【デジタル簡易無線】免許局と登録局の違い、
2024年12月1日廃止のアナログ無線
デジタル簡易無線には、使用する用途や無線機によって免許局と登録局の2種類の無線局に分けられます。電波は大切な資源であり、一人ひとりがルールを守って使用しなければなりません。今回は免許局と登録局の違い、2024年12月1日から廃止されるアナログ無線機について解説していきます。
デジタル簡易無線とは
デジタル簡易無線とは、無線機同士で直接通信ができるので、携帯電波の届かないエリアでも利用ができます。デジタル通信とアナログ通信で何が違うのか。それは、アナログ通信の方式を利用した無線機と比べ、デジタル通信は音質がよく、秘話性(盗聴や傍受を防止)が高いことが特徴です。
今後もさらなる電波の利用ニーズが高まることが想定され、デジタル通信方式の簡易無線は、効率的に周波数帯域を使うことができるので、2024年12月1日からアナログ通信方式は廃止されます。
なぜデジタル簡易無線機が誕生したのか
電波は大切な資源です。デジタル無線機は、通信で有する周波数帯幅が少ないので電波を有効に使えることで、生まれました。その限られた資源である周波数をテレビ、ラジオ、携帯電話、Bluetooth、Wi-Fi、消防や救急無線などに振り当てて使用しています。ですが、日本国内の周波数帯は既に限界まで使われているので、電波の有効活用をするためにデジタル化を進めてる状態です。
デジタル無線機の登録局が登場するまでは、免許を所持している人しか使用できない、アナログ無線機しかありませんでした。しかし、デジタル無線機の登場により、レジャーで利用するなどレンタルが合法的にできるようになり、無線機の利用方法が広がりました。
アナログ無線機とデジタル無線機の機能的な違いは、音質・混信に強い・通信距離にあります。
【音質の違い】
デジタル無線機は、一旦音声データをデジタルデータに変換し、ノイズなどの余計な情報をカットし発信する。そのためアナログ無線機に比べ聞き取りやすい音声になっています。聞き取りやすいということは、聞き手のストレスを減らすことができるのがメリットです。
【混信に強い】
デジタル無線機には、第三者が同じチャンネルを使用したとしても、外部に内容が漏れないようにする「ユーザーコード(UC)」と「秘話モード」を設定することが可能です。社外秘の情報やプライベートの話題など、第三者に聞かれてはいけない内容を聞かれないよう高いセキュリティを実現しています。
【通信距離】
デジタル無線機の通信距離はおよそ1km~5kmです。見通しが良い場所であれば10km程離れた場所でも通信することもできます。また、建物内のフロアをまたいだ通信や遮蔽物があっても通信を行うことも可能です。
とはいえ、使用する出力機種によって通信距離が変わるので、使用用途によって出力の種類を選ぶことをおすすめします。
デジタル簡易無線の免許局と登録局の違い
デジタル無線機には、免許局と登録局の無線局があり、使用する用途や無線機によって分類されています。
免許局とは
法人や団体などが業務に使用することを目的とした無線局で、会社がメンバー同士の連携に使う場合には免許局の申請が必要になります。免許局の特徴は、業務での使用を目的としていることからチャンネル数が多く、周波数帯が区別されるので混線がしにくいことです。電波が混み合っている場所でも、スムーズに無線を使用することができるので、業務に支障をきたさないことがあげられます。
免許局の無線機を使用する場合は1台ごとに免許申請して取得し、使用者は免許を持っているメンバーの人だけに限られる。そのため、免許を持っている組織に所属する人以外の人に使用させることや、無線機を貸出することは禁止されています。
登録局とは
登録局は免許局と違い、業務だけでなく幅広い用途で使用できます。これまでの規制を大きく緩和するために登録局が制度化されました。登録局の特徴は、免許がなくても出力の高い無線機を使うことができることです。
事前に登録の申請と開設届を提出すれば、法人だけでなく一個人でもデジタル簡易無線機を使用できます。また、登録者以外でも使用でき、複数台をまとめて一度に登録することができるのも特徴です。
そのため、レンタル無線機としても貸出することができ、レジャーなどでも使用できます。通信相手が限定されることもなく、より手軽に無線機を扱うことが可能となりました。
とはいえ、デメリットも存在します。免許局と比較した場合チャンネル数が少なく、混線しやすい点があげられます。そのため。登録局の無線機には混信を防止するために「同じ周波数帯で基準値以上の強さの電波を受信しているときに、送信を禁止する機能=キャリアセンス機能」が義務付けられています。
デジタル簡易無線の概要一覧
総務省が出しているデジタル簡易無線の概要は以下の通りです。
無線局の区分 | 免許局 | 免許局 | 登録局 | 登録局 |
周波数 | 154.44375~154.61254MHz | 467~467.4MHz | 351.2~351.38125MHz | 351.16875~351.19375MHz |
チャンネル数 | 19ch+ 9ch(音声除く) | 65ch | 30ch | 5ch |
使用できる区域 | 全国の陸上 | 全国の陸上 および 日本周辺海域 | 全国の陸上 および 日本周辺海域 | 全国の陸上 および 日本周辺海域 ならびに それらの上空 |
最大電力 | 5W | 5W | 5W | 1W |
キャリアセンス | 不要 | 不要 | 要 | 要 |
レンタル使用 | 不可 | 不可 | 可 | 可 |
レジャー使用 | 不可 | 不可 | 可 | 可 |
不特定の者との通信 | 不可 (免許人所属に限ぎる) | 不可 (免許人所属に限ぎる) | 可 | 可 |
※日本周辺海域:日本国の領海の基線(領海および接続水域に関する法律、昭和五十二年法律第三十号)第二条第一項に規定する基線をいう)から二百海里の線(その線が中間線(同法第一条第二項に規定する中間線という)を超えているときは、(その超えている部分については、中間線とする)の内側の海域をいいます。
デジタル簡易無線の活用例4つ
では、デジタル簡易無線が、どのようなシーンで使用されているのか。主な活用例として以下4つを紹介します。
- 警備業
- 物流倉庫
- イベント運営
- レジャーなどのアウトドアで
1.警備業
警備業では連絡手段として無線機は必須といえるツールです。
警備業は法律で4種類に区分され、それぞれの業務の中で仕事内容や業務形態が異なります。
- 1号業務施設警備
- 2号業務雑踏警備
- 3号業務輸送警備
- 4号業務身辺警備
このなかでも、1号業務施設警備に含まれる施設警備業務(ショッピングセンターや百貨店、工場、駐車場などに常駐で警備)。イベント会場や人が往来する道路や人が多く集まる行事などで安全の確保を行う2号業務雑踏警備では、屋外や広い敷地内でも遮蔽物を気にせずしっかりした音声で通信が可能なデジタル簡易無線が最適です。
2.物流倉庫
物流倉庫は広いので、スタッフとの連携をスムーズに行うために無線機は必要不可欠な連絡手段として用いられています。近年ネット通販で買い物する方が増え、大型物流倉庫の数も増えています。搬入・搬出を24時間稼働している物流倉庫も多く、安全で効率よく作業を進めることが重要になり、連絡手段として無線機が必要不可欠なのです。
そのため、守衛室・作業スタッフ・フォークリフト・運送車両との連携を確実にするために、無線機をコミュニケーションツールとして活用しています。
3.イベント運営
大規模会場でのイベントや花火会場など人が多く集まるイベントの運営では、多くのスタッフといち早く情報伝達ができる無線機が活躍します。イベント時は人の往来が多く、混雑やトラブルを避けるためにも連携が必要です。
さらに、アルバイトや臨時スタッフが多くいるイベントでは、登録者以外でも使用することができ、複数台をまとめて一度に登録ができる登録局がオススメです。
4.レジャーなどのアウトドアで
近年はレジャーでデジタル簡易無線を使う方が増えてきました。登山やキャンプ、スキーなど携帯電話が圏外で繋がらない場所もあります。そんなときに活躍するのが無線機です。無線機があれば山間部など圏外になりやすい場所でも通信が可能です。
家族でキャンプに行った際にお子さんに持たせておくなどして、もしもの時に役立つツールとして利用されています。デジタル簡易無線は1km以上は慣れた場所でもクリアな通信が可能なため、用意しておくと安心です。
簡易無線局のデジタル化について
電波は限られた資源であり、テレビ、ラジオ、消防や救急無線、携帯電話、Wi-Fi、Bluetoothなど、さまざまな用途で使用されています。アナログ通信の方式を利用した無線機と比べ、デジタル通信方式は音質がよく、秘話性(盗聴や傍受を防止)が高いことから、積極的にデジタル化を進めることが求められるでしょう。
2024年12月1日以降アナログ無線機は使用できなくなる
当初の予定では2022年11月30日までにアナログ無線機および、小エリア簡易無線が使用できなくなる予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、無線機を使用している企業の環境が急激に変化したことを受け、激変緩和措置として2024年11月30日までに延長されました。
では、なぜアナログ無線機を廃止するのか。先程もお伝えした通り、電波は有限で希少な資源です。テレビ、ラジオ、携帯電話、Bluetooth、Wi-Fi、消防や救急無線などさまざまな用途で無線が利用され、空いている周波数が少なくなってきました。そこで、デジタル無線機はアナログ無線よりも効率的に伝送速度を高めることができるので、国がアナログからデジタルへの移行が必要と判断し、アナログ無線機を停波することが決定。
2024年12月1日以降はアナログ無線機の一部周波数が利用禁止となります。2024年12月1日以降に対象周波数を利用した場合は「電波法違反」となり、処罰の対象になります。
詳細は下記をご確認ください
廃止になるアナログ無線機は?
アナログ無線機には、以下があげられます。
- 350MHz帯
- 400MHz帯
今回廃止の対象となるアナログ無線機は「350MHz帯」と「400MHz帯」の周波数を使ったアナログ無線機です。
アナログ方式の周波数およびデジタル方式の周波数を利用可能なデュアル方式の簡易無線局についても、アナログ方式の周波数の使用は2024年11月30日までです。両方を使うことができる「デュアル方式」の無線機を利用している場合は、利用者が間違ってアナログ方式の周波数を発してしまうことがないように、アナログ無線機の使用期限までに改修する必要があります。
参照:総務省電波利用ホームページ 簡易無線局のデジタル化について
【注意】懲役または罰金の対象になる可能性
禁止された周波数の利用は、電波法110条2項に該当します。
1年以下の懲役または100万円以下の罰金になってしまう可能性があります。
法律では「知らなかった」では済まされません。最悪の場合は、懲役刑となってしまい前科がついてしまうこともあります。2024年12月1日以降のアナログ無線機の使用は絶対に行わないようにしてください。
まとめ
今回はデジタル無線機の免許局と登録局の違いについて解説しました。
免許局は法人など業務に使用することを目的とした無線局で、1台ごとに免許申請して取得する、使用者は免許を持っているメンバーの人だけに限られています。そのため、免許を持っている組織に所属する人以外の人の使用や、無線機を貸出することは禁止されています。
登録局は業務利用だけでなく、レジャーなどで利用することも可能な無線局で、法人だけでなく一個人でもデジタル簡易無線機を使用できます。また、登録者以外でも使用できるので、複数台をまとめて一度に登録することが可能です。
また、2024年12月1日以降にはアナログ無線機の使用ができなくなってしまいます。
アナログ無線機の使用期限後は、以下の流れに対応する必要があります。
- 使用している機種が廃止対象のアナログ無線機かチェックする
- 廃止対象のアナログ無線機の場合、デジタル無線機への買い換え
「知らなかった」では済まされないので、使用期限がくる前にきちんと確認しておく必要があります。