無線機とは?無線機の種類や免許申請が必要なケースを解説
無線機にはどんな種類があるのか、免許申請が必要なケースとは。知らなかったでは済まされない、無線機を利用するにあたっての免許局や登録局についても解説していきます。
無線機とは?
無線機とは、無線通信を行うための機器であり、誘導員同士で無線機を使って人の流れをスムーズにしたり、レストランや結婚式場などで店員同士がインカムを使って会話を行っていたりと身近で使われていることが多いです。
とはいえ、業務内容によっては使う無線機が異なります。誘導員が使用している無線機とレストランで使用している無線機は別の機種です。業務内容だけでなく、利用する用途によって必要な機能が異なります。
無線機は送信機と受信機を一体化させた装置すべてを指します。無線機の種類を大きく分類すると「特定小電力トランシーバー」「簡易無線機」「IP無線機」の3つに分けられます。
無線機の通話モードの種類
無線機を使えば、従業員全員に周知したい内容を一斉に複数の人に連絡できます。スマートフォンや携帯電話は1人にしか通話を行えないのに対して、無線機は全員に情報の共有スピードが上がり、手間が省けます。また、一斉に通話するだけでなく、あらかじめ設定した集団のみでの通話が行える無線機も登場しています。無線機はあらゆる場面やさまざまな業界で使用されています。
IP無線機の通話モードを紹介します。
1.一斉通話・グループ通話
一斉通話は同じ回線に存在する無線機に対して、同じ内容を音声で届けることが可能です。
グループ通話は、同じ回線にある無線機をさらにグループ分けをして、チームで同時通話を行うことができます。
組織が大きくなればなるほど無線機で連絡を取ろうとすると、一斉通話だけでは利用が難しいケースが多々あります。そのような場合には、指示系統ごとに分類をして通話を行うことができます。
2.優先通話
独特な通話モードで、IP無線機特有の機能です。無線機ごとに優先度をつけることができます。一般的な無線機は、一番に通話ボタンを押した人が発言をします。しかし、IP無線機を使えばリーダーなど権限の強い人の無線機を優先することで、割り込んで通話ができるので大事な情報を最優先することが可能です。
無線機の通信エリア
無線機の場合「特定小電力トランシーバー」を主として、中距離の通信ができる「デジタル簡易無線機」「一般業務用無線機」と遠距離向きの「MCA無線機」「IP無線機」があります。
電波の違いによって以下の範囲までそれぞれ使用可能です。
特定小電力トランシーバー | 100~300m |
デジタル簡易無線機 | 1~5km |
一般業務用無線機 | 10~20km |
MCA無線機 | 全国エリア 中継局から半径30km圏 |
IP無線機 | 全国エリア 携帯電話3G・4G圏内 |
無線機には個人で使用する特定小電力トランシーバーから、携帯電話の通信範囲と同じ範囲で使用できるIP無線機まで、さまざまな種類があります。
無線機の種類とその用途3つ
無線機によってそれぞれの種類や得意な分野も異なります。以下の無線機の用途を紹介します。
- 特定小電力トランシーバー
- 業務用無線機
- IP無線機
1.特定小電力トランシーバー
特定小電力トランシーバーは、無線機のひとつであり、トランシーバーの中でも通信距離の短い無線機です。通信距離に限界があったり、遮蔽物に弱かったりとデメリットはありますが、免許や登録が不要で、経費を抑えて購入できます。
さらに、電池の減りが遅く、軽量でコンパクトなため扱いやすい点などがメリットです。特定小電力トランシーバーは送信出力が小さいので、周りの電波に干渉するおそれが少ないので、免許や登録が不要です。
家電量販店でも取り扱いしているなど、割と導入しやすい機種です。
主な活用シーンとして、飲食店・結婚式場・アパレル・レジャー・工場見学などに多く使われています。
2.業務用無線機
業務用無線機とは、主にアマチュア無線機やパーソナル無線機などプライベートな利用を目的とした無線機を除いたものを指します。
業務で使用するには広い範囲での通信が必要となり、最大通信距離がおよそ10~20kmと幅広いのが特徴です。業務用無線機の使用にあたっては無線従事者と無線局の免許が必要です。
3.IP無線機
IP無線機は携帯電話の通信網を使用して、音声通信を行う業務用無線機のことです。携帯電話の電波が入るところであれば、全国どこに居ても通話できます。GPSを搭載している機種では動態管理が行えるなど、他の無線とは違う機能がたくさんあります。タクシーや長距離トラック運転手も導入しているケースがあります。
主な利用シーンとして、運送業・マラソン大会・病院などの広範囲で通信が必要な方に多く使われています。
無線機の利用には免許は必要?
1W出力以上の無線機を利用する場合は、総務省総合通信局の免許を受けるために免許申請が必須です。仮に免許申請を行わずに業務用無線機を使用した場合には、電波法違反となり処罰の対象となるので、注意が必要です。
免許局と登録局の違い
免許局と登録局の違いや申請方法について紹介します。
免許局とは
法人や団体などが業務に使用することを目的とした無線局で、会社がスタッフ同士の連携に使う場合には免許局の申請が必要になります。免許局の特徴は、業務での使用を目的としていることから、チャンネル数が多く、周波数帯が区別され、混線がしにくい点です。電波が混み合っている場所でも、スムーズに無線を使用することができるので、業務に支障をきたさないことがあげられます。
免許局の無線機を使用する場合は、1台ごとに免許申請して取得する、使用者は免許を持っている組織の人だけに限られています。そのため、免許を持っている組織に所属する人以外の人に使わせることや、無線機をレンタルすることは禁止されています。
無線局を開設し、運用するためには原則として「無線局免許」の取得が必要となり、電波を利用するためには、無線設備などを備えた無線局を開設する必要があります。そのため、無線局を開設するためには、総務大臣の免許を受けることが必須です。
- 免許を取得するためには、申請を行う
申請するにあたって、申請書、無線局の開設目的、設置場所、使用する無線機の工事設計などを記載した添付資料が必要です。
- 次に申請書類の審査を行う
提出された申請書類は、総務省で審査されます。
審査事項はおおむね次のとおりです。
- 工事設計が電波法に定める技術基準に適合すること
- 周波数の割り当てが可能であること
- 総務省令で定める無線局の開設の基本的な基準に一致すること
- 審査後、予備免許が与えられる
審査の結果で電波法令に適している場合は、以下を指定すると予備免許が付与されます。
- 工事落成の期限
- 電波の型式、周波数
- 運用許容時間
- 呼出符号など
- 空中線電力
- 予備免許を受けた方は、工事が落成したら検査を受ける
予備免許を付与された申請者は、無線設備の工事が落成したのち「落成届」を文書にて各総合通信局に提出し、落成検査(新設検査とも呼ばれる)を受けなければなりません。
- 簡単な免許手続きの条件に該当するときは③、④の手続きが省略されます
- MCA無線の陸上移動局
- 簡易無線局
- アマチュア無線など
小規模なものであって、使用する無線設備が技術基準適合証明を受けている場合には、予備免許、検査などの手続きが省略され、審査した結果、法令に適合していると認められれば免許が与えられます。
- 免許状交付
検査に合格した場合と簡易な免許手続きによって検査などが省略された場合は、免許状が交付されます。など、免許には有効期限があります。
- アマチュア局、陸上移動局、簡易無線局などは5年
- 義務船舶局、義務航空機局は無期限
登録局とは
登録局は免許局と違い、業務だけでなく幅広い用途で使用できます。登録局が2008年に制度化され、これまでの規制を緩和するための無線局です。登録局の特徴は、免許がなくても出力の高い無線機を使うことができることです。
事前に登録の申請と開設届を提出すれば、法人だけでなく個人でも無線機を使用できます。また、登録者以外でも使用でき、複数台をまとめて一度に登録することができるのも特徴です。
そのため、レンタル無線機としても貸出することができ、レジャーなどでも使用できます。通信相手が制限されることもなく、より手軽に無線機を扱うことが可能となりました。
とはいえ、デメリットも存在します。免許局と比較するとチャンネル数が少なく、混線しやすい点があげられます。そのため。登録局の無線機には混信を防止するために「同じ周波数帯で基準値以上の強さの電波を受信しているときに、送信を禁止する機能=キャリアセンス機能」が義務付けられています。
登録局を開設するための、申請から登録までの流れを紹介します。
- 有効期間満了の日以降、継続して登録局を運用するためには、再登録の申請を行う必要がある
申請するにあたっては、申請書と、無線局を開設する目的、常置場所、使用する無線設備の工事設計などを記載した書類を無線設備管轄する総合通信局または沖縄総合通信事務所に提出する。
包括登録の申請は、申請書と無線局の開設する目的などを記載した書類を申請者の住所を管轄する総合通信局または沖縄総合通信事務所に提出します。なお、無線設備の設置場所、使用する無線設備の工事設計などの事項については、無線局を開設した後に届け出ます。
- 申請書類の審査
提出された申請書類は、総務省で審査します。審査事項はおおむね次のとおりです。
- 無線設備の設置場所が総務省令で定める区域内であること
- 包括登録の場合は、無線設備を設置しようとする区域が総務省令で定める区域内であること
- 重要事項について虚偽の記載がないこと。また、重要な事実の記載が欠けていないこと
- 審査後、登録が受けられる
審査の結果、電波法令に適合している場合は、次の事項が登録されます。
- 氏名または名称および住所ならびに法人の場合はその代表者の氏名
- 開設しようとする無線局の無線設備の規格
- 無線設備の設置場所
- 包括登録にあっては、無線設備を設置しようとする区域
- 周波数および空中線電力
- 登録の年月日および登録の番号
なお、登録前の無線局の落成検査はありません。定期検査もありません。
- 登録状の交付
無線局が登録された場合は、登録状が交付されます。
なお、登録には有効期限があります。
- 登録の日から5年(次の場合を除きます)
- 申請者が5年未満の有効期間を希望する場合
- 周波数割当計画に5年未満の使用期限が設定されている場合
- 包括登録を受けた場合は、無線局を開設した日から15日以内に、届出が必要
包括登録を受けた場合は、無線局を開設したそのつど、移動しない無線局にあっては無線局ごとに届が必要です。無線設備の設置場所、使用する無線設備の工事設計などを記載した届出書を、開設の日から起算して15日以内に、無線設備の設置場所を管轄する総合通信局または沖縄総合通信事務所に提出してください。
総務省が出しているデジタル簡易無線の概要は以下の通りです。
無線局の区分 | 免許局 | 免許局 | 登録局 | 登録局 |
周波数 | 154.44375~154.61254MHz | 467~467.4MHz | 351.2~351.38125MHz | 351.16875~351.19375MHz |
チャンネル数 | 19ch+ 9ch(音声除く) | 65ch | 30ch | 5ch |
使用できる区域 | 全国の陸上 | 全国の陸上 および 日本周辺海域 | 全国の陸上 および 日本周辺海域 | 全国の陸上 および 日本周辺海域 ならびに それらの上空 |
最大電力 | 5W | 5W | 5W | 1W |
キャリアセンス | 不要 | 不要 | 要 | 要 |
レンタル使用 | 不可 | 不可 | 可 | 可 |
レジャー使用 | 不可 | 不可 | 可 | 可 |
不特定の者との通信 | 不可 (免許人所属に限ぎる) | 不可 (免許人所属に限ぎる) | 可 | 可 |
※日本周辺海域:日本国の領海の基線(領海および接続水域に関する法律、昭和五十二年法律第三十号)第二条第一項に規定する基線をいう)から二百海里の線(その線が中間線(同法第一条第二項に規定する中間線という)を超えているときは、(その超えている部分については、中間線とする)の内側の海域をいいます。
まとめ
無線機は業務内容だけでなく、利用用途によって無線機に必要な機能が異なります。それぞれの特徴や特性が異なるので、用途に合わせて検討をしてみてください。