狭域通信システム(DSRC)の陸上移動局、ワイヤレスカードシステム、特定小電力無線局等の特定の用途及び目的の無線局であり、次の条件をすべて満たすもの。
- 空中線電力が1W以下であること。
- 総務省令で定める電波の型式、周波数を使用すること。
- 呼出符号または呼出信号を自動的に送信しまたは受信する機能や混信防止機能を持ち、他の無線局の運用に妨害を与えないものであること。
- 技術基準適合証明を受けた無線設備だけを使用するものであること。
簡易無線
総務省の公式ホームページによると、簡易無線は以下のように定義されています。
簡易無線局とは、無線従事者資格が不要で、簡易(人命や財産に影響する通信は除く。)な業務又は個人的用務を目的とした無線局です。
引用:総務省-簡易無線
簡易無線は大きく分けて以下2種類に分類されます。
- 免許局
- 登録局
それぞれ詳しくみていきましょう。
免許局
「免許局」とは、法人などの団体が業務に使用することを目的にした無線です。登録局と違って、個人目的での使用はできません。
免許局は無線1台ごとに免許が必要で、免許を取得すると有効期限5年間の免許状が発給されます。免許局は免許を取得した団体に所属している方のみが使用できます。
他の団体や個人にレンタルして使用することは違法となるため、注意しましょう。免許局の対象となる簡易無線は以下のとおりです。
150MHz帯アナログ方式の簡易無線 | 54.45MHz~154.61MHz、計 9波、最大5W |
150MHz帯デジタル方式の簡易無線 | 154.44375MHz~154.55625MHz、計 19波、最大5W154.56250MHz~154.61250MHz、計 9波、最大5W データ用 |
小エリア無線通信システムの簡易無線局 | 348.5625MHz~348.7750MHz、計18波、最大1W348.7875MHz、348.8000MHz、データ通信専用2波、最大1W |
400MHz帯アナログ方式の簡易無線局 | 465.0375MHz~465.1500MHz、468.5500MHz~468.8500MHz、計35波、最大5W |
400MHz帯デジタル方式の簡易無線局 | 467.0000MHzから467.4000MHz、65波、最大5W |
50GHz帯簡易無線局 | 50.44GHz~50.62GHz、50.94GHz~51.12GHz、計38波、最大0.03W |
引用:総務省-簡易無線
「小エリア無線通信システムの簡易無線局」と「400MHz帯アナログ方式の簡易無線局」の周波数の使用期限は令和6年11月30日までとなっています。
登録局
「登録局」とは、法人などの団体が業務使用することはもちろん、個人がレジャー目的で使用できる無線です。免許局と違い、登録していれば、レンタルすることもできます。
登録局の対象となる簡易無線は以下のとおりです。
350MHz帯デジタル方式の簡易無線(登録局) | 351.16875MHz~351.19375MHz、計 5波、最大1W:開設区域「全国の陸上及び日本周辺海域並びにそれらの上空」351.20000MHz~351.38125MHz、計30波、最大5W:開設区域「全国の陸上及び日本周辺海域」 |
引用:総務省-簡易無線
登録すれば、有効期限5年間の登録状が発給される他、複数台使用する際は包括登録申請が行えます。ただし、包括登録申請を行う場合は登録手続き後、運用開始日から15日以内に開設届を提出しなければなりません。
申請方法の詳細については、総務省の登録局ページをご確認ください。
IP無線
「IP無線」は携帯電話のインターネット回線を使用して音声データをパケットデータ化し送受信を行う無線です。回線を契約すれば免許不要で使用できる手軽さと、携帯電話のインターネット回線が通じている場所であれば日本全国に対応している通信範囲の広さが特徴です。
IP無線はインターネット回線を使用する特性上、携帯の電波が届かない場所では使用ができず、回線が混雑した場合は通信しにくくなることがあります。
