デジタル小電力コミュニティ無線とは?
他無線との違いについても解説
デジタル小電力コミュニティ無線は、2018年の法改正によって、市街地でも使用できるようになった無線です。
免許・登録が不要な他、シンプルで使いやすい設計となっているため、購入してすぐに使用できます。
似たような無線に特定小電力トランシーバーなどがありますが、それぞれメリット・デメリットがあるため、しっかりと違いを理解したうえで選ばなければなりません。
今回はデジタル小電力コミュニティ無線の特徴や各無線との違い、利用の最適なシーンについて説明していきます。
デジタル小電力コミュニティ無線とは?
「デジタル小電力コミュニティ無線」とは、150MHz帯を使用して通信を行うデジタル無線です。DRCRやLCL、デジ小、デジコミとも呼ばれています。
高齢化社会となっている現代の日本では、地域社会への関わり対策や地域全体で高齢者をサポートするための体制構築で、安価で簡単に操作できる通信手段が必要でした。
この課題解決として注目されたのが、トランシーバーです。
元々、150MHz帯は山岳地帯において野生動物を監視する人々の専用周波数でしたが、2018年の法改正によって、市街地でも使用できるようになりました。
各無線との比較
ここではデジタル小電力コミュニティ無線と各無線を比較していきます。各無線との違いは以下のとおりです。
デジタル小電力コミュニティ無線 | デジタル簡易無線(登録局) | 特定小電力トランシーバー | IP無線 | |
通信距離 | 500m~2km | 最大10km | 100m~1km | 全国 |
周波数 | 150MHz | 350MHz | 400MHz | 携帯電話のデータ通信網 |
送信電力 | 500mW | 5W | 10mW | 0.25W |
免許 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 |
登録 | 不要 | 必要 | 不要 | 不要 |
電波利用料 | 不要 | 必要 | 不要 | 必要 |
チャンネル数 | 18 | 35 | 47 | 制限なし |
それぞれの違いについて詳しくみていきましょう。
デジタル簡易無線との違い
デジタル簡易無線(登録局)とデジタル小電力コミュニティ無線の違いとして次の3つが挙げられます。
- 通信距離の広さ
- 登録の有無
- 電波利用料の支払い有無
デジタル小電力コミュニティ無線の通信距離はおおよそ500m~2km程度です。
一方、デジタル簡易無線の方が通信距離は1~5km、見通しが良ければ最大10kmとかなり離れていても通話できます。
しかし、業務もしくはレジャーと使用用途が限定されている他、使用する際は登録の届け出が必要であり、電波利用料も支払わなければなりません。
日常生活や低コストでの使用を重視するのであれば、デジタル小電力コミュニティ無線の方がおすすめです。
特定小電力トランシーバーとの違い
特定小電力トランシーバーはデジタル小電力コミュニティ無線に近い機能を有しています。
免許取得や登録の届け出を行う必要がありません。
両者の大きな違いとして挙げられるのがスペック差です。
特に差があるのが送信出力で、特定小電力トランシーバーの送信出力は電波法に基づき10mWと非常に小さいです。
一方、障害物が多い山岳部での使用が本来の目的だったデジタル小電力コミュニティ無線の送信出力は500mWと、特定小電力トランシーバーの出力の50倍を誇っています。
したがって、デジタル小電力コミュニティ無線の方が、特定小電力トランシーバーよりも遠くの相手と通信可能です。
ただし、スペックの低さや一般利用されてからまだ日が浅いという理由から、コストの低さや機種のバリエーションは特定小電力トランシーバーの方が優れています。
利用シーンが限られている、とにかくコストを抑えたいという場合は特定小電力トランシーバーを選ぶとよいでしょう。
IP無線との違い
IP無線もデジタル小電力コミュニティ無線と同様に、資格や免許が不要の無線です。
ただし、両者には以下3つの大きな違いがあります。
- 通信距離
- コスト面
- 回線の有無に左右される
IP無線は4Gや5Gといった携帯電話のデータ通信網といった電話回線を使用して通話を行うため、全国の相手に通信可能です。
500m~2km程度と通信距離が限定されるデジタル小電力無線と比較すると、通話距離に関してはIP無線が圧倒的にスペックを誇っています。
ただし、回線を利用しなければならないIP無線は、月々の通話料金が発生するため、デジタル小電力コミュニティ無線と比べてコストが高くなりがちです。
また、回線が通っていないエリアや通信しにくいエリアだと通話が困難になるため、安定した通話が行えません。
使用するエリアが限定的であれば、コスト面も考慮してデジタル小電力コミュニティ無線を選んだ方がよいでしょう。
デジタル小電力コミュニティ無線の5つの特徴
デジタル小電力コミュニティ無線の特徴として、次の5つが挙げられます。
- 免許・資格が不要
- 耐久性が高い
- GPS機能が装備されている
- 周辺音声を取得できる
- 操作がしやすい
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.免許・資格が不要
無線を使用する場合、本来は電波法に基づいて免許・資格が必要です。
しかし、デジタル小電力コミュニティ無線や携帯電話のデータ通信網といった電話回線を使用するIP電話、低出力の特定小電力トランシーバーは免許・資格を取得する必要がありません。
購入すればすぐに使用できるため、素人でも手軽に使用しやすいといった特徴があります。
2.耐久性が高い
元々、山岳地帯での使用が目的だったデジタル小電力コミュニティ無線は、屋外使用を想定して設計されているため、防水・防塵機能が標準搭載されています。
したがって、耐久性が高いのもデジタル小電力コミュニティ無線の大きな特徴です。
3.GPS機能が装備されている
近年、GPS機能を搭載した無線が増えていますが、山岳地帯での使用が目的だったデジタル小電力コミュニティ無線には、GPS送出義務付けられていました。
そのため、2018年の法改正によって一般利用が可能になった現在でも、GPS機能が標準化されています。
この機能を利用すれば、所有者の位置はもちろん、子供や高齢者の現在位置も特定しやすくなるため、迷子や誘拐、認知症による徘徊などの対策にも利用可能です。
4.周辺音声を取得できる
周辺音声を取得する機能が備わっているのも、デジタル小電力コミュニティ無線の特徴です。
相手からの連絡がつかない、相手との通信が困難という場合に、この機能を使用すれば、周辺の音をモニタリングできるため、迷子や行方不明者を発見しやすくなります。
5.操作がしやすい
デジタル小電力コミュニティ無線は、地域コミュニティにおいて簡単かつ手軽に使用できる通信手段として考案されました。
したがって、特定小電力トランシーバーやIP無線と同様に操作がしやすいといった特徴があります。
シンプルな設計となっているため、無資格や無免許といった素人の方はもちろん、子供や高齢者、機械の取り扱いが苦手という方でも問題なく使用可能です。
デジタル小電力コミュニティ無線の利用に最適な7つのシーン
デジタル小電力コミュニティ無線の利用に最適なシーンとして次の7つが挙げられます。
- 工事現場
- 工場・倉庫・警備
- カーディーラー
- レジャー
- 鳥獣駆除・猟友会関連
- 災害時
- 各種サービス業
それぞれのシーンについて詳しくみていきましょう。
1.工事現場
工事現場と無線は非常に相性がよいです。
オプション使用によってハンズフリーによる連絡が行えるため、手がふさがっている場合でも業務に支障を与えることなく連絡できます。
デジタル小電力コミュニティ無線は通信距離が広範囲なため、特定小電力トランシーバーの通信距離では物足りない大規模な工事現場に最適です。
また、GPS機能による位置特定を行えば、伝達による作業依頼や近場にいる人に作業の応援を依頼するといった応用も利くため、活用の幅も広げられます。
2.工場・倉庫・警備
見通しが悪い大規模な工場も、デジタル小電力コミュニティ無線と相性がよいです。
障害物が多くても連絡しやすい他、500m程度の距離であれば問題なく通信できるため、スムーズな情報伝達が行えます。
上記と同様の理由で障害物が多い倉庫の他、素早い情報伝達が求められる警備でもデジタル小電力コミュニティ無線は最適です。
警備員や作業員が事故に巻き込まれたり、倒れたりして連絡が途絶えた場合、GPS機能を活用して位置の特定ができるため、迅速な対処が可能となります。
3.カーディーラー
カーディーラーといった自動車関係の業務でもデジタル小電力コミュニティ無線は活躍します。
例えば、お客さんが試運転を希望している場合、デジタル小電力コミュニティ無線であれば、すぐに連絡が取れるため、お客さんへの迅速な対応・案内が可能です。
携帯電話でも代用可能なものの、通話の手間がかかりますし、一斉通知した場合、多少のタイムラグがあるため、お客さんへの迅速な対応が行えない場合があります。
ディーラーなどの限られた範囲内で連絡するのであれば、デジタル小電力コミュニティの方が使い勝手はよいでしょう。
4.レジャー
ゴルフやバーベキュー、サバゲーなど、広い範囲で楽しむレジャーの通信手段として、デジタル小電力コミュニティ無線はおすすめです。
障害物がないゴルフ場の場合、5km以上の通信が行えるため、市街地などで使用するよりも連額が取りやすくなります。
これらのレジャーは雷などの天候不良や不慮の事故などに遭遇しやすいことから、広範囲での連絡が必要な場合が多いです。
したがって、デジタル小電力コミュニティ無線を用意しておけば、いざという時に迅速かつ冷静に情報の伝達が行えます。
5.鳥獣駆除・猟友会関連
広い山の中で活動する鳥獣駆除・猟友会に無線は欠かせません。
免許・資格がない方でも使用できるデジタル小電力コミュニティ無線を装備しておけば、狩猟時の連絡手段として重宝するでしょう。
6.災害時
洪水や台風、地震などで停電が発生した場合、電話が使用できないリスクがあります。
このような時、デジタル小電力コミュニティを使用すれば、電話に代わる通信手段となるため、現状共有や避難場所の連絡、家族の安否確認が可能です。
また、デジタル小電力コミュニティ無線がどれだけ操作しやすい無線だったとしても、使い慣れていないとスムーズな使用ができません。
特に災害に巻き込まれて、パニックになっている時は尚更です。
したがって、避難訓練や日常生活などで定期的に使用し、いざという時にスムーズに操作できるよう訓練しておくことをおすすめします。
7.各種サービス業
飲食店や美容院、ブライダルなど、各種サービス業でもデジタル小電力コミュニティ無線は活躍してくれます。
スタッフ同士の情報伝達スピードを高められれば、柔軟かつ迅速な対応が可能となるため、サービスの質を向上させることも可能です。
スタッフ同士の連携向上を高めたいという場合は、デジタル小電力コミュニティ無線の導入を検討してみるとよいでしょう。
おすすめのデジタル小電力コミュニティ無線
おすすめのデジタル小電力コミュニティ無線として次の2つが挙げられます。
- IC-DRC1MKⅡ
- DJ-PV1D
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.IC-DRC1MKⅡ
FMラジオ受信機能も装備されている、デジタル小電力コミュニティ無線です。
防塵防水性能IP54を採用しており、砂埃や少々の雨、水しぶきであれば問題なく使用できます。
通信距離は最大出力で市街地約500m、郊外だと2kmと広範囲で、携帯電話が使用できない場所でもエリア県内であれば問題なく通信可能です。
2.DJ-PV1D
音声にならない弱いレベルの信号も受信する音声受信レベル設定など、多彩なカスタマイズ機能が搭載されているデジタル小電力コミュニティ無線です。
通信距離は高いビルや山頂といった見晴らしの良い場所であれば3km以上と非常に広範囲にわたって通信できます。
相手までの距離と方角が表示される位置情報機能もあるため、地域防災や防犯用途にも最適です。
まとめ
デジタル小電力コミュニティ無線は免許・登録不要で使用できる無線です。
2018年の法改正によって、市街地でも使用できるようになった150MHz帯の無線で、特定小電力トランシーバーの出力の50倍を誇るため、より遠くの相手と通信できます。
GPS機能など多彩な機能が標準装備されているため、高齢者の徘徊や、子供の誘拐・迷子への対策といった地域コミュニティでの通信手段として活用されています。
機能を上手く活用できれば、「工事現場」「工場・倉庫・警備」といった様々なシーンで重宝するため、汎用性の高い無線といえるでしょう。