災害対策・BCP用の無線機とは?
災害大国、日本で求められる災害対策・BCPとは?
地震や水害など、毎年のように大規模災害に見舞われている日本では災害対策・BCPが不可欠です。
その自然災害の多さは、世界で起こる地震の2割が日本で発生しているほど(国土面積は全世界の1%未満です)。また、台風の通り道に位置しているため、暴風雨や豪雨が降りやすく、国土の7割を占める山地は活発な地殻変動によって複雑・不安定な地形・地質となり、土砂災害も起こりやすくなっています。
これに加えて、近年では災害だけでなくパンデミックやテロなどあらゆる危機的状況に置かれた際、企業には事業を継続するためのBCPが求められています。
このページでは、わたしたちe-無線が扱っている無線機が災害対策・BCPとしてどのように役立つのか、実際の導入事例などを交えながらご紹介いたします。
無線機が災害対策・BCPにおすすめの理由
携帯電話よりつながりやすく、ダウンしにくい
防災で重要なのは「初動」です。
消防庁の平成20年版消防白書では「災害時における初動対応が被害の軽減やその後の応急対策に大きな影響を及ぼすと考えられることから、大規模災害時においては、発災直後から情報の収集・伝達等に関し、臨機応変で的確な対応をとることが極めて重要である。」としています。
2次災害を防ぎ、被害を最小限に抑えるためにまず必要なのが「きちんとつながる通信手段」です。情報共有はふだん電話やメールで行われることが多いですが、災害時携帯電話を使った通信は回線容量がパンクして通信が困難になる「輻輳(ふくそう)」が発生しつながらなくなる可能性が高く、活用は難しいでしょう。
無線機はこの「輻輳(ふくそう)」が発生しにくい通信手段であるため、過去何度も災害時に活躍しているのです。
一斉送信が可能
無線機の一番の特長ともいえる「一斉送信」は、1対1のやり取りではなく、1回の送信で同時に複数の相手に情報を共有することができます。緊急時、ひとりずつ何度も連絡をするのは時間も手間もかかり現実的ではないでしょう。 また、携帯電話でのグループ通話という方法も可能ですが、これは同時に発話出来てしまうため聞き漏れ・指示漏れが発生する可能性があります。
無線機の一斉送信は、基本的に誰かが話している時はほかの人は発話出来ません。また、相手が応答せずとも音声は送信されますので災害時にはこちらの通話方法が理にかなっていると言えます。
多くの無線機は「1回ボタンを押すだけで音声を送信できる」シンプル操作設計になっています。緊急時に連絡を取る際、いくつもボタンを押す、ロックを解除する、などの操作は現実的ではありません。
また、グローブをはめていても押しやすい大きなボタンや、過酷な環境での使用を想定して防水だけでなく防塵(ちりやほこりが入るのを防ぐこと)機能を備えたりと、無線機はまさに過酷な災害の環境下でも安定して使用できる設計になっています。
おすすめ1 MCA無線
※2024/9/3追記
MCAアドバンスは2027年3月31日、デジタルMCAサービスは2029年5月31日にサービスを終了することが決定しており、現在新規契約の受付は行っておりません。
MCA無線とは、専用の周波数帯を特定のユーザー限定で共同使用するマルチチャンネルアクセス方式の無線で、災害時携帯電話など公衆網が混雑してつながらない場合も輻輳が起こりづらくなっています。
専用の中継局は新耐震基準に基づき設計されており、非常用発電装置も備えるなど災害対策は万全です。
MCA無線の通信エリアは1つの中継局を中心に20km~30kmほどですが、複数の中継局を利用する契約にすることで北海道から九州まで全国エリアでの通信も可能になりますので、全国各地に拠点のある企業の災害対策・BCPには最適です。
災害に強いMCA無線は1995年の阪神淡路大震災、2004年の新潟県中越地震・新潟7.13豪雨災害、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2020年の令和2年7月豪雨など、いかなる災害時もサービスを継続し、連絡手段として活躍した実績があります。
MCA無線のメリット
公衆網が利用できない状況でも通信が可能
大規模災害に強い大ゾーン方式の中継局を採用、中継局舎には非常用電源設備を備え、安定した山頂やビルの上などに設置されています。また、万一に備え通信設備やネットワークなどはシステムの二重化を図っています。
利用できる通信網が2つ
MCA無線、IP無線それぞれの通信網を使用できることから災害時にどちらかがダウンしてしまっても通信を確保することができます。
※ MCAアドバンス / mcAccess e+ のサービスです。
衛星電話と比べランニングコストが低い
通話料が月額定額制なので、従量制の衛星電話と比べランニングコストを抑えることができます。
MCA無線のデメリット
ランニングコストがかかる
月額定額制のため初期費用は抑えられますが、毎月定額のランニングコストが発生します。
免許申請が必要
MCA無線は利用開始前に免許申請手続きが必要です。
おすすめ機種 KC-PS701
MCA 軽量
MCA無線+IP無線 KC-PS701
MCAアドバンス 京セラ
略称/型番 | KC-PS701 |
---|---|
種別 | MCA無線+IP無線 |
メーカー | 京セラ |
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KC-PS701の使い方提案
KC-PS701は中央の対策本部から全国の製造拠点や役員、事業所間など、全国規模の連絡系統を確率するのに最適です。
MCAアドバンス網+LTE網という種類の異なる2つの全国規模電波が使用できるのが最大の強みで、公衆網が使用できない状況になった時でも従業員の安否や施設の稼働状況などを対策本部で把握し、適切な指示を出すことが可能です。さらに、音声だけでなくテキストや画像、動画などの視覚情報も把握できるため、より正確に現地の情報を把握することができます。
MCA無線の活用事例
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、固定電話、携帯電話とともに非常につながりにくい状態が長期間続き、電気、ガス、水道、交通、道路などのライフライン機能も長期にわたり停止しました。
MCA無線の石巻中継局(宮城県石巻市)は、震源に最も近い中継局にもかかわらず倒壊せず、災害への強さを証明。最大震度7、マグニチュード9.0の揺れに耐え、携帯電話など他の通信インフラが通信不能であった期間もMCA無線は無線サービスを提供し続け災害時の連絡手段として活躍しました。
また、被災地における各機関の対策のほか、災害復旧支援活動においても重要な連絡手段として活用されました。
おすすめ2 IP無線
IP無線とは、携帯電話網を使用して通信する無線機のことです。そのため通信エリアが広く、携帯電話の電波が入るところであれば全国どこでも通信が可能です。
携帯電話と異なり音声データではなく音声をパケットデータに変換して送受信する仕組みであるため、公衆網が混雑する災害時でも比較的安定した通信が可能です。暗号化通信によりセキュリティ面でも安心です。
また、IP無線には携帯電話にはないデュアルSIM(複数キャリア)対応の機種や、Wi-Fi接続可能な機種もあります。
IP無線のメリット
通信できるエリアが広い
携帯電話網を使用して通信を行うため、携帯電話が使用できる範囲なら全国どこでも通信が可能です。
免許や資格が無くても使用できる
IP無線は免許申請や登録申請をする必要がありません。誰でもすぐに使用できます。
定額制で低コスト
月々の利用料金が定額制のため通信量によって利用料が増えたり、通信制限がかかることもありません。
IP無線のデメリット
携帯キャリア通信がつながらない場所では通信できない
IP無線は携帯キャリアのデータ通信を使用しているため、携帯キャリアの通信がつながらない場所ではIP無線も同じようにつながりません。山奥やトンネル内などではつながらない可能性が高いため注意が必要です。
ランニングコストがかかる
特定小電力トランシーバーや簡易無線(免許局・登録局)は使用するために月額利用料を払う必要はありませんが、IP無線は月額制のため、毎月固定料金がかかります。
おすすめ機種 SRNX1
NTTドコモ LTE WiFi
IP無線 SRNX1
スタンダードホライゾン 八重洲無線
略称/型番 | SRNX1 |
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種別 | IP無線 |
メーカー | スタンダードホライゾン 八重洲無線 |
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SRNX1の使い方提案
LTE通信だけでなくWi-fiにも対応しているため、通常時は店舗内やエリア内での通信、非常時には全国規模で拠点間の情報交換や応援要請などに活用する平常時利用+非常時利用の使い方ができます。
平常時も同じ無線機を活用できるためコストパフォーマンスもよいと言えるでしょう。
IP無線の導入事例
某私大様
メインキャンパスと離れた場所にあるキャンパス間での通信の確保の為に導入。
平常時は電話代をかけずに連絡が取れる通常の連絡手段として活用されていますが、同時に非常時の連絡手段確保にもなるということで通常運用と災害対策・BCPを兼ねた利用方法を取られています。
先日携帯電話回線がつながりにくい状態になった時もIP無線のパケット通信は生きており、連絡手段として活躍しました。
おすすめ3 簡易無線
簡易無線局とは、無線従事者資格が不要で、簡易な業務または個人用務を目的とした無線局のことです。簡易無線には登録の対象となる登録局と、免許の対象となる免許局があります。
このうち、免許局は主に法人・団体が業務に利用することを目的とした無線局です。1台ごとに免許が必要で、免許を持っている団体に所属している方にのみ使用が許可された無線局のことを指します。
免許局は最大5Wのハイパワー出力で、およそ1km~5kmの広範囲での通信が可能です。遮蔽物をまたいだ屋内と屋外の通信、階をまたいだ多層階通信も行うことができます。そのため全国ほどの通信エリアは必要ないけれどある程度広さのある敷地をカバーしたいイベント設営や展示会、多層階に渡るショッピングモールや大型レジャー施設などの業務に免許局を導入しておくと、災害などの緊急時の連絡手段としても活躍し、BCPも兼ね備えることができます。
免許局も自営通信ですので公衆網が混雑でつながらない場合も安定した通信を行うことができます。
また、防水や防塵、耐衝撃性など過酷な環境での利用を想定したものも多いため災害時も安心してご利用いただけます。
免許局のメリット
公衆網が利用できない状況でも通信が可能
お互いの電波を送受信して通信を行う自営通信ですので、公衆網の状態に左右されません。
ランニングコストが低い
月額の通信料などが不要なため、ランニングコストを低く抑えることができます。
免許局のデメリット
免許申請が必要
免許局は利用開始前に免許申請手続きが必要です。
おすすめ機種 SR810UA
防塵防水 IP68 大音量
簡易無線 免許局 SR810UA
スタンダードホライゾン 八重洲無線
略称/型番 | SR810UA |
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種別 | 簡易無線 免許局 |
メーカー | スタンダードホライゾン 八重洲無線 |
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SR810UAの使い方提案
SR810UAは、エリア内2~5km範囲くらいで確実な連絡手段を構築する場合におすすめです。
例えば広い工場内や自社ビル内、ショッピングモール内、大学キャンパス内など、多少の広さがあるものの全国規模の通信網は不要という場合にコスト面も含めバランスの良いシステムです。自営通信のため非常時公衆網がつながりにくくなっていてもダウンせず、確実に通信が可能です。通信費はかからず機種代と免許費用のみですのでランニングコストも抑えることができます。
免許局の導入事例
某化学工場様
化学薬品を工場内で多く使用しているため、非常時の安全を担保するために導入されています。
当初は1拠点での導入でしたが、現在は複数拠点でそれぞれ連絡経路を構築し、災害対策・BCPをさらに強化されています。