またIP無線には、携帯電話のインターネット回線とWi-Fiのデータ回線を切り替え、環境に応じてより安定した通信を行いやすくなるWi-Fi対応機種もあります。
インカムマイクの種類
インカムマイクの種類として次の3つが挙げられます。
- Bluetoothイヤホンマイク
- ピンマイク
- ヘッドセット
それぞれ詳しくみていきましょう。
Bluetoothイヤホンマイク
「Bluetoothイヤホンマイク」とは、Bluetoothで接続されている場合に使用できるワイヤレスイヤホンマイクのことです。無線を介して音声やりとりできるため、有線と違って、コードが引っかかったり、絡まったりしないといったメリットがあります。
一方、充電がないと使用できないため、使用する際は充電残量やバッテリー稼働時間に気を配らなければなりません。また、無線がBluetoothに対応していないと使用できないため、使用している無線がBluetooth対応かどうかも購入前に確認しておくとよいでしょう。
ピンマイク
「ピンマイク」とは、「タイピン型マイク」とも呼ばれるインカムマイクで、マイク部分についているピンを襟元に装着して使用します。ピンマイクは耳掛け式のイヤホンがセットになっている一体型のほか、イヤホンジャックが取り外しできるタイプもあります。
ピンマイクを使用する場合は 無線 ⇄ ピンマイク ⇄ イヤホン のような形で、無線にピンマイクのコード差し込んで接続し、さらにピンマイクのイヤホンジャックにイヤホンコードを差し込んで接続します。ピンマイクで集音した音声を無線で送信し、受信した音声をイヤホンで聞くことで通信を行います。
ヘッドセット
「ヘッドセット」とは、頭から耳にかけて固定されているものが一般的なため、激しい動きをしても外れにくいです。
また、ピンマイクから片側から伸び、口元に近づいているため、声を拾いやすく、外部に漏れにくいといったメリットがあります。
Wi-Fi対応インカムとは?
Wi-Fi対応インカムは、無線LANの拡張により超広域通信や拠点間通信が行えるインカムで、インカムに使用される無線のうち、Wi-Fi対応のIP無線とインカムマイクを接続した状態を指します。
Wi-Fi対応インカムはIPネットワーク上にアクセスポイントを増設すれば、手軽に通信できるため、高層ビルの低高層階間など、従来の無線では電波が届きにくい場所での通信に適しています。
Wi-Fi対応インカムを使用するメリット
Wi-Fi対応インカムは、IP無線のメリットを活かしつつ携帯電話回線とWi-Fiを切り替えることによって通信の安定性が高めることができます。
IP無線の特徴を含めたメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 通信範囲が広く、日本全国で通信できる
- 遮蔽物の影響を受けにくい
- 携帯電話回線の特徴を生かしたデータ通信が可能
1.通信範囲が広く、日本全国で通信できる
IP無線で最も特徴的なメリットとしては、携帯電話の通じる場所であれば日本全国で通信できる通信範囲の広さが挙げられます。Wi-Fi対応インカムであれば携帯電話回線とWi-Fiを切り替えることができるため、Wi-Fi未対応のIP無線よりもさらに安定して通信を行うことができます。
2.遮蔽物の影響を受けにくい
特定小電力トランシーバーや簡易無線は電波が届く場所であれば問題なく使用できるものの、電波はドアや窓などの遮蔽物の影響を受けやすいため、安定して電波を送受信できる環境が必要です。
一方でWi-Fi対応インカムは携帯電話回線やWi-Fi回線を使用することで遮蔽物による影響を受けにくく、回線の通信エリアであれば遮蔽物の有無に関係なく通信できます。
3.携帯電話回線やWi-Fiの特徴を生かしたデータ通信が可能
IP無線においてもう一つ特徴的な点としては、携帯電話回線やWi-Fiを使用した画像や測定値などのデータ通信が可能です。他の無線は電波が届く範囲であれば高い通信強度で音声通信を行える代わりに、IP無線ではGPSに対応している機種であれば、位置情報なども送ることができます。
Wi-Fi対応インカムを選ぶ際のポイント
Wi-Fi対応インカムを選ぶ際のポイントは以下の3つです。
- 通信範囲内のWi-Fiの回線速度に問題がないか
- 機種は利用シーンに適した仕様か
- コストは想定内に収まっているか
それぞれ詳しくみていきましょう。
通信範囲内のWi-Fiの回線速度に問題がないか
Wi-Fi対応インカムに使用されるIP無線は、Wi-Fiと携帯電話のインターネット回線を使用できるため、地上階や通信環境の整っているビルでは問題なく使用できます。一方で地下や長いトンネル内などは、Wi-Fiや携帯電話の通信エリア外になってしまう場合があるため、Wi-Fi対応インカムのメリットを活かすためには通信範囲内のWi-Fi環境に問題がないかを確認しておく必要があります。
機種は利用シーンに適した仕様か
利用シーンによって使用する機種を選ぶことも大切です。例えば、粉塵や雨風の心配がある屋外で使用する場合は、防水・防塵が施され、耐久性の高い機種を選ぶことをおすすめします。
一方、ホテルなどのように女性の使用頻度が高い場合は、軽量で持ち手の負担が少ない機種を選んだ方がよいでしょう。
コストは想定内に収まっているか
Wi-Fi対応インカムとして使用されるIP無線は携帯電話の回線契約が必要となるため、継続して運用する場合は通信料といった運用コストがかかります。
購入費用や運用費用など、全体でどれくらいコストがかかるのかを把握しておくことも大切です。
Wi-Fi対応インカムに適した活用シーン
Wi-Fi対応インカムに適した利用シーンについて、無線ごとにインカムとして使用する際に適した活用シーンを紹介します。
- 特定小電力トランシーバーに適したシーン
- 簡易無線に適したシーン
- Wi-Fi対応インカム(IP無線)に適したシーン
特定小電力トランシーバーに適したシーン
特定小電力トランシーバーは、送信出力が弱いため、フロアが多く区切られた空間など、お互いの姿が見えないような環境での使用は不向きです。
そのため、小規模な飲食店や小売店のフロア内や、お互いがはっきりと見える範囲で交通整理を行うような場合に適しています。
簡易無線に適したシーン
送信出力が0.01W以下の特定小電力トランシーバーに対し、簡易無線の送信出力はその500倍にあたる5Wです。そのため、イベント運営や敷地面積が広い小売店、工事現場、倉庫などでの使用に適しています。
また、ホテルや結婚式場スタッフの連絡や、ビル・大型商業施設の警備など、階を跨いだ通信が必要な場合にも最適です。
Wi-Fi対応インカム(IP無線)に適したシーン
IP無線は携帯電話の通信エリア内で使用できる特長上、マラソン大会などのスポーツイベントや運送業、インフラ業者など、広範囲での通信が必要な場合に適しています。
また、Wi-Fi対応機種の場合はWi-Fi環境さえ構築していれば広い範囲であっても通信できるため、簡易無線では通信ができない低高層階間はもちろん、複数拠点間で通信する必要がある場合に最適です。
Wi-Fi対応インカムなら「SRNX1/八重洲無線」
「SRNX1」は八重洲無線が販売しているIP無線です。NTTドコモのLTE回線を使用している他、Wi-Fiにも対応しているため、状況に応じて回線を切り替えながら、広い通信範囲をカバーし安定した通信を行えます。
その他の特長としては以下が挙げられます。
- Bluetooth対応
- テキストメッセージの送受信が可能
- GPS内蔵
- 受信音声の録音機能も搭載
商品:SRNX1 八重洲無線
まとめ
Wi-Fi対応インカムであれば、超広域通信や拠点間通信はもちろん、簡易無線でも通信できない高層ビルの低高層階間でも安定した通信が行えます。一方、Wi-Fi環境がないと使用できないため、Wi-Fi環境を構築しにくい屋外では、簡易無線やIP無線を使用した方がよいでしょう。
通信距離はもちろん、使用環境なども考慮しながら、適した無線を選ぶことが大切です。