IP無線機の特徴とおすすめの機種について紹介
無線機を趣味や仕事で使用する人は、その利便性と奥深さに満足していると思います。
しかし、従来の無線機では通信範囲などに少し物足りない所がありました。
2018年頃から普及したIP無線機は、その不満を払拭してくれる無線機です。
今回はIP無線のメリットやデメリットと、おすすめのIP無線機を解説していきます。
IP無線とは
IP無線とは、従来の無線機と携帯電話・スマートフォンのお互いの長所を引き出した、新しい無線機です。今までの無線機の足りない所を補える、比較的新しい無線機となります。
音声をパケットデータに変換してやりとりを行い、Wi-Fiにも接続することができる機種があります。IP無線機は、操作性に特化したシンプルな無線機と、スマートフォンのような形状をした携帯型無線機、耐久性を重視した無線機が販売されています。
携帯電話の回線を使用するので、国内の携帯電話が繋がるエリアで通信が可能。
IP無線機の主なメリット3つ
昔ながらの無線機と比べると、とても多機能なIP無線機。
そのメリットを以下の3つを紹介します。
- 通信距離が広い
- 通信が安定している
- セキュリティ面も安心
通信距離が広い
IP無線は、運送関係、イベント会場、工事現場など様々な場面で使用されています。
従来の無線機の通信範囲は1〜2kmが限度でしたが、IP無線の場合は携帯キャリアのサービスエリア内であれば全国で通話を行うことができます。
全国の通信エリアを携帯キャリアがあらかじめ確保しているため、中継器を繋げる必要もありません。
通信が安定している
IP無線は広範囲での通信が可能でありながら、電波の混信に強いという特徴があります。
通常の無線機だと電波が遮断される場所でも、IP無線ならば通話が可能なケースが多く、現在あらゆる業界で需要が高まっています。
セキュリティ面も安心
従来の無線機では、直接電波をキャッチされて通信内容を他人に聞かれるリスクがあります。
IP無線機では送受信の際に指定した相手以外に通信が混入する心配がありません。セキュリティがしっかりしているので安心して会話を行えます。
ですので、インターネットを利用するとセキュリティ的な問題が大きいという印象はなくなってきました。現在のIP無線機は「4G/LTE」を利用していて、とても強固なセキュリティ対策がされています。
さらにIP無線機は、機種によってはGPS機能を付けることも可能です。リアルタイムで無線機の位置情報を確認できるため、複数人のメンバーの場所や情報を管理したい場合に重宝するでしょう。
IP無線のデメリット2つ
デメリットは以下の2つです。
- 通信料がかかる
- 携帯電話の電波が届かない場所では通信できない
通信料がかかる
IP無線機の契約はスマートフォンを契約するイメージとほぼ同じです。
アンテナの設置は不要ですし、無線機器購入の際はレンタルやリースを選択でき電波利用の初期投資は不要です。しかし毎月の回線使用料が発生します。
長期利用が前提なので、途中解約をすると違約金が発生する可能性もあります。
長期的な利用を予定していて、免許を取得したり大規模な設備投資をするほどでもない事業者には、便利な無線通信の手段になります。
【無線機本体のコスト】
IP無線機を購入する場合、安いものでも6万円〜10万円程度かかることが多いです。中古品はもう少し安くなることもありますが、製品の状態が落ちてしまう可能性があります。本体をレンタルする場合、月々の費用はレンタル業者によって変わります。
一泊二日程度なら5000〜6000円程度なので本体を購入するよりも安く使用できます。年間単位で使用する場合、コストは購入よりも高くついてしまいます。借りる期間が長ければその分月々のレンタル費用が安くなるケースは多いです。
短期レンタルの場合、一ヶ月レンタルだと1万円~1万5千円前後が大まかな相場ですが、数年単位でレンタルする場合、月々の費用が3000~4000円台となるケースは多いです。
【ランニングコスト】
IP無線機は電話回線を使用するので、通信料金が発生します。基本的に通信料金は定額制で、2,000〜3,000円が相場です。 レンタルの場合でもイヤホンなどのアクセサリもレンタルすると、更に料金が加算されます。
携帯電話の電波が届かない場所では通信できない
特定小電力トランシーバーや簡易無線広域での通信はできませんが、携帯電話のエリア外でも、一定の距離ならば使用することができます。
一方、IP無線は全国での通信が可能ですが、携帯電話のエリアの外では通信ができなくなります。IP無線より、専用の周波数がある簡易無線の方が環境によっては通信しやすい場合もありますので、業務に合わせて無線機を選んで下さい。
IP無線の活用例
IP無線機は遠距離での通信を目的とした無線機になります。
ただし、海上などの携帯電話が通じない場所では、IP無線機でも通信ができません。大きなイベント会場では、電波の使用が集中して通信が繋がらなくなることも。主なIP無線の有効な活用例を紹介していきます。
【長距離トラックなどの荷物配送】
IP無線機はトラックの配送など、移動しながらの通信に相性が良いです。
配達場所が多岐に渡る場合、指令場所から現地にスムーズに目的地を指示ができます。その際にGPSが内蔵されている無線機があれば、トラックの現在位置が把握できるので効率も良いでしょう。道路状況の把握や、配送先の在庫状況を指令場所で確認して、複数のドライバーに情報を共有していくことで業務効率は大幅にアップします。
ドライバーも運転をしながら連絡を取りたい場合、IP無線機であればボタンを押すだけで簡単に連絡を取ることが可能です。IP無線機の通話は運転中であっても道路交通法の違反対象にならないため、安心です。
【工事現場】
工事現場には危険な作業がとても多いです。特に夜間の作業は車両の搬入と一般車の交通整理に警備員との連携が必要になります。見通しの悪い道路では、片道通行をしなければならない場面もあり、4人以上の連絡が必要なこともあります。
警備員は片手で誘導灯を振りながらの作業になるので、なるべく操作の手間が少なくなる必要があります。特定小電力トランシーバーでも対応は可能ですが、誘導の範囲外になる現場もあるので、遠距離対応のIP無線機がどの現場でも活躍できるでしょう。
【長距離バス】
長距離バスの業務は行き先が一定ではありません。その都度ルートを確認して安全にお客様を現地に届ける義務があります。ツアーや団体客の運行では同じ目的地に数台のバスが向かうことになります。そのため運転をしながら他のバスの運行状況を確認するのは困難になります。
指令場所からの指示が出しやすく、運転手同士の連携にも広範囲の連絡ができるIP無線はとても便利です。緊急な道路上のトラブルもすぐに伝えることができます。ただし、山間部など奥地で運行をする際には、IP無線でも繋がらないことがあるので、その際にはドライバー同士で別の連絡手段を用意しておく必要があります。
【花火大会での通信】
来場者が数万人を超える大規模なイベントでは、その誘導スタッフも大量に動員されます。花火大会では数kmの範囲になるため、その連絡は容易なことではありません。
交通状況・救急・誘導など迅速に指示を出すことになりますので、携帯電話のみでやりとりをするのはとても大変になります。このような状況下でもIP無線機は遠距離かつ、迅速な通信手段となるでしょう。
【タクシー】
運転時の通話は原則禁止ですが、無線機での通信は認められています。GPS機能でタクシーの現在位置を把握し、利用客の最寄りのタクシーを配車することが容易になります。
長距離の顧客が乗車した際には、業務で使用する無線ではその通信範囲を超えてしまう可能性があるので、急な利用でもIP無線ならば全国で対応可能です。
最近ではスマートフォンのアプリで配車を依頼するサービスが増加しているので、GPSを搭載しているIP無線機ならばタクシー業務のほとんどの事案に対応が可能です。
【スポーツイベントでの通信】
スタッフの距離が大きく離れている現場では情報が混乱する恐れがあるので、マラソンや駅伝などのイベントではIP無線機が最適です。交通誘導と選手の到着確認が迅速におこなえないと、思わぬトラブルが起こります。駅伝などは数10kmに及ぶスポーツなので、このような場合でもIP無線機は問題なく通信が可能です。
【緊急時・災害発生時の通信】
緊急時の公務にあたる警察・消防・救急はもちろんのこと、一般企業でも災害発生時にはそれぞれ迅速に連携・対応が求められます。事故などのトラブルをあらかじめ想定して連絡用の無線機を事前に配備しておくことがとても安心です。
緊急時は携帯電話を持ちながら作業をするのはとても困難なので、常時通信できるタイプのIP無線機が通信距離・利便性に優れています。携帯電話の回線は災害時にはパンクしてしまう可能性が高く、緊急時にその役割を果たせない恐れがあります。IP無線機の回線ならば比較的通信を繋ぎ続けることができます。
おすすめのIP無線5選
e-無線で利用ができるおすすめのIP無線機を、5つ紹介いたします。
- SRNX1x 八重洲無線スタンダードホライゾン
- IP502H アイコム
- IP200H アイコム
- IP700 アイコム
- SV-2000 スマートウェーブ
SRNX1x 八重洲無線スタンダードホライゾン
ドコモLTE回線を使用した無線機。Wi-Fiにも対応します。
一度の充電で20時間の使用が可能で、スマートフォンのように一日中使用してもその機能は持続します。
先に登録しておいたメッセージをいつでも送信できる「定型メッセージ送受信機能」搭載。
また、グループ内ですぐに合図を送れる「CUE機能」を備えています。
「トークスイッチ」設定にするとハンズフリーで電話のように自然に同時通話が可能。複数の相手とも会話ができます。
NTTドコモのLTE回線を使用した携帯電話の通話範囲に加えてWi-Fiにも対応することで、
より広い通信カバーエリアを確保し安定した通信が可能です。
全国通信可能、重量220g、サイズは幅59mm×高さ97mm×奥行36mm
IP502H アイコム
ドコモの3G/LTE回線、auの4G/LTE回線のどちらかを使用し全国で通信が可能。
本体操作でキャリアチェンジができます。
「録音再生機能」は1件あたり最大1分間録音することができ、最大4件まで保存可能です。
拡張機能を利用すると従来の無線機との連携ができ、広範囲の通信網を構築できます。
天面に緊急呼び出しボタンが配置されていて、トラブル発生時にワンプッシュで仲間に知らせることができます。
全国通信可能、重量240g、サイズは幅59mm×高さ95mm×奥行32mm
商品:IP502H アイコム
IP200H アイコム
見た目はPHSのような超薄型設計。
防水性能に優れていて雨の中でも安心して利用できます。
会社・事務所あての通話を外出中の無線機所持者にそのまま転送することが可能。さらに、外出先から事務所の電話番号で折り返しの連絡をすることができます。
「割り込み通話機能」が搭載されていて、他者との会話中に重要な話があれば割り込んで通話することができます。
全国通信可能、重量155g、サイズは幅54.3mm×高さ139mm×奥行20mm
商品:IP200H アイコム
IP700 アイコム
2020年3月に業界で先駆けたIPトランシーバーとデジタル簡易無線の一体型の無線機です。
送信ボタンが2つに別れていて、ワンプッシュで両方の音声の送受信ができます。
遠方からの指示と、現場の指示が同時におこなえるので、通信手段は完璧といえるでしょう。
1500mWの大音量で聞き逃す心配もありません。登録局・免許局どちらにも対応しています。
両方の無線機の機能が搭載されているので、全体の重量は他機種に比べると重くなっています。
全国通信可能。簡易無線使用時の通信可能距離約1~3km、重量320g、サイズは幅61.7mm×高さ140.5mm×奥行42.8mm
商品:IP700 アイコム
SV-2000 スマートウェーブ
ドコモの3G/LTEを利用。全国エリアで広域な通信が可能です。
車載型IP無線機で簡易無線・MCA無線との連携もできます。
従来のSV-1000より温度に対する性能が向上したので、真夏時に車内での故障の心配がなくなっています。
「緊急速報受信機能」が備わっていて、走行中の危険回避に役立ちます。
情報処理に特化していて、新しい情報をサーバーから自動的にダウンロードすることができるので、時間を拘束されることもなくなります。
全国通信可能、重量530g、サイズは幅140mm×高さ25mm×奥行150mm
まとめ
IP無線機はこれからの情勢においてかかせない通信手段です。
従来の無線機のデメリットを大きく補うことができるでしょう。
コスト面で利用が合わないときにはレンタルサービスなどを活用して、業務に役立てて下さい。