電波法とは?利用ルールや免許及び登録を要しない無線局を解説
電波は目に見えないですが、現代においてはなくてはならないものです。スマートフォンや携帯電話、Wi-Fi、Bluetoothは必需品となり、警察や消防、救急用などでは私たちの安心・安全を守ってくれる存在です。私たちが安心して暮らしていけるのは、電波法のルールをきちんと守っているからです。
では、電波法を守らずに混信や妨害があった際に、私たちの暮らしにどのような影響が出るのでしょうか。今回は、知らないでは済まされない「電波法」や電波を利用する際に必要な要点、手続きを解説していきます。
知らないでは済まされない「電波法」
電波法とは、無線通信の混信を防ぎ、電波の効率的な利用を確保するために必要な法律です。電波はスマートフォンや携帯電話、テレビ、ラジオ、警察、消防などさまざまな場面で活用されています。この電波を公平かつ能率的に利用を確保するための法令です。
私たちの目には見えない電波を、便利だからといって勝手に使うことはできません。同じ周波数の電波を複数で同時に使うと、正しく通信できない場合があり、不便になります。そのために、電波を使用するためのルールが必要となります。
電波法の概要
電波法は、無線通信の混信や妨害を防ぎ、電波の効率的な利用を確保するための法律です。電波法の概要について以下を解説していきます。
- 電波法の目的
- 電波法を利用する場合は、総務大臣の「免許」が必要
電波法の目的
電波法第1条によると
この法律は、電波の公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的とする。
電波の利用は、早い者勝ちや利用する者の地位や団体の規模などで区別することはならず、混信や妨害のないように能率的に利用しなければならないとしています。
電波を利用する場合は、総理大臣の「免許」が必要
電波は有限かつ希少な資源であり、テレビやラジオ、消防や救急無線、携帯電話、Wi-Fi、Bluetoothは私たちの生活に切り離せないものになっています。その大切な資源を自由な裁量に委ねてしまうと秩序を乱し、公平かつ能率的な利用と通信目的が達成されなくなることから免許を導入しています。
ただし書きでは電波が著しく微弱なものや、一定の要件に適合したものについては免許を不要とする例外規定を設けています。
【ラジコン用無線局】
ラジコンの場合、ノーコントロールとなり墜落や事故の原因となるばかりか、業務用無線通信に混信や妨害を与える恐れがあります。無秩序なラジコン運用に際しては電波法の規定を遵守し、相互で周波数を確認・調整を行いながら、混信や妨害が生じないようにラジコン用として認められた正しい電波を使用し、適正な運用をすることが求められている。
ラジコン用無線局は一定要件に適合したものに限り、免許不要の無線局として位置づけられています。
【無線局の開設】
電波法第4条
無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。ただし、次の各号に掲げる無線局については、この限りではない。
一、発射する電波が著しく微弱な無線局で総務省令(電波法施行規則第6条第1項)で定めるもの。(以下省略)
電波の利用ルール
電波は、携帯電話やテレビ、ラジオ、無線LANだけでなく飛行機や警察、消防、救急用など私たちの身近なもので、安心・安全を確保する業務にも使われています。その一方で、電波は非常にデリケートなので、ルールを守らなければ混信や妨害を起こしてしまいます。
技適マークというものが付いていて、無線機器の安心マークといわれています。無線機器を購入する際は技適マークが付いているか確認してくださいね。
技適マークが付いていればそのまま使用できる無線機器は、以下の通りです。
- PHS
- コードレス電話
- 無線LAN
- 特定小電力トランシーバー など
技適マークに加えて、無線局の免許を受けなければならない無線機器は、以下の通りです。
- 携帯電話
- 携帯電話中継装置(ホームレピーターを含む)
- アマチュア無線
- 業務用トランシーバー など
※携帯電話は、電気通信事業者が無線局の免許を受けて販売しているので、利用者は販売店で手続きするだけで利用できます。
【混信・妨害の事例】
改造アマチュア無線機を使用した「なりすまし」通信による消防用無線機等に妨害
2009年9月 大阪府であった事例
改造したアマチュア無線機を用いた虚偽の通信により、消防用無線等が使用できなくなる事案。
外国規格のベビーモニターが携帯電話の基地局に妨害
2010年1月 神奈川県でおきた事例
離れた部屋にいる赤ちゃんの様子を見るためのカメラ(ベビーモニター)が、携帯電話の基地局に妨害を与え、携帯電話が使えなくなる事案。
音声伝送用トランスミッターが消防無線に妨害
2011年1月 北海道でおきた事例
音楽をスピーカーに転送するためのトランスミッターが、消防無線に妨害を与え、消防無線が使えなくなる事案
身近なところで妨害によるさまざまな事案が発生しています。消防などは人の命に関わる安心・安全を確保する業務です。それを妨害することは、決してあってはいけません。一人ひとりがきちんと利用ルールを守らなければなりません。
無線局の免許手続き
無線局を開設し、運用するためには原則として「無線局免許」の取得が必要です。電波を利用するには、無線局を開設する必要があります。そのため、無線局免許を取得し、開設するために、総務大臣の許可を受けることが必要です。
- 免許を取得するためには、申請を行う
申請するにあたって、申請書と無線局の開設目的、設置場所、使用する無線機の工事設計などが記載してある資料の提出が必要です。
- 次に申請書類の審査を行う
提出された申請書類は、総務省(各総合通信局)で審査を行います。
審査事項はおおむね次のとおりです。
- 工事設計が電波法に定める技術基準に適合すること
- 周波数の割り当てが可能であること
- 総務省令で定める無線局の開設の根本的基準に適合すること
- 審査後、予備免許が与えられる
審査の結果、電波法令に適合している場合には次の事項を決め、予備免許が与えられます。
- 工事落成の期限
- 電波の型式、周波数
- 運用許容時間
- 呼出符号等
- 空中線電力
- 予備免許を受けた方は、工事が落成したら検査を受ける
予備免許を受けた申請者は、無線設備の工事が落成したときは、「落成届」を文書で各総合通信局に提出し、落成検査(新設検査とも呼ばれる)を受けなければなりません。なお、登録検査等事業者制度を利用すると、検査の一部が省略されます。
落成後の検査項目はおおよそ次のものです。
- 無線設備
- 無線従事者の資格および員数
- 備え付けなければならない書類、時計
- 簡単な免許手続きの条件に該当するときは③、④の手続が省略されます
MCA無線の陸上移動局、簡易無線局、アマチュア無線など、小規模なものであって、使用する無線設備が技術基準適合証明を受けている場合には、予備免許、検査などの手続きが省略され、審査した結果、法令に適合していると認められれば免許が与えられます。
- 免許状交付
検査に合格した場合と簡易な免許手続きによって検査などが省略された場合は、免許状が交付されます。など、免許には有効期限があります。
- アマチュア局、陸上移動局、簡易無線局などは5年
- 義務船舶局、義務航空機局は無期限
免許及び登録を要しない無線局
無線局を開設するにあたって免許または登録が必要です。しかし、電波が極めて弱い無線局や、一定の条件の無線設備だけを使用し、無線局の目的・運用が特定されている無線局については、無線局の免許および登録を必要としないとされています。以下の通りです。
- 発射する電波が著しく微弱な無線局
微弱な電波設備であり、総務省令でさだめるものをいいます。
たとえば、模型類の無線遠隔操作を行うラジコン用発振器やワイヤレスマイクなどが該当します。
- 市民ラジオの無線局
26.9MHz~27.2MHzまでの周波数帯の電波の中で、総務省令で定める電波の型式および、周波数の電波のみを使用する。かつ、空中線電力が0.5W以下で、技術基準適合証明を受けた無線設備のみを使用する無線局が該当します。
- 小電力の特定の用途に使用する無線局
- コードレス電話
- 小電力セキュリティシステム
- 小電力データ通信システム
- デジタルコードレス電話
- PHSの陸上移動局
- 狭域通信システム(DSRC)の陸上移動局
- ワイヤレスカードシステム
- 特定小電力無線局等
特定の用途および目的の無線局であり次の条件をクリアするもの。
- 空中線電力が1W以下であること
- 総務省令で定める電波の型式、周波数を使用すること
- 呼出符号または呼出信号を自動的に送信し、または受信する機能や混信防止機能を持ち、他の無線局の運用に妨害を与えないものであること
- 技術基準適合証明を受けた無線設備だけを使用するものであること
免許が与えられない場合
無線局の免許は総務大臣に申請すれば、だれでも免許を与えられるものではありません。無線局の免許が与えられない場合は、大きく分けて2つあります。
外国性の排除
電波は有限で希少な資源であるため、だれでもが電波利用の申請をしたからといって、周波数を割り当ててしまうと、電波資源が枯渇してしまいます。そのため、外国性のある者にまで利用を認める余裕はありません。まずは日本国民や日本企業の需要を満たす必要があります。
該当する者は以下の通りです。
- 日本の国籍を有しない人
- 外国政府またはその代表者
- 外国の法人または団体
- 法人または団体であって、前三号に掲げる者がその代表者であるものまたはこれらの者がその役員の三分の一以上もしくは議決権の三分の一以上を占めるもの
反社会性の排除
電波法や放送法に規定する罪を犯し罰金以上の刑に処せられ、その執行が終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない人。無線局の免許の取り消しを受け、その取り消しの日から2年を経過しない者に対しても、免許を与えないことがあります。免許を与えるか否かは、申請者の情状によって総務大臣が判断します。
登録を受けられない場合
無線局の登録も免許と同じで総務大臣に申請すれば、だれでも登録を受けられるものではありません。無線局の登録が与えられない場合は、大きく分けて4つあります。
- 開設区域の厳守
登録局については、総務省令で定められた区域内に開設することが必須であり、この区域外での開設設置を希望する人に対して、登録が拒否できます。
- 虚偽申請などの排除
申請や添付書類の、重要な事項について虚偽の記載がある申請は、申告すべきところの記載が欠けているので、申請しても登録が拒否されます。
- 反社会性の排除
電波法や放送法に規定する罪を犯し、罰金以上の刑に処せられると執行されます。その執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない人。無線局の登録の取り消しを受け、その取り消しの日から2年を経過しない者に対しては、登録が拒否されることがあります。登録ができるか否かは、申請者の情状によって総務大臣が判断します。
- その他
電波法第76条の2の2に基づき登録局の開設の禁止または運用の制限が行われている場合、周波数割り当て計画に適合しない場合、電波の適正な利用を妨害するおそれのある場合には、登録を拒否することがあります。
電波は有限な資源だからこそ、だれでもが免許や登録が受けられるものではありません。受けられないからと言って、不法電波をしてしまえば、法律に反するとして罰則されるおそれがありますので、注意が必要です。
不法電波はなぜ迷惑なのか?
免許を受けない不法無線局から発射される不法電波は、先ほどあげた消防の事案だけでなく警察や救急用無線を妨害することもあります。防災行政無線を妨害し、災害時の緊急通信を困難にさせるなど、私たち国民の人命を守るために必要な活動を妨害します。
さらに、鉄道の業務用無線を妨害することで、列車の運行の妨げです。私たちの生活に欠かすことができないスマートフォンや携帯電話の通信、テレビやラジオなどが妨害されることで、私たちの生活を脅かす行為は迷惑行為にあたります。
まとめ
電波を利用するには原則として、免許が必要です。不法無線局を開設したり、不法電波を発射すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。私たち日本国民の大切な希少資源である「電波」を大切に、ルールを守って使用しましょう。