特定小電力トランシーバーとは?使用場面や選ぶときのポイントについて解説
特定小電力トランシーバーは、免許・資格が不要で使用できる無線です。特別に定められた周波数帯で、他の機器に影響を与えないように少ない電力の出力をすることにより、免許・資格が不要となり、多方面で使用されています。
ただ、特定小電力トランシーバーと聞いても、よく分からないと感じる方も多いでしょう。今回は、特定小電力トランシーバーと無線・インカムとの違いや使用場面、選ぶときのポイントについて解説します。
特定小電力トランシーバーとは?
特定小電力トランシーバーとは、特に定められた周波数帯で、他の機器に影響を与えないような小さな出力の無線機です。特小と略されることもあります。
出力が小さく、通信できる距離が短いものの、免許・資格が不要であることや低価格で販売されているなど、使用するメリットが多い無線でもあります。
ここからは、特定小電力トランシーバーでよく間違われやすい「無線・インカムとの違い」や免許・資格が関係してくる「アマチュア用と業務用との違い」についてみていきましょう。
無線・インカムとの違い
結論からいうと、トランシーバーと無線・インカムに大きな違いはありません。
無線と呼んでしまうと幅広くどれを指しているのか分からなくなるため、それぞれの機種で分かりやすく呼びやすい名称にするため、無線・インカム、トランシーバーと呼ばれるようになりました。
アマチュア用と業務用との違い
アマチュア用と業務用との違いは何でしょうか。
- アマチュア用:趣味や無線技術の向上の目的で使用する無線
- 業務用:業務上の連絡手段として使用する無線
アマチュア用と業務用では、使用目的に大きな違いがあります。アマチュア無線は、個人個人が金銭等の利益を得るためではなく、無線技術の向上や研究に対する興味によって行うものです。
一方、業務用の無線は明確な定義はなく、仕事をする上での情報伝達のための無線であったり、アマチュア無線と放送用無線を除くすべてのものを含めたりと、捉え方に違いがあります。
特定小電力トランシーバーのおすすめの使用シーン8選
特定小電力トランシーバーのおすすめの使用シーンは以下の8つです。
- 工事現場
- 医療・福祉
- マリンスポーツやレジャースポーツで
- 展示会・セミナー
- 工場内
- サービス業
- 学校のイベント
- 警備
1つずつ順番に見ていきましょう。
1.工事現場
工事現場では、クレーンなどの重機を使用した作業や高所・交通の多い現場など危険が伴うため、全員が十分に連携を取る必要があります。そのような場合に特定小電力トランシーバーを導入すると、全員に現場の状況をいち早く伝え、安全に工事を進めることができます。
一般的な無線の場合、相手が送信権を持っている場合は連絡が行えません。そのため、工事現場で急なトラブルや連絡事項が発生した場合、迅速に報告できない場合があります。このような事態を解消したい場合は、同時通話が可能な特定小電力トランシーバーを導入するとよいでしょう。
同時通話型トランシーバーは携帯電話のような二者間同時通話だけでなく、グループ作業でも連携が取りやすい3人以上の同時通話が可能な機種があります。また一度ペアリングを行えば、次回からは電源を入れ直しても自動で空きチャンネルを見つけてすぐに通話を行うことができ、工事現場などの迅速かつ定期的な連絡・情報共有が必要な場面で活躍します。
機種を選ぶ際にはボタンが大きくシンプルなデザインの機種にすることで、無線に慣れていない方でも使用しやすいといったメリットもあります。
ただし、特定小電力トランシーバーは出力が低いため、工事現場の広さによっては通信しにくい可能性があります。通信の安定性も重視するのであれば、デジタル簡易無線やIP無線を選択すると良いでしょう。
2.医療・福祉
迅速なやり取りができる無線は緊急対応が頻繁にある医療・福祉でも重宝します。ただし、電波出力が高い機種になると、医療機器に影響を与えかねません。
特定小電力トランシーバーであれば、電波出力の低い無線のため、医療機器に影響を与えることなく、迅速な情報共有が行えます。
3.マリンスポーツやレジャースポーツ
特定小電力トランシーバーは、マリンスポーツやレジャースポーツ時の使用もおすすめです。ただ、マリンスポーツやレジャースポーツでは、水に濡れたり砂にまみれたりなどが当たり前に起こります。
故障の原因となるため、これらのシーンで活用するのであれば、防塵・防水機能が付いている特定小電力トランシーバーがおすすめです。
また、製品によっては、ボタンが小さかったり、機能が多かったりなど、使いやすさに欠ける場合があります。そのため、できるだけ使いやすくシンプルな操作方法を備えている特定小電力トランシーバーを選びましょう。
ただし、機械類一般に言えることですが、塩水・塩風による塩害は電子機器の大敵です。
4.展示会・セミナー
展示会・セミナーでは人の出入りが多く、会場整理や誘導の際にスムーズな連携が必要です。このようなシーンでは、同時通話による複数人での連携が取れる特定小電力小型トランシーバーが活躍します。
単発イベントなどで会場スタッフを大量動員する場合、シンプルなデザインかつ必要最小限の機能を持つ無線であれば、初めて無線を扱うスタッフでもスムーズに連携が取れるでしょう。
ただし、会場の広さによっては特定小電力トランシーバーの通信範囲では足りない場合があるため、事前に必要な通信距離を調べておく必要があります。
5.工場内
特定小電力トランシーバーは、工場内での使用もおすすめです。1人作業の多い工場と言っても、コミュニケーションを取る場面が必ずあります。広い工場であれば、コミュニケーションを取るために、かなりの時間を使わなくてはいけません。
そういった時、すぐに連絡を取り合える特定小電力トランシーバーは、便利です。トラブルをすぐに防げたり、生産性を高められたりなどの効果が期待できます。
6.サービス業
特定小電力トランシーバーは、飲食店や小売店といったサービス業での使用もおすすめです。飲食店や小売店では、スタッフ同士の連携やトラブル、イレギュラー対応において、迅速に情報共有しなければなりません。
特定小電力トランシーバーを導入すれば、顧客満足度の向上やトラブルの回避など様々な効果が期待できます。
7.学校のイベント
入学式や修学旅行、体育祭、文化祭など学校は1年を通して、様々なイベントが行われます。しかし、これらのイベントでは、トラブルが発生したり、急に体調を崩したりするなどの非常事態が起きやすいです。
特定小電力トランシーバーを導入しておけば、手軽に情報共有できるため、対処できます。
8.警備
屋外の駐車場や道路の警備を行う場合も特定小電力トランシーバーは活用できます。お互いが見える位置にいる範囲で駐車場や道路の整備を行う場合、電波が届きやすいため、コミュニケーションが取りやすいです。
野球やサッカー場でも使用可能ですが、場所によっては電波が届かない可能性があります。また、警備業務でも複数階を跨ぐビル警備や、広い範囲での警備である場合は特定小電力トランシーバーでは通信できないため、業務用無線のような送信出力の高い無線を選んだ方がよいでしょう。
特定小電力トランシーバーを選ぶときの4つのポイント
特定小電力トランシーバーを選ぶときに押さえておきたいポイントは以下の5つです。
- 通信距離を確認する
- 電池式か充電式か場面に合わせて判断する
- 技術基準適合証明を受けているかどうか
- チャンネルの交互性をチェックする
1つずつ確認していきましょう。
1.通信距離を確認する
使用する環境によって異なるものの、特定小電力トランシーバーの通信距離は最大でも500mから1Kmです。市街地など遮蔽物が多い場合は100m程度で通信できなくなる可能性があります。
通信ができなくなる事態を避けるためにも、特定小電力トランシーバーを使用する際は、通信距離がおおよそどれくらいかしっかりと確認することが大切です。
2.電池式か充電式か場面に合わせて判断する
特定小電力トランシーバーは、「電池式」か「充電式」の2種類が採用されています。
電池式は本体のみでは使用できず別途電池が必要となりますが、電池の準備さえあれば緊急時でもすぐに使用することが可能です。また、電池残量が最大の場合、連続使用時間は充電式よりも電池式の方が長くなります。
一方、充電式は使用前に一定時間充電しておく必要がありますが、電池なしで繰り返し使用できるため、コストパフォーマンスに優れています。充電式は電池式よりも連続使用時間が短いため、定期的に充電を行える環境が必要です。
特定小電力トランシーバーを選ぶ際は、これらを考慮し場面に合ったものを選ぶとよいでしょう。
3.技術基準適合証明を受けているかどうか
「技術基準適合証明」とは、総務大臣の登録を受けた登録証明機関などが、特定無線設備について電波法に即した技術基準に適合しているかの判定を無線設備1台ごとに行う制度です。
登録証明機関は無線設備1台1台試験・審査を行い証明を行います。技術基準適合証明を受けた無線設備には、登録証明機関の技適マークが付けられます。
技適マークがない場合は適合証明を受けていないため、電波法違反となります。したがって、特定小電力トランシーバーを選ぶ際は、技適マークつがついているかどうか確認をしておきましょう。
4.チャンネルの互換性をチェックする
特定小電力トランシーバーを選ぶ際、チャンネルの交互性をチェックしておきましょう。製品タイプが異なる場合、チャンネルが同じでも交互性がなく、通信ができないケースがあります。
交互性がない製品を購入してしまうと、使用できず再度買い替えなくてはいけません。無駄になってしまうため、複数の製品を購入する時や買い足す時に必ずチェックしておきましょう。
おすすめの特定小電力トランシーバー5選
最後におすすめの特定小電力トランシーバーを5つご紹介します。
- SRFD10
- SRS220SA
- SR235
- IC-4400L
- UBZ-LS20
それぞれ、順番に見ていきましょう。
1.SRFD10
SRFD10は、八重洲無線が販売する特定小電力トランシーバーです。「伝えたい時に 伝えたい人にだから オンデマンドインカムが よりスムーズに スマートにオンデマンド マイクロインカム」をキャッチフレーズに、高い人気を誇っています。
SRFD10の特徴は、以下のとおりです。
- 超小型・軽量サイズ
- 4色の本体カラーを選択可能
- 遠隔PA(拡声器)起動
- ワンクリックハンズフリー
- IP68を誇る防塵・防水機能
商品:SRFD10 八重洲無線
2.SRS220SA
SRS220Aは、Bluetooth対応の特定小電力トランシーバーです。SRS220Aの特長は以下のとおりです。
- 免許・資格が不要
- シンプルで操作しやすいキー配置
- 単3形乾電池1本で使用可能
3.SR235
SR235は、八重洲無線が販売している特定小電力トランシーバーです。SR235の特長は以下のとおりです。
- 超小型・軽量のボディ
- 基本性能を初め、耐久性に優れている
- 多彩な機能が搭載
- 防塵・防水性能が最高峰
- 500mWの大音量で明瞭度の高い受信音声を確保可能
- リチウムイオンバッテリーを内蔵し約45時間の長時間運用を実現
商品:SR235 八重洲無線
4.IC-4400L
IC-4400Lは、ポケットにも納まり持ち歩きが楽なコンパクト・軽量ボディが特長の1つです。IC-4400Lが持つその他の特長としては以下が挙げられます。
- IP67の防塵・防水性能を誇る
- 単3形乾電池1本で24時間使用可能
- LAN/LTE接続対応の中継装置にも対応
IC-4400Lの通信距離は、約200〜800mです。通信距離が足りないことが予想される場合は中継機の使用も検討しましょう。
5.UBZ-LS20
UBZ-LS20は、視認性や操作性、継承性などの製品性能が高い特定小電力トランシーバーです。UBZ-LS20の特長としては以下が挙げられます。
- 液晶表示が見やすく、分かりやすい
- UBZ-Lシリーズのオプションがそのまま利用可能
- 電波メーター・回転式アンテナを搭載
- 防塵・防水性能が高い
- ハンズフリーに対応
- 軽量・コンパクト設計
まとめ
特定小電力トランシーバーは、他無線に比べ、低出力であるため、通信範囲は広くありません。ただ、資格や免許は不要で購入してすぐに使用できる手軽さから、スタッフの入れ替えが多い飲食店や小売店、工場現場など様々な場面での使用が柔軟に行われています。
特定小電力トランシーバーを購入する際は、本記事を参考にしながら、ご自身に合った特定小電力トランシーバーを選ぶようにしましょう。