インカムとトランシーバーの違いとは?メリット・活用例も紹介
インカムやトランシーバーは複数人が連絡できる通信機器として、TVや映画の収録現場や建設現場、イベント会場などで導入されています。近年では活躍するシーンが増え、結婚式場や飲食店などより多くの場所で利用されるようになりました。
今では目にすることも多いインカムですが、インカムとトランシーバーの違いや、インカムはスマートフォンで代用できるのかについてはご存知でしょうか。
今回はインカムのメリットやトランシーバーとの違い、インカムの活用例についてご紹介します。
インカムとは?
インカムは無線機器の一種で、正式名称を「インターコミュニケーションシステム」といい、「インターカム」とも呼ばれます。もともとは内線電話と同じ仕組みで、施設内や敷地内などの限られた範囲で通信を行う目的で開発されたのが始まりです。
時を重ねるとともに無線通信が可能となり、現在ではイベント会場や建設現場、マスメディア業界をはじめとした多くの業界で活躍しています。
インカムは電話と同様の仕組みで、送話者と受話者が同時に会話をすることが可能です。
電話との違いとして、インカムは話し手1名に対して複数人が同時に会話を聞くことができます。指示を出したい相手に毎回発信し指示を伝えなければならない電話に対し、インカムを使用すれば一度の通信で全員に指示を伝えることができるため、手間も掛からず聞き手同士の連携もスムーズになります。
インカムとトランシーバーの違いについて
インカムとトランシーバーは、業界により定義が異なります。例えばコールセンターの現場では電話機器に接続したヘッドセットを指すこともあれば、由来通りに有線接続された「インターカムシステム」を指すこともあります。
今回は、トランシーバーを使用するインカムに対象を絞ってご紹介します。
インカムは「トランシーバーに音声機器を接続した状態」のこと
トランシーバーとは無線機の送信機と受信機を一体型にしたもので、無線機と比べてトランシーバー単体で双方向通信が可能になりました。インカムはトランシーバーの一種であり、無線機に発話できるイヤホンマイクやヘッドセットを接続した状態を指します。トランシーバーが機器を手に持って通信を行うのに対し、インカムはトランシーバーに接続したヘッドセットやイヤホンを装着してハンズフリーで通信することができます。
トランシーバーは単体で使用すると、搭載されているスピーカーから通信内容が流れる仕組みになっています。同じ場所で複数人が作業している現場で、一台のトランシーバーに対して複数人が聞き手になる場合や、全員が発信する必要がない場合はスピーカー機能をそのまま活用することができます。
一方、イベント会場で周囲が騒がしく通信内容が聞き取りにくい場合や、周囲に音声が聞こえることが望ましくない美術館などの静かな場所で使用する場合は、イヤホンマイクを接続してインカムにすることで通信内容の聞き漏らしを防ぐことができます。
インカムの性能はトランシーバーの機種によって変わる
トランシーバーは基本的にPPT(プッシュツートーク)を行うことで、送信機と受信機を切り替えて通信を行います。トランシーバーでは電源を入れると受話者として電波を受信し、送信ボタンを押しながら話すことで通話者として複数人に発信することができます。
電源を入れてボタンを押すだけという簡単な操作で通信できる一方、送信機と受信機を同時に起動させることができないため、電話と比較すると会話がスムーズに進みにくいという問題がありました。
現在では、送受信で異なる周波数を用いる同時通話型トランシーバーが開発され、送信ボタンを押さずに同時通話を行うことが可能となりました。
現在インカムとして使用されているトランシーバーでは、ハンズフリーで会話ができるように同時通話型トランシーバーが採用されているケースが一般的です。
携帯電話にはないインカム・トランシーバーの強み
インカム・トランシーバーを少人数で使用したい場合に、携帯電話の通話機能やトランシーバーアプリと比較されることが良くあります。
業務内の簡単な連絡を取り合う際には携帯電話で代用できることもありますが、シーンによっては利用が難しい場合があります。
インカム・トランシーバーが向いている場所
- 通信エリアに対応していない場所(圏外になる山間部など)
- 人が密集している場所(通信環境が悪くなりやすいイベント会場など)
- 屋外での作業現場(粉塵や水、衝撃が伴う場面)
通信エリアに適していない場所では、通話機能やアプリがそもそも使用できず、Bluetoothを使ったアプリでも半径20メートル程が限界といわれています。
インカム・トランシーバーは本体購入のみで追加コストが掛からない
また、携帯電話の場合は契約しているプランによって通信料が別途発生するため、導入そのものは簡単であっても予想外にコストが掛かってしまう場合があります。一方、インカム・トランシーバーの場合は本体購入のみで通信料がかからないため、少ない人数でも定期的に使用したい場合はインカム・トランシーバーを導入した方が安くなることもあります。
インカムのメリット3つ
インカムを使うとどんなメリットがあるのか。以下3つを紹介します。
- 多人数に素早く通信できる
- 回線の混雑がない、音声が聞き取りやすい
- シンプルな操作
1.多人数に素早く通信できる
インカムであれば作業を止めずに音声通信を行うことができるので、タイプによっては効率よく連携をとることが可能です。居酒屋や結婚式場など広いホールでも、インカムを導入することで業務の効率が格段に上がります。
結婚式場など広いフロアで離れた場所で行う接客の場合にも、インカムをタイピンマイクにすることで、トランシーバー本体を出し入れしなくてもボタン一つで素早く伝達できます。
2.回線の混雑がない、音声が聞き取りやすい
インカムは電話回線を使用しないので、緊急事態などで混雑している場合にも使うことができます。電話回線の状態に左右されずにつながるので、スムーズに通信が可能です。
イベント会場などでは人の出入りが激しく大音量で音楽が流れているため、直接耳から音声が入ってくるので周りの音に左右されずに指示を聞きもらすことがなく、リスクを減らすことができます。会場でのお客様の誘導や対応をしている時に、ハンズフリーで音声通信できるインカムがあれば、スムーズに業務を行えるでしょう。
3.シンプルな操作
インカムは接続するトランシーバーの種類にもよりますが、基本的にボタン一つを押すだけで音声通信ができます。
機械が苦手な方にとっては間違ったボタンを押してしまってはいけないという恐怖から、ボタンがたくさんあると迷い、躊躇してしまう方も多いでしょう。その点ではインカムは音声の送受信の機能しかないので、手軽で簡単な操作がメリットです。
インカムの活用例
インカムの代表的な活用例をご紹介いたします。
- イベント会場
- 介護施設
イベント会場
イベント会場ではお客様の誘導や対応に追われたり、大音量の音楽が流れていたりすることが少なくないでしょう。スムーズに行うためにインカムが使用されています。作業をしながら相手からの音声通信に対応できるのが、インカムのメリットです。
介護施設
介護業界では近年インカムが導入されている施設が増えてきました。入浴介助や排せつ介助、食事介助などさまざまな業務に追われて、人手不足の中いかに効率よく仕事をしていくかが重要です。施設のなかは広く、上下階に分かれている施設も少なくありません。その中で他の職員を探すとなると一苦労です。もしインカムがあれば「〇〇さん、どちらにいますか?」と発信すれば、本人か本人を見かけた人が「事務所にいます」と返答をしてくれます。これだけでかなりの時間短縮になるでしょう。
PHS(ピッチ)を導入している施設もありますが、PHSは1対1のみの会話しかできません。複数人を呼びたい場合には、全員に連絡する必要があります。それだけでタイムロスをしてしまう。その点インカムであれば「名前、来てほしい場所」を一気に全員に知らせることができます。
介護職は体力勝負とも言われていますが、インカムの導入により職員の無駄な負担を減らしてくれるでしょう。体力だけでなく時間にも余裕が生まれることで、職員の満足度をあげてくれるかもしれません。
インカムには免許や登録が必要な物もある
無線機を導入するにあたって免許や登録が必要な場合があります。専門業者へお任せ(委託)することもありますが、個人で購入し使用する際には申請手続きを行わずに、無線機を使用すると電波法違反となってしまうので注意が必要です。
まず、なぜ申請が必要なのかを解説します。無線機を使おうとした場合、一部の人がずっとチャンネル(周波数)を独占していると、使える人と使えない人が出てきてしまいます。
業務用無線機は広範囲(5kmやそれ以上の距離)に電波が届いてしまうので、公共性を保つために免許制度が導入されました。では、具体的に免許局と登録局の違いについて紹介します。
申請の区分 | 免許局(免許申請) | 登録局(登録申請) |
免許 | 無線機1台1台免許が必要 | 免許不要 別途登録申請と開設届が必要 |
・主に法人などの団体が業務に利用することも目的とした無線機 ・無線機1台1台に免許が必要で、免許された団体に所属している方のみ使用が可能 | ・登録者以外の方も使用が可能な区分の無線機 ・登録されていれば、レンタルが可能 | |
周波数 | アナログ簡易無線 ・150MHz帯 154.45MHzから154.61MHz(9ch) ・400MHz帯 465.0375MHzから465.15MHz(10ch) 468.55MHzから468.85MHz(25ch) ・小エリア 348.5625MHzから348.8MHz(18ch+2ch) デジタル簡易無線 460MHz帯 467MHzから467.4MHz(65ch) ・種別コードが「3B」 (種別コードは無線機が包括されている箱や無線機の裏側に記載しています) ・呼出名称が「1」から始まる9桁の番号 | デジタル簡易無線 ・陸上利用 350MHz帯 351.16875MHzから351.38125MHz(30ch) ・陸上・上空利用 350MHz帯 351.16875MHzから351.19375MHz(5ch) ・種別コードが「3R」または「3S」 (種別コードは箱や無線機の裏側に記載しています) ・呼出呼称が「2」から始まる9桁の番号 |
空中線電力 | 最大 5W 小エリア 1W | 5W(350MHz帯 30ch) 1W(350MHz帯 5ch) |
使用用途 | 業務使用のみ | 業務/レジャーにも使用可能 |
呼び出し名称 記憶装置 | 必要 | 必要 |
不特定の者との通信 | 不可(免許人所属に限る) | 可 |
キャリアセンス機能 | 不要 | 必要 |
新規申請手数料 | 5W以下 4,250円(電子申請 3,050円) 1W以下 3,550円(電子申請 2,550円) | 個別申請 2,300円(電子申請 1,700円) 包括申請 (複数台をまとめる申請) 2,900円(電子申請 2,150円) |
※キャリアセンス機能:通信が行われている場合は送信ボタンを押しても電波が送信されない(混信防止機能)
※簡易無線機において、350MHzおよび400MHz帯のアナログ方式の周波数は、2024年12月1日以降は使用できなくなります。
※アナログ簡易無線局の免許は、2021年9月1日以降は、原則として再免許に限り使用が認められています。
参照:申請の区分一覧 申請の区分免許局(免許申請)登録局(登録申請)
まとめ
インカムのメリットや活用例を紹介しました。レジャーでは携帯電話が圏外になってしまう場所では不安という時には、インカムを検討してみてはいかがでしょうか。インカムの特徴をまとめると以下の通りです。
- インカムはトランシーバーにイヤホンマイクなどの音声機器を接続した状態
- インカムの性能はトランシーバーの機種によって変わる
- インカムは本体購入のみで通信料が不要
- トランシーバーが利用しにくい場面ではインカムにすると音声が聞き取りやすい
- シンプルな操作で簡単に通信できる
- 本体や音声機器の組み合わせて幅広く活用できる
インカムの通信方式やマイクの形状によって異なるので、用途に合った機器を選びましょう。