通信距離10kmのおすすめトランシーバー4選!違いも解説
トランシーバーは様々な機種が提供されており、使用用途に合わせて機種を選べるのがメリットです。業務連絡やレジャーなどで活躍する大変便利な通信機器ですが、目的に合わせた機種を正しく選択しないと不便が生じてしまうケースがあります。
今回はトランシーバーを選ぶポイントの一つである「通信距離」について、通信距離の違いや通信距離を伸ばす方法、中・長距離通信(2km~10km)ができるおすすめのトランシーバーを紹介します。
トランシーバーを選ぶ際のポイントは「通信距離」
トランシーバーを選ぶ際、コストや使いやすさなどよりも押さえておかなければならないポイントが「通信距離」です。
トランシーバーは特定小電力トランシーバーやデジタル小電力コミュニティ無線など、様々な種類がありますが、各機種によって通信距離が異なるため、低コストや使いやすさだけで選んでしまうと、通信距離が足りないために電波が届かず、通信が行えないという事態になりかねません。
トランシーバーを選ぶ際には、使用場所や範囲を基準に必要な通信距離を算出し、その距離に対応した機種かを確認する必要があります。
トランシーバーの通信距離を調べるポイント
目的に合わせた通信距離を算出するためには、通信を行う可能性のある範囲を想定しておく必要があります。
- 屋外イベント会場など平地で使用する場合
- ビルや建築現場など2階以上の建物で使用する場合
屋外イベント会場など平地で使用する場合
野外イベント会場など平地での通信を想定する場合であれば、会場面積およびその周辺での行動が想定される最大距離が必要になります。
ビルや建築現場など2階以上の建物で使用する場合
2階建て以上の建築物で使用する場合は、異なるフロア同士で通信することも想定して高さを含めた建物内の最大距離が必要になります。
トランシーバーごとの通信距離の違い
ここではトランシーバーごとの通信距離の違いについてみていきます。各トランシーバーの通信距離の違いは以下のとおりです。
機種 | 通信距離 |
特定小電力トランシーバー | 100m~1km程度 |
デジタル小電力コミュニティ無線 | 500m~2km |
デジタル簡易無線 | 1km~5km |
一般業務用無線 | 10km~20km |
MCA無線 | 全国 |
IP無線 | 全国 |
同じトランシーバーでも使用する機種によって通信距離に違いがあるものの、一般的な通信距離は上記のようになっています。
それぞれのトランシーバーの特徴についてみていきましょう。
特定小電力トランシーバー
「特定小電力トランシーバー」は、免許・資格不要で使用できる使用電力が少ないトランシーバーです。
最大通信距離は100m~1km程度と、他のトランシーバーと比較すると通信範囲は広くありません。
また、微弱の電波を使用する特性上、コンクリートの壁といった遮蔽物の影響を受けやすく、ビルが多い市街地だと100m〜300m程度で通信できなくなる可能性があります。
地下やフロアをまたいだ通信も得意ではないため、通信距離を伸ばしたいという場合は見晴らしのよい場所など、余計な障害物がない場所で使用するとよいでしょう。
特定小電力トランシーバーで同時通話を行う場合、送信出力1mW以外では一度の通信に制限時間があります。
デジタル小電力コミュニティ無線
「デジタル小電力コミュニティ無線」は、150MHz帯を使用して通信するデジタル無線です。
特定小電力トランシーバーと近い機能を有していますが、送信出力が10mWと非常に小さい電波であるのに対して、デジタル小電力コミュニティ無線は500mWと50倍の差があります。
したがって、特定小電力トランシーバーよりもデジタル小電力コミュニティ無線の方が、通信距離が広く、500m~2km程度離れていても通信可能です。
災害が起きた際の自治体単位での連絡や、ゴルフやサバゲーといった範囲が広いレジャー、工事現場など、幅広いシーンで利用されています。
デジタル簡易無線
「デジタル簡易無線」の通信距離はデジタル小電力コミュニティ無線と比較してさらに広く、市街地であれば1km以上、見晴らしのよい場所であれば5km程度離れていても通信可能です。
デジタル簡易無線は使用時に免許取得や届け出が必要で、機種の購入以外に電波使用料が掛かるため、特定小電力トランシーバーやデジタル小電力コミュニティ無線よりも広範囲での通信が求められる業務やレジャーに使用されています。
一般業務用無線
「一般業務用無線」は高速バスやタクシーなど、業務上で使用される無線です。
与えられている専用周波数を使用するため混信することなく安定した通信が可能で、通信距離は10km~20km程度となっています。
MCA無線
※2024/9/3追記
MCAアドバンスは2027年3月31日、デジタルMCAサービスは2029年5月31日にサービスを終了することが決定しており、現在新規契約の受付は行っておりません。
「MCA無線」は、中継局を介して通信を行う無線で、空きのチャンネルを自動的に割り当てられることによって通信を行います。
30km~40km程度の範囲で通信可能な基地局が点在しており、エリア内であれば全国で利用可能です。
接続時間は1回あたり3分~5分程度であり、MCA無線を使用するためには総務省へ書類を提出して免許を発行する必要があり、手続きの完了も3週間程度かかります。
利用用途も業務目的に限定されているため、レジャーや個人での使用はできません。
IP無線
「IP無線」は携帯電話回線を使用して通信を行う無線です。
携帯電話回線を使用するという特性上、通信距離の制限はなく、電波が入るエリアであれば全国どこでも通信できます。
「通信距離の制限がないのであればIP無線でよいのではないか」と感じる方もいるかと思いますが、回線を利用する以上、月々の通話料金がかかるため、特定小電力トランシーバーなどと比較するとコストが高くなりがちです。
また、携帯回線の有無に左右されるため、回線が通っていないエリアはもちろん、通信しにくいエリアだと安定した通信が行えません。
通信距離ごとの特徴
ここでは通信距離ごとの特徴を以下4項目に分けて紹介します。
- 近距離用
- 中距離用
- 長距離用
- 超広域用
使用する機種・環境などによって異なるものの、おおよその目安を知っていれば最適なトランシーバーを選ぶ手助けとなります。
それぞれの特徴について詳しくみていきましょう。
近距離用
近距離用トランシーバーの通信可能距離は以下のとおりです。
- 市街地:200m程度
- 郊外:1km~2km程度
- 見通しのよい場所:2km程度
トランシーバーの通信距離は出力によって変わります。
中距離用
中距離用トランシーバーの通信可能距離は以下のとおりです。
- 屋内:500m程度
- 市街地:1km程度
- 見通しのよい場所:3km程度
上記の通信距離を網羅できるトランシーバーは、デジタル小電力コミュニティ無線やデジタル簡易無線となります。
長距離用
長距離用トランシーバーの通信可能距離は以下のとおりです。
- 屋内:500m程度
- 市街地:2km程度
- 見通しのよい場所:5km程度
車載機の場合だと通信距離は市街地3km程度、見通しのよい場所で10km程度となります。
上記通信距離を網羅する場合は最大出力5Wのトランシーバーを選ばなければなりません。
超広域用
超広域用トランシーバーの場合は、MCA無線やIP無線のように中継局を介して通信を行うタイプです。
中継局を使用するため、出力が小さくても問題なく通信が行えます。
したがって、中距離や長距離のようにトランシーバーの出力を気にする必要はありません。
トランシーバーの通話距離を伸ばす5つの方法
トランシーバーの通信距離を伸ばす方法として次の5つが挙げられます。
- 金属を遠ざける
- なるべく屋外で通信する
- 屋内・車内で使用する場合は窓を開ける
- 中継器を使用する(特定小電力トランシーバー)
- アンテナを長くする
それぞれ詳しくみていきましょう。
金属を遠ざける
金属は電波を反射・吸収する性質を持っているため、近くに金属製品があると、電波が遮断されて通信距離が減衰してしまう恐れがあります。
金属を遠ざければ電波が遮断されなくなるため、通信距離を伸ばすことができるでしょう。
なるべく屋外で通信する
金網付き窓ガラスも金属であるため、上記の理由から電波を遮蔽してしまう他、コンクリートなど、密度が高いものも電波を減衰させる作用があります。
壁が鉄筋コンクリートという場合は、電波が大きく減衰してしまうため、通信距離が縮まってしまい、通話が困難となる事態となりかねません。
通信距離をできるだけ伸ばしたいという場合はなるべく屋外で通信するようにしましょう。
屋内・車内で使用する場合は窓を開ける
屋内・車内で使用する場合、窓を開けるのも通信距離を伸ばす手段となります。
窓や屋外に続くドアを開けることで金網の遮蔽物が除外され、電波の減衰を防止することができます。
中継器を使用する(特定小電力トランシーバー)
通信距離を伸ばす方法として最も効果的なのが、中継器の使用です。
中継器を使用すれば理論上、通信距離を倍にできるため、通信範囲が狭い特定小電力トランシーバーでも長い距離を通信できるようになります。
ただし、トランシーバーによっては中継器に対応していない機種もあり、対応していない場合は中継器に対応しているトランシーバーに買い替えなければなりません。
中継器の使用も考慮している場合は、中継器に対応している機種の購入を検討するとよいでしょう。
アンテナを長くする
一般的にトランシーバーのアンテナの長さと通信距離の長さは比例します。
特定小電力トランシーバー以外の場合は、アンテナを長いものに変更することで通信距離を伸ばすことができます。
特定小電力トランシーバーの場合はアンテナを交換することができないため、ロングアンテナタイプの機種に変えることで通信距離を伸ばすことができます。ロングアンテナタイプは中継器に対応している機種も多いため、特定小電力トランシーバーではロングアンテナと中継器を併用することで、通信距離をさらに伸ばすことができます。
中・長距離通信(2km~10km)のおすすめトランシーバー4選
中・長距離通信(2km~10km)のおすすめトランシーバーとして次の3つが挙げられます。
- MiT7000
- SR820U
- TCP-D261
- SRM420U
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.MiT7000
「MiT7000」はMOTOROLA(モトローラ)の簡易無線です。
通信可能距離は以下のようになっています。
- 市街地:1km程度
- 郊外:2km程度
- 障害のない見通しのよい場所:10km以上
免許申請が必要なため、購入してすぐに使用できる機種ではありませんが、出力が5Wのトランシーバーの中でも電波の飛び具合がよいため、安定した通信が可能です。
2.SR820U
「SR820U」は八重洲無線(スタンダードホライゾン)のデジタル簡易無線です。
使用には免許申請が必要となります。
通信可能距離は以下のようになっています。
- 市街地:1km程度
- 郊外:2km程度
- 障害のない見通しのよい場所:10km程度
商品:SR820U 八重洲無線
3.TCP-D261
「TCP-D261」はJVC KENWOOD(JVCケンウッド)のデジタル簡易無線で、使用する場合は上記2機種と同様、免許申請が必要です。
通信可能距離は以下のとおりです。
- 市街地:1km程度
- 郊外:2km程度
- 障害のない見通しのよい場所:10km以上
出力5W(1Wに切り替えも可能)なため、電波の飛びがよく、抗菌・抗ウイルスのセルフィール加工がされており、SIAA抗菌認証も取得しています。
4.SRM420U
「SRM420U」は八重洲無線の車載型デジタル簡易無線で、高音質のフロントスピーカー内蔵タイプかつ非常にコンパクト、防塵・防水性能を持っているので、粉塵が発生するような環境下でも使用可能な機種です。
通信可能距離は以下の通りです。
- 市街地:1km程度
- 郊外:2km程度
- 障害のない見通しのよい場所:10km程度
本体内蔵スピーカーおよび付属するマイクのスピーカーは2Wの高出力を誇り、出力スピーカーを選択または同時出力ができるため、様々な環境に合わせて使用することができます。
まとめ
特定小電力トランシーバーの通信距離は最大1km程度、デジタル小電力コミュニティ無線でも最大2km程度のため、10km離れていると通信が難しいです。
しかし、これらはあくまでも基本仕様であり、「中継器を使用する」「アンテナの位置を高くする」などの方法を試せば、通信距離を伸ばせる可能性は十分あります。
ただし、トランシーバー単独で10km以上離れた相手とも安定した通信をするのであれば、出力5Wのデジタル簡易無線(車載型)もしくはMCA無線、IP無線を購入した方がよいです。
いざという時に通信できないという事態にならないためにも、トランシーバーは通信距離と使用目的、免許の有無などを考慮して、用途に合ったものを選ぶようにしましょう